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機微なる逆夢。
なぜかクロアとラピは夢だとか夜だとか幻想的なネタだとよく書ける気がします
みんなそうかなあ、、((
登場人物
クロア:15歳。王女、幼い頃に父母を亡くしてから、ラピと一緒。タルトに目がない。
ラピ :17歳。龍の子。足が尋常じゃないくらい早い。ちなみにマイブームはお菓子作り。
ギィ……と鈍い音を立て、ある屋敷のドアが開く。クロアは暗い屋敷内に物怖じもせずズカズカと入っていくが、ラピはなぜかためらっていた。
「どうしたの、ラピ」
「僕…尻尾がビリビリするんだよ」
「そう、?」
暗闇の中では妙に目立つ水色の目が瞬いて、糸のように細められる。「何が面白いの、クロア」
「何も、何か居るの?」
「今は幽霊だとかより君が何より恐ろしいや……」
「あは、何いってんの」
いつもの高いきれいな声はなんだかひどく淀んでいるようにラピが感じていると、白い手が伸びてくる。
「なにもないってば、ラピ」
白いしなやかな指が手のひらを這う感覚、いつもはうっとりと目をつぶってしまうものの、まるで毒蛇かなにかに巻き付かれたように、激しく心臓が脈打っている。
眼の前の彼女でさえも、ひどく恐ろしい大蛇のように感じるのだ。獲物を狙う猫のような目で、するりと這う手は蛇のように、甘い高い声は、まるで蜘蛛の巣のように。
「ラピ」
ぐるりと獣が喉を鳴らすように、唸るような声にビクリと体を震わせると、眼前のクロアは消えていて、トドメ色の何とも言えぬ液体が手にまとわりついている。
その手をまじまじと見て、ぱちんと弾けるように理解すると、酷い後悔に襲われた。
きっと夢だと頭を掻きむしっても、グチャリと気味の悪い音がなる。あの夜空のような巻き毛が指にまとわりついている。ブローチがちぎれ落ちている。はちみつのような甘美なる甘い匂いと、何かを焼いたような不快な匂い。
あぁ、ああ__。
--- 𓆛𓆜𓆝𓆞𓆟𓆛𓆜𓆝𓆞𓆟𓆛𓆜𓆝𓆞𓆟 ---
消え入りそうな声で彼女の名前を呼んだとき、ラピはベットの上に居た。
冷や汗をかきながら、隣にいるはずのクロアを手が探す。端っこに寄った体をよせてかき抱くと、寝ぼけた呑気な声が困ったように言う。
「なぁに……悪い夢でも見た?」
「……見たよ」
「どんな、?」
「君が死んじゃう夢だ」
「あは、面白いこと言うね」
夢と同じ乾いた笑い声が耳でこだまし、びくりと体が震える。
「もし私が死ぬときは、ラピの頭も一緒に持ってっちゃうから」
面白げに恐ろしいことを言い、いたずらな笑みをそっと浮かべた。
「それは……ありがたいことだね」
「冗談だってば、死ぬときは一緒ってこと」
「死ぬまで一緒がいいな……」
「もうやめてよ」
ぺちっと白い手にはたかれると、どうにも言いようのない安心感に包まれる。
「……何その顔、ドMってやつ?」
「僕はそういうシュミはないな、君が生きてることにしみじみとしてるって顔」
「…失礼な、もう目さめちゃったじゃん、その顔のせいで」
「まだ4時だけど……」
「パソコン開いて待ってて、お菓子取ってくる」
クロアがもそっと体を起こしてベットから降りようとすると、ラピに引っ掴まれ、その衝動でクロアが倒れると、ラピもバランスを崩してベットから落ちる。まるでドミノ倒しのような状況で、クロアがゴミを見るような目線でラピを見下すと、ラピが苦笑いをする。
「ボクモイッショニイキタイナァ……って」
「頭より体を動かすのは結構、でも今のは頭を先に動かすべきだと思うね」
「ハイ」
「早く立って、」
「ハイ……」
「行くよ」
そっと手を取られて、一寸の隙間なく手がぴったりと絡み合う、嬉しそうに鼻歌を歌いだすラピを怪訝そうに口角をそっと上げたクロアが見上げる。
「君はやっぱり素敵な人だなあって、」
「何が」
返事の代わりに手を揺らすと、クロアは今度はしっかりと笑顔を浮かべた。
夢オチ系……