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明“白“な恋に、告“白“を!
『[[rb:シライ > おじさん]]!』
声が、する。
『[[rb:シライ > おじさん]]!』
アイツしか呼ばない呼び方で、おれを呼ぶ声が。
『___シライせんぱい』
「ッ、は、」
ガバッと体を起こして、さっきのが夢だったことを自覚する。よくわからない熱のせいで、汗が滲む。
身じろいだ時に感じたもののせいで、自分がやらかしたことを自覚した。本当に、本当にここまでとは思っていなかった。(主に、おれの性癖が)
「《《いい》》加減、《《いい》》訳できなくなってきたな…」
相棒が起きる前に、とりあえず汚してしまった衣服を片付けることにした。
「はぁ〜〜〜〜……」
事務室の机に突っ伏して深いため息をついたおれを、相棒のクロホンが心配そうな目で見つめてくる。
『大丈夫か? シライ』
「あー、あぁ、まぁ…」
生返事を返すおれに、クロホンがさらに声をかける。
『体調が悪いなら休んだらどうだ?』
相変わらずおれの相棒は優しい。
「いや、大《《丈夫》》だよ、おれは《《丈夫》》だからな」
おれの言葉にクロホンの画面が少し険しくなるが、構わずおれは報告書の確認作業を続ける。しかし、どうにも朝のことを考えてしまって手がなかなか進まない。
『……本当にどうしたんだ?』
『珍しく悩み事か?』
珍しくとはなんだ。
そういってやりたいが、実際そうなので黙っておく。
何を隠そう、おれは弟子のクロノに片思いしているのだ。15の時から。
わかっている。師弟関係云々以前に、犯罪ではないかと。しかし許してくれ。好きになったのはおれが15、クロノが14の時だ。そう11年前、ここの時間軸で言うとついこの前。中学生時代のおれを狙ったクロックハンズの襲撃を、クロノ、レモン、アカバの三人が助けに来てくれたのだ。
15の時、おれを救ってくれたクロノの姿が忘れられない。おれの命を、孤独を、寂しさを、全部救ってくれた、眩しい光みたいなアイツが中学の時からずっと好きだ。クロノの善性と全部助けるという傲慢さに、いまだにおれは憧憬している。…おれは、全部救うことはできなかったから。
ずっとずっと恋焦がれていた。15の時、クロノたちと別れ際に渡された紙を持ち続けて、縋って。いつ再会できるのか、早く、早くと、時が経つのを嬉しくも怖くも思っていた。そしてやっと会えた時にはおれは22、クロノは10歳だった。12歳差である。悲しきかな。
でも、今度はおれがクロノを救う番だと思って、繰り返して、巻き戻して、結局___
……クロノはおれを恨んでいるかもしれない。トキネちゃんを助けられなかった挙句、クロノ本来の未来をねじ曲げて、こんな職に就かせてしまったんだから。本当は普通に中学に行って高校に行って、普通の幸せな人生を送るはずだったのに。おれのせいで、人の死に慣れるしかなくなって、何度も何度も巻き戻して、やり直して、傷ついて、普通の人生は送れなくなった。
____とまぁ、上記の流れを考えると、おれがクロノを好きな理由も、それを伝えられない理由もわかると思う。何度か、この恋心を消そうとしたこともある。しかし、一度憧れて愛おしいと思ったものを全部忘れて消し去ると言うのはなかなかできることではなかった。そのままずるずると引きずって、現在。伝えなければ大丈夫だろうと判断し、密かにクロノに恋慕している。
それでいい。それしかない。おれのこの気持ちを伝える必要も、同じものをクロノに望む権利もない。だから、ずっとこのまま師匠という立場のまま、アイツになるべく近い位置で___?
「……あー」
意味もなく声を出す。書類は全然片付いていない。当たり前だ。
『シライ…本当に体調が悪いなら……』
「いや、《《棒》》みたいに“《《ぼー》》“っとしてただけだぜ」
吹雪のエフェクトが見える。おかしいな、シラけないギャグのはず。シライだけに。
「それに、今日は巻戻士内で食事会があるからな」
『早く仕事を片付けないと』、とおれが言うと、今度こそクロホンは何も言わなくなった。…そこまでおれがぼけっと考え事をしてるのは珍しいだろうか。
食事会、又の名を飲み会。日頃の疲労を癒すべく、任務で疲れ切った巻戻士たちが、周りへの影響を忘れて愚痴とか色々を肴に飲んだくれようという企画である。飲めない人たちにとっては、参加した時点で酔いどれどもの解放という拷問があるが、まぁ仕方なし。もちろん強制参加ではないが、巻戻士のほとんどが参加するので、実質全員参加みたいなものである。
午後6時から開催されて、そこから夜通し行われる食事会(飲み会)。そのために、シライはデスクに積まれている書類をそれまでに片付けなければいけない。終わらせられなければ、その分二日酔いの明日に回される。そんなことになれば、明日苦しみながら書類を捌くことになるのは明白だ。何より、食事会を何の気兼ねなく楽しみたいのだ。ということで、おれはあと5時間で山積みの書類を片付ける。[[rb:録画 > レコード]]と[[rb:再生 > リプレイ]]でちゃっちゃと終わらせたいのだが、一応ちゃんと確認しなければいけないし、そもそもただの事務作業に[[rb:開眼 >バージョンアップ]]を使うのもどうかと思うので、おとなしく確認作業を続ける。
…なぜリトライアイの修理が終わったおれがまだ書類作業をしているかというと、まだまだおれのは調整中だからだ。数回[[rb:巻戻し > リトライ]]ができても、何百、何千となればどうかはわからない。ということで、おれは何か大きな任務に行く時は他の巻戻士の付き添い、それ以外は以前のように事務作業だ。
「頑張るかぁ……」
デスクに置かれた愛飲のいちごミルクを手に取って飲み、積まれた書類に向き合う。この任務の[[rb:攻略未来 >. クリアルート]]は、おとなしく作業を進めることだ。
「終わった…!」
『頑張ったなシライ!』
現在時刻17:45。移動時間準備時間も含めて、18時からの開催に十分間に合う。
座り作業で凝り“《《固》》“まった“《《肩》》“を回してほぐした。
『行くのか?』
「あぁ…クロホンは?」
『オレたちの間でも情報交換会があるから、そっちには行かないぜ』
「え?」
サポートAI界の中でもこういう場所があることに驚きつつ、クロホンはそれ以上何も言わなかったので、追求はしなかった。
『楽しんでこいよ! シライ』
「あ、あぁ…いってくる」
笑顔の画面を浮かべるクロホンを背に、おれは部屋を後にした。
そしておれはこの時失念していた。おれは、あまり酒に強くないということを。
食事会が行われるのは多目的室だ。何せ、ほぼ全ての巻戻士が集まるので。
そこに食堂で作られた食べ物とありったけの酒(子供用にジュース)(子供が働いているのはおかしいが、労働基準法なんて当てはまらないので)を運び込み、夜通しどんちゃかやるのだ。
でもおれはあまり酒は好きじゃないんだよな、なんて考えつつ多目的室まで通路を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「…シライ」
「あぁ、レモン」
金髪おさげの少女アンドロイド、レモン。以前は感情もなく常に無表情だったが、最近はよく表情が変わるようになった。いいことである。
「お前1人か? クロノたちは?」
「クロノとアカバはまだ任務中、少し遅れるらしいわ」
「そうか」
会話が途切れる。おれもレモンも、特段会話が好きというわけではないので当たり前だ。しばらく沈黙の中歩いていると、ふとレモンが口を開いた。
「シライ、気をつけてね」
「何に??」
「とにかく」
『ほら、多目的室』と、ぐいぐい背中を押されて先に入るよう促される。
「??」
抵抗するほどのことでもないので、されるがまま多目的室に入る。
瞬間、至る方向から歓声が聞こえてきた。
「シライさんだ!」
「すげぇーーー!!」
こういうことか、と思いつつ、適当に愛想笑いを振り撒く。顔色が悪いから悪人ヅラにしか見えないとは言わないでくれ。
「本物だー!握手してください!」
歓声を上げていたうちの1人であろう女性が、おれのもとに寄ってきて握手をねだる。面倒だが、まぁ無視するわけにも行かないので、手を差し出す。ギュッと両手で包み込まれて、なんとかかんとか、褒め言葉を口早に告げられる。満足したのか、その女性はおれの手に何かを握らせて元の場所に戻って行った。
手の中を見ると、小さい紙があった。広げると中に文字が書いてある。連絡先である。適当にポケットに突っ込んだ。思い出すことはないだろう。
いつの間にか近くからいなくなっていたレモンをきょろきょろと探し、そちらへ動こうとした時。
「あの、わたしも…」
「僕も!」
雪崩のように人がやってきた。しくじった。
「あー…」
《《並み》》じゃない人の《《波》》に揉まれつつ、一人一人対応する。本当に、レモンが言っていたのはこれだったのだろう。じゃあ教えてくれよ。
おれはあまりこういう場に行く方じゃないから、物珍しいのだろう。そもそも普段から元特級として、尾ひれも背びれもついて噂が回っているというのに、暇だから参加してみようなんて考えたおれがバカだったかもしれない。
そんなことを考えながら、目の前にいる大量の人を捌いていく(比喩だ)。体感数分が経って、やっと目の前から人がいなくなった。
「…[[rb: 開眼> バージョンアップ]]使えばよかったな」
そう思っても後の祭り。というかもう遅い。全部終わったことだ。
やっと、やっと腰を下ろすことができる、とおれはレモンがいた方へいく。
「あ、シライ」
レモンが後ろを振り返り、おれの名前を呼ぶ。
「お前なぁ…」
苦言を呈そうとするが、その前に大声で名前を呼ばれる。
「シライさん!」
「おー、アカバ」
赤髪の少年アカバ。おれを慕ってくれている、可愛い後輩の1人だ。
というか、おれが人の波に揉まれている間に会場に来ていたのか。
「任務から戻ったんだな、お《《疲れ》》カ《《ツカレー》》」
渾身のギャグなのだが、誰にも触れられず。悲しいぜーなんて言いながら、適当に席に着く。
「あ、[[rb:シライ > おじさん]]きてたんだ」
後ろから声をかけられた。声の主は振り返らなくてもわかる。しかし、意識外のことだったため思いの外大きい声が出た。
「!? クロノ!?」
「え、うん」
何言ってんの、と言いたげな視線をクロノはおれに送る。手にはいくつかの食べ物。向こうのほうへ取りに行っていたのだろう。そしておれがこっちに辿り着いたタイミングでクロノもやってきたということか。
朝のことと昼考えていたこともあり、どういう対応を取ったらいいのかわからない。おれは思春期か。
なんてふざけていたら、おれの隣にクロノが着席する。
「は」
「なに?」
思わず声がもれ出たおれに、クロノが不思議そうに首をかしげる。
「なんでお前がシライさんの隣に座るんじゃ!」
おれが『なんでもない』と言う前に、アカバが勢いよく立ち上がり、クロノに噛みついた。おれを慕ってくれているのは満更でもないが、ちょっとうるさい。
「はぁ…もう一個隣はあるんだから、そっち座ればいいだろ」
「ぐっ……」
そんなアカバに物怖じもせず(というか慣れているに近い)、クロノに正論を言われたアカバは、おとなしく元の席に腰をおろす。席を変えはしないのか、なんて思っていたら、また1人馴染み深いやつがやってきた。
「お、おじゃましまーす…」
おどおどとした短髪黒髪の少女、チャイヌだ。彼女に関してはまぁ色々あったのだが、ここでは割愛させていただく。3時の時とその後しばらくは他の巻戻士からのあたりも強かったが、今ではほとんど言われなくなっていた。
「チャイヌさん!」
クロノが嬉しそうにチャイヌの名前を呼ぶ。そして、彼女に席に座るよう促した。チャイヌはおずおずと、でも幸せそうに、クロノの隣に腰を下ろした。
…面白くない、と感じるおれは子供だろうか。
そう考えると、さらに悪い方向に思考が回る。
なんだ、面白くないって。ガキか。そもそも、おれがクロノにおれと同じ気持ちを求めるのが間違っているんだから。大丈夫。大丈夫だ。おれは大人なんだから、クロノが誰を好きになっても、誰の隣で笑っていても、それを幸せだと思わなければいけない。その隣が、笑いかける相手が、おれがいいなんて、そんな、おこがましいこと。
「……シライ」
自己嫌悪の方向に回り始めた脳内をぶった斬るように、正面のレモンがおれに声をかける。
「なんだ? レモン」
「…考え事?」
「まー、そうだな」
おれが答えると、レモンは何かいいたげな表情になる。しかし、彼女は思ったであろうそれとは違う言葉をを口にした。
「お酒飲む?」
「……じゃあ、もらおうかな」
飲んで忘れる。典型的なやり方だ。こんな場面なんだから、適したやり方だろう。
「わしがお酌しますじゃ!」
レモンの隣からアカバが声を上げる。
「おー、しゅくしゅく(酌)と頼むぜ」
結構いいギャグだったと思うのだが、誰にも触れられず。まぁ、アカバはにこにこしているのでよかった。
出されているグラスに、アカバがワインを注ぐ。半分くらいまで注がれたところで、ワインボトルが上を向いた。
「蟻が10匹だぜ」
「ありがとう」
お礼を言って、赤色の液体を飲み込む。ブドウの芳醇な香りが鼻へと抜けていく。少し《《舌》》がピリピリと《《した》》。
美味しい、といえば美味しいのだが、いちごミルクの方が好きだ。
そう思いながらも、アルコールを摂取することで気が紛れている感じがやめられない。
飲んで忘れる、それでいい。せっかく楽しい食事会なんだから、おれが雰囲気を壊すわけにはいかない。
そこから三時間。飲んで食べての大騒ぎはいまだに続いている。あのあとハイザキとグレイもやってきて、さらに場は盛り上がった。
…酒を飲み始めてからのおれの記憶はあんまりない。ただ、注がれるがまま飲んだり、日本酒と焼酎と、なんか色々ちゃんぽんしたりした記憶しかない。アホすぎる。
「…[[rb:シライ > おじさん]]?」
クロノがおれに心配そうに声をかける。
「あー、くろの?」
酔いのせいで呂律が回らない。舌足らずな声で、おれはクロノの名前を呼んだ。
「……大丈夫?」
『顔が真っ赤だけど』
クロノはおれの体を気遣うように尋ねる。
「あー、うん、だいじょーぶだぜ」
大丈夫、大丈夫と、おれはうわ言のように繰り返す。もうアルコールのせいでうまく頭が回っていない。
「…あんまお酒強くないんだからさ、自重しなよ」
ぼそっと、周りに聞こえないようにクロノはおれに耳打ちした。
吐息が、耳を撫ぜる。くすぐったいような、距離が近くて嬉しいような。もう顔が赤いのが、酒のせいなのか照れのせいなのかわからない、どっちもだろう。
「もう帰ったら? 部屋まで着いて行こうか」
クロノの方を向くと、おれがこれ以上悪酔いするのを憂慮するかのような目をしていた。でも、優しい目だ。おれを救ってくれた、あの日と変わらない目。少し小さいけど、強い意志を宿した黒曜石。
おれの、《《いっとう》》つよくひかる、《《いっとう》》せい。
あぁ、おれは、全部照らしてくれた暖かい光みたいなお前が___
「……だ」
「何? [[rb:シライ > おじさん]]」
「………すき、だ」
『!?』
クロノがぼけっとしているから、外野がクロノの代わりに驚く。チャイヌに至っては食器を落としていた。がちゃんと大きな音が鳴ったが、一度溢れてしまった言葉は止まらず。おれはさらに続ける。
「すきだ、すき、くろの」
酔いのせいで頭が回っていない。ぐるぐると考えるのは、クロノに救われた事実と、思いの《《丈》》《《だけ》》だ。
「ちゅうがくのとき、おまえにすくわれてから、ずっと」
「ずっとすきだった」
そこまで言い終わってから、自分がとんでもないことを宣ったことに気づいた。
さっきまでの決意はどうした。関係を崩さないって決めただろ。おれが、おれがこんなこと言ったら、優しいクロノは拒絶なんてしないってわかってるのに。
ダラダラと冷や汗が出て、頭がぼーっとする。なのに、思考だけはぎゅるぎゅると高速で回転している。頭がズキズキと痛んだ。
「シライ?」
「あわわわわ……」
周りがやんややんやと騒ぎ立てる。というか、このテーブル以外…そう、この会場全体も湧き立っていた。
やれ、『元特級の告白』や、『青少年保護法!!』やら。恋愛なんて、飲んだくれどもが、さらに酒を飲むための肴でしかない。
「おいクロノ! なんとか言ったらどうじゃ」
ずっと黙っているクロノに痺れを切らしたのか、アカバが返答を急かす。
そこでハッとしたのか、クロノが口を開いた。
「[[rb:シライ > おじさん]]、おれも[[rb:シライ > おじさん]]のこと好きだよ」
周りがさらに湧き立つ。今度はアカバもグラスを落とした。プラスチックだった上、何も液体が入っていなくてよかった。
「いちいち言わなくても、知ってるから大丈夫だって」
そう言って、けろけろと笑うクロノ。
こういう時はちゃんと普通の笑顔で笑えるんだな、と言ってやりたいが、おれの脳内はそれどころではない。
え、知ってたって、いつから??? おれは表情が読みやすい方ではないし(自分でも思う)、隠し通す気でいたのに。
周りもバカップルのいちゃつきか、それとも別の何かか判断しかねているらしく、謎の空気が会場を覆う。
そんな空気を離散させたのはレモンだった。
「クロノ、その『好き』はどの『好き』?」
「?」
不思議そうに《《こてん》》と首を傾けるクロノ。可愛い。《《個展》》に飾りたいくらい。
「えっと、よくわかんないけど__」
「レモンもアカバも、チャイヌさんも、ハイザキもグレイも、もちろん[[rb:シライ > おじさん]]も、みんな好きだ」
ピシッと、体が石化してヒビが入ったみたいな衝撃。
そうか、そうか、おまえの中でおれは特別でもなんでもないんだな。救ってきた中の、1人。
酒で火照っていた顔の熱が、一気に冷める。言ってしまった挙句、この思いは報われないのか。大丈夫、なんて思っていたけれど、やはりショックだ。
「そう、そうなのね」
だってよ、とでもいいたげにレモンがおれを見た。ちょっと嬉しそうなのが気に食わない。
「………かえる」
ガタッと席を立ち上がり、おれはそう宣言する。
「え、[[rb:シライ > おじさん]]?」
『もう帰るの』と、クロノが呼び止める。言えるわけない。
「あぁ、《《夜》》は寝《《ないと》》だからな」
「えっ、あー、おやすみ」
引き止めることすらされない。去るもの追わず、来るもの拒まずか。
あぁ、おれは、おまえの中でなんなんだ。
鼻にツンとしたものが来るのに気づかないふりをして、おれは足早に出口へと向かう。
「あのっ」
誰に声をかけられようが、無視して進む。
うるさい。おまえらに、おまえらに何がわかるんだよ。
扉を抜けて、廊下をできるだけ早く歩く。早く、早く寝てしまいたい。そして全部夢だったらいいのに。
巻戻士のほぼ全員が多目的室にいるからか、少し肌寒い通路には誰もいない。音がしないのが、余計におれの思考を掻き立てr。
「……なんで、なんでっ」
視界が滲みかけている。これはダメだ。ダメなやつだ。
自室の扉を見つけて、乱暴に開いて体を滑り込ませる。そしてスーツも脱がずにベッドに飛び込んだ。ぼすんと音がして、スプリングが軋む。
「っ、くろの、クロノ……」
やっぱりすきだ。
おまえはおれのこと、なんともおもっていなくても。
酒のせいか、疲労か、おれの意識はゆっくりと泥濘に沈んでいった。
「っあ゛ー………」
二日酔いのせいで頭がガンガン痛む。そしてそれよりも、昨日やらかしたことを思い出して消えたくなった。
なんてことをしたんだ。ずっと隠しておくつもりだったのに。クロノに、余計なことなんて考えてほしくないのに。同じ気持ちを望むなんてことしたくないのに。
どうせ報われないのなら、言わないほうがお互いのためだったのに。なんてもう遅い。
ずっとクロノの『いい師匠』でいてやりたかった。なんて、無理な話だっただろうか。
痛みを和らげるように、または今ある懸念点から目を逸らすように、おれはこめかみをもむ。少し痛みが引いた気がした。
『おはよう、シライ!』
ベッドサイドに充電されていたクロホンが飛び起きて、おれに挨拶をする。いつもは頼もしい電子音が、二日酔いの頭には少し響く。
「あー、おはようクロホン」
『どうしたシライ、二日酔いか?』
「…まぁそんなとこだ」
頭が痛い。が、仕事はしなければいけない。巻戻士という機関はそういうところだ。
前日にどんなに大変な仕事があろうが、それこそ今回のように飲み会があろうが、そこそこ健康ならば翌日には任務、事務作業に駆り出される。あぁ世は非常なり。労働基準法なんて存在しなかったんだ。
未成年が働いている時点で、そんなもの適用されているとは思えないが。
「有給申請…」
口にだしてやめた。どうせやることもないし、趣味もないのだ。ベッドでだらだらとしているだけなら、きっと昨日のことを考えてしまう。そしてベッドでのたうち回ることになるのだがら、いっそ仕事した方がマシだ。作業をしている方が、気が紛れる。
『頭痛薬はそっちだぜ』
それをわかってか、クロホンは強く休みを推奨することはなく、痛みを緩和させる方向にシフトしてきた。
おれはのっそりと立ち上がってベッドから降り、ほとんど物のない部屋に置かれた救急箱を取る。かぱっと開けると、ほとんど使われていない医療品が見えた。そこから箱の頭痛薬をとり、いくつか取り出そうとした。
「あ、水」
そこまでいって、手元に流し込むための飲み物がないことに気づいた。よく考えたら食事前だから、まだ飲むことはできない。
食堂にいって朝ごはんを食べて、ついでに水ももらってくることにしよう。そう考えて、クロホンを呼ぶ。
おれの大切な相棒はすぐに飛んできて、おれの周りに浮かんでいる。その様子を確認して、まだ痛みの続く頭を抑えながら、おれは部屋の扉を開けた。
『あ』
早朝なせいで人の少ない食堂で、二つの声が重なる。
「…レモン」
「シライ、おはよう」
相変わらずの無表情のレモンに、おれも挨拶を返す。
しかし、内心はバクバクだ。何せ、昨日やらかしたことを見られているから。至近距離で。なんなら介入されている。
その後会話が続くこともなく、しばしの無言。もう始まらないだろうと、おれが食事を持ったまま席につこうとした時、レモンが口を開いた。
「……隣、座っていいかしら」
「え? まぁ」
おれの右隣にレモンも腰を下ろす。レモンの食事はナポリタンだ。
朝から重くない?とツッコミたいが、本来彼女に食事はいらない。アンドロイドだからだ。でもクロノやアカバといるようになってから、一緒に食事するようになったらしい。そしてそれが習慣付いたみたいだ。
黙々とお互いに食事を口に運ぶ。味がしない。どうしても昨日のことが気になってしまう。
沈黙を先に破ったのはレモンの声だった。
「昨日のことだけど、」
「っげほ、え!?」
飲んでいた水が気管に入り、しばらく咽せる。
「大丈夫?」
「大丈夫だ…」
心配そうにおれを見上げるレモンに、おれの体が“丈夫“な旨を伝える。
「クロノの件。あなたとしては、告白のつもりだったんでしょう?」
「………そうだな」
本当にそうだ。おれはクロノのことが好きで、でもクロノを困らせたくなくて、ずっと黙っていたのに。酒のせいで正常な判断ができなくなった脳は、クロノの『光』を見た途端気持ちを吐露しやがった。巻き戻して、昨日の自分を殴りに行きたい。
挙句、この思いは報われないのだ。クロノがおれに向ける『好き』は、大多数と同じ。同じくくり。救ってきた中の1人。仲間の1人。そもそも、おれの告白をかわすためにあんなことを言ったのかもしれない。
そう考えると、頭痛がさらにひどくなった。
「クロノは、まだ友人に向ける『好き』と、恋人に向ける『好き』の違いがわからないだけだと思うわ」
「……え」
愕然とする。いくら12個歳が離れているとはいえ、アイツは14歳。思春期真っ只中のはずだ。そんな、子供みたいなこと___
そう思って今までのことを振り返る。クロノの一番近くにいた大人は? 無論、おれだ。おれはアイツに恋愛について教えたか? 否、おれの初恋がクロノの時点で、教えることができるわけない。そもそも、クロノはトキネちゃんを救うために、日々修行。入隊してからもずっと任務に明け暮れていた。まともな恋愛観が育つわけない。
「あー………」
無意味に声が出る。これは、まだ諦めなくてもいいのだろうか。
「わたしはクロノのことが好き、彼の弟子2人も、アカバも、チャイヌも、シライも」
「みんなみんな、大切な仲間」
「でも、シライがクロノに向ける『好き』は、これとは違うんでしょう」
レモンの蜂蜜色の瞳がおれを射抜く。意志を曲げない、強い巻戻士の瞳だ。きっと、眼帯の下のもう一つも同じ目をしている。
「諦めないで、わかってもらえるまで伝えて」
「諦めが悪いのが、巻戻士の取り柄でしょ?」
レモンの思い浮かべる『諦めが悪い巻戻士』は、1人だろ。なんて言いたかったが、飲み込む。レモンも、アイツに救われた1人だ。アイツの光に、優しさに、傲慢とも言える諦めの悪さに、大切なものを救われて、大切なものをもらったやつの顔だ。
優しく微笑むレモンの顔に、おれだって気付かされた。
「そうだな、そうだ、うん」
「___レモン」
名前を呼ぶ。
「蟻が10匹だ」
「ありがとう」
おれも笑みを返す。
薬を口に含んで、残りの水で飲み干す。
「もう大丈夫なら、よかった」
人工的な光が差し込む。少し、アイツの姿と重なる。
「そうだな、おれは巻戻士だ」
弟子が何一つとして諦めていないのに、師匠が諦めるなんて情けなさすぎる。まだ何一つとして終わっちゃいない。何回でも伝える。何通りでも試す。だって、おれは巻戻士だから。
「レモンも今日の任務気をつけろよ」
「…ありがとう、大丈夫よ」
レモンも、アンドロイドだから心配はいらないと言わなくなった。
みんな成長している。後は、おれだけだ。
そう考えて、おれは席を立った。
食堂を出た後、おれは本日の業務を行うため、事務室へと向かう。その途中で、後ろから大声で話しかけられた。
「ねぇ!!」
活発で明るい声。少し怒気を孕んでいる。
後ろを振り向くと、予想通りの人物たちがいた。
「グレイ…とハイザキ」
顔をしかめてこちらを睨むグレイと、何を考えているかわからない笑顔を浮かべるハイザキ。その2人が、おれの正面で仁王立ちしていた。
2人はクロノの弟子だ。ハイザキは未来でクロノに救われ、グレイは過去でクロノに救われた。そして弟子となり、今度はクロノを救った。おれには、できなかったことだ。
「昨日のこと、聞きましたよ」
ハイザキが含み笑いを浮かべながら口を開く。しかし目が笑っていない。
「あんた、クロノに告白したんでしょ?」
グレイはそう言いながら、つかつかとおれに近づく。そして、射抜くようにおれを見上げてきた。
「伝わってなくてかわいそー」
からかうような意地の悪くけらけらと笑うグレイ。
なんだコイツら、傷を抉りにきたのかと思ったが、一応大人なので、口に出さないでおく。
「《《さめ》》ざめと泣くおれを、なぐ《《さめ》》にきてくれたのか?」
おれのダジャレに、グレイはまた顔をしかめる。
「違いますよ」
「ただ、忠告しにきたんです」
ハイザキは少し声を大きくして言った。
おれは固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「___ちゃんと、クロノさんを幸せにしてあげてください」
「は、」
グレイも後ろに少し下がり、おれをビシッと指差して言う。
「じゃなきゃ許さないから! クロノのこと、落としてみせてよね!」
そう言ってニカっと笑うグレイ。後ろのハイザキは、『できなければ殺す』といった目で見てくる。顔は笑っているのに怖い。
しかし、これは、どういうことだろうか。
クロノ信者で、クロノに心酔しているコイツらが、おれがクロノと結ばれることを望むとは思えなかった。
「おまえら…いいのか?」
おれが尋ねると、グレイは寂しそうな笑みを一瞬浮かべたが、すぐにいつもの快活な笑顔に戻して口を開いた。
「大丈夫! うちらは、クロノの幸せが一番なんだから!」
「そうです。それに、それは僕たちにはできないことですから」
ハイザキも、今度は優しく微笑んだ。
あぁ、クロノは。クロノは本当にいい弟子に恵まれている。それもこれも、アイツがもつ唯一無二の『光』のおかげだろう。
「だから、さっさともう一回告白してきなさいよ!」
「玉砕したら今度こそうちらが慰めたげる」
「クロノさんを悲しませたら銃弾が飛んでくると思ってくださいね」
グレイのツンデレな応援に混じって、ハイザキのとんでもない脅しが聞こえた気がしたが、気にしないことにする。
今日は本当に___
「2人とも、蟻が10匹だ。ありがとう」
お礼を言ってばかりだ。
「いいってこと!」
「頑張ってくださいね」
2人に手を振り、おれは事務室へと向かう。
クロノの弟子に励まされ、レモンにも励まされた。
これはハッパをかけられたと思っていいだろう。ここで止まるわけにはいかない。諦めない。何度でも、何度でも伝えてやる。
クロノがわかってくれるまで、何回でも、何回でも何回でも何回でも、何回でも。だって、巻戻士は諦めないのが取り柄なんだから。クロノは、何一つとして諦めなかったのだから。
少し軽くなった心で事務室の扉を開ける。
すると、今までずっと黙っていたクロホンが口を開いた。
『え、シライおまえ、クロノに告白したのか?』
一気に頭痛がしてきた。
「…あー、まぁ、まぁまぁ…そうだな」
『犯罪だろ』
おれの他にクロノの小さい頃を知っているやつといえば、隊長と、他にクロホンくらいしかいない。故に、こういう時。娘の父親みたいな立場になるのはクロホンなのだ。
そして、今まで誰にもつっこまれなかった場所をつっこまれた。もうだめだ。法律には勝てない。
『……クロノが18になるまで、ちゃんと待てるか?』
「もちろん」
おれは答えるが、信用ならないと言った画面でクロホンは見つめてくる。仮にもおれのサポートAIだよな??
『シライ、クロノはまだ子供だ。それも、14の』
「わかってる」
おれが告白したとして、意味を理解してもクロノはきっと断らないだろう。だってアイツはひどく優しいから。
それが、果たしてクロノにとっていいことなのかはわからない。14歳。本来ならば学校に行って、友達と遊んで、ちゃんと彼女だってできたかもしれない年齢。巻戻士のせいで今は学校に行けていなくても、別の出会いがあったかもしれない。同年代の、可愛い女の子との。
おれの思いを伝えることで、それらは全部クロノの前から消し去られる。
クロノに受け入れられたらもう、おれはきっとアイツを手放してやれない。それが、幸せなのかどうか、悩んだこともある。
『シライ、おまえが責任とって幸せにしろよ』
みんなクロノが大好きだ。だから、みんなアイツの幸せを願っている。おれが、クロノに一番近い位置で、一番大きな幸を与えられたら。
「あぁ、もちろんだ」
『なら大丈夫だ』
おれの優しくて厳しい相棒は、おれがクロノに告白し直すことを許してくれた。
ただ、とクロホンはまた口を開く。
『絶ッッッッ対、18になるまで手は出すなよ』
「……約束する」
『こっち見ろ』
『破ったらオレの[[rb:開眼 > バージョンアップ]]が飛んでいくからな』と言われた。え、スマホの[[rb:開眼 > バージョンアップ]]って何???
『シライ、頑張れよ』
「あぁ、ありがとう」
ずっと中学生の頃に出会ったクロノの夢を見ていた。救ってくれたクロノに、光と生きる希望を見出した。そして10歳のクロノに出会って、弟子にして、ずっと一歩後ろで成長見続けてきた。
また、またアイツの隣に立てるかもしれない。今度こそアイツの光に。クロノに救ってもらった恩を、今度こそ返したい。そして、一番近い位置で、アイツの光に焼かれていたい。
「さて、仕事を頑張るとするか」
『二日酔いは大丈夫なのか?』
心配そうな画面を浮かべるクロホン。おれはそんな相棒を安心させるため口を開いた。
「朝ごはん食ったら治った」
実際は少し痛みが残るが、鎮痛剤が効いてくれば治るだろう。
『さすがだぜシライ!』
クロホンが楽しそうにおれの周りをとびまわる。
「あと7時間か」
山積みの書類を見上げる。片付けられるだろうか。いや、片付ける。
骨が折れること間違いなしだが、一歩ずつやっていこう。
まずは仕事が終わったら、花束を買いに行くことからだ。
---
[[rb:シライ > おじさん]]に、好きと言われた。そんなの知ってる、と返したらひどく驚いた顔をされた。そして、逃げるように[[rb:シライ > おじさん]]はいなくなってしまった。
「うーん…」
[[rb:シライ > おじさん]]が消えていった出口の方向を見つめながらおれは考える。
何がだめだったんだろう。何か返答を間違えたのだろうか。間違えたんだろうな。おれは昔からこういうところがあってだめだ。
10歳の頃から一緒だったんだから、[[rb:シライ > おじさん]]がおれに注いでくれていた愛情は知っていたつもりだ。家族から離れて暮らしているこの四年間、寂しくなかったのは[[rb:シライ > おじさん]]がくれた家族愛に近い感情のおかげだ。そして、大切な仲間としての情もある。一瞬だけだったけど、明確に友人だったこともあった。
そう思っての答えだったのだが…
「クロノ…おまえ正気か?」
なぜアカバにドン引かれた目で見られなければならないのか。
「正気って…お酒飲んでないし、大丈夫だ」
おれが答えると、アカバは信じられないと言った顔をした。
「ハァ…クロノ、帰れ」
「なんで??」
『一回寝て頭冷やしてくるんじ』ゃ、とアカバにグイグイ背中を押されて、自室に帰るよう促される。意味がわからない。
「え、クロノくん帰るんですか」
「おやすみ、クロノ」
「ちょっ」
チャイヌもレモンも助けてはくれない。アカバに力で勝てるわけもなく、おれはあっという間に出口の方へ押したくられてしまった。
「さっさと寝て、もう一回よく考えるんじゃ!」
おれにそういうと、アカバはさっさと中に戻ってしまった。本当に意味がわからない。
仕方ないから、おれは自室に帰るため通路を歩く。夜は空気が冷たい。
「はぁ〜〜〜……」
ガチャっとドアを開いて、ベッドに飛び込む。がらんどうの部屋に置かれた、数少ない寝具である。
「なにがだめだったんだ…?」
何か[[rb:シライ > おじさん]]の気に触ることを言ったことは明白だ。それが何かはわからないが。
「あー…」
意味もなく声がでる。なんだかどっと疲れがきて、急に眠気が襲ってきた。
考えてもわからないなら、いっそ寝てしまおう。そうして方が思考もクリアになる。
そう決め終わるか終わらないかの瀬戸際に、おれの意識は沈んでいった。
「ん…」
ぐっと体を起こし、伸びを一つ。
「おはよう、スマホン」
そして、充電されているであろうおれの相棒に挨拶をした。
電源がつく音がして、画面が明るくなり、愛らしい顔が表示される。
『おはようございますクロノさん!』
「おう、おはようスマホン」
スマホンはプロペラを回し、おれの顔あたりに飛んでくる。
『昨日はどうでしたか?』
「楽しかったぞ」
そう言ったところで、昨日のことを思い出した。そうだ、なぜか[[rb:シライ > おじさん]]の気に触ることを言ってしまって、アカバに頭を冷やしてこいと言われたんだ。
「…でも、[[rb:シライ > おじさん]]に…」
『え、何かあったんですか?』
目を丸くしたスマホンに、昨日あった出来事を聞かせる。スマホンの画面はどんどんと目が見開かれていく。
「___ってことがあったんだよ。おれ、何しちゃったのかな」
『それは…うーん…』
スマホンもわからないのだろうか。
仕方ない、とおれはベッドから足を下ろし、身支度を始める。
その間もスマホンは、『こういうのは自分で…』とか『教育的に…』などと言っている。教育的にってなんだ。
「よし、今日も頑張るか」
上着を羽織ると、いつもの自分だ。
いくら前日に飲み会があろうとなんだろうと、巻戻士の仕事がストップすることはない。今日もどこかの時代で、理不尽な死の運命に囚われている人がいるのだ。
『はい!クロノさん』
まずは朝ごはんを食べるべく、食堂に向かおうとした時だった。
「ノロマ!!」
バーンと扉が開いて、特徴的な赤が目に飛び込んできた。
「アカバ、おはよう」
『アカバさん!』
アカバは挨拶を返すことなく、おれの腕を引っ掴み、ベッドの方へ引っ張る。部屋の中へ逆戻りだ。
そのままベッドに2人して座り込む。
「クロノ、昨日の答えは出たんじゃろうな」
「いや、それが…」
おれの表情を見て察したのか、アカバは深いため息をついた。
「ノロマがそこまで鈍感だとはな…」
「?」
頭に疑問符を浮かべるおれを見て、アカバは意を決したように口を開いた。
「いいか?よく聞くんじゃぞ」
「シライさんはな、おまえのことが好きなんじゃ」
「知ってるって」
おれがそういうと、アカバは呆れたような目をよこす。
「おまえの言ってる『好き』と、シライさんの言ってる『好き』は違うんじゃ」
「……え?」
どういうことだろうか。全く別の視点に、おれは目を白黒とさせる。
「おまえの言ってる『好き』は友人に向けるものに近いじゃろ」
「近いというか、[[rb:シライ > おじさん]]はそうじゃないのか?」
少し家族愛に似ているかもしれないが、大体は一緒だろう。
「おまえは本当に色恋沙汰に疎いんじゃな」
「いろ…?」
アカバの表情筋がぴくぴくしている。アカバはせっかちだから、煮え切らず、赤羽の伝えたいことが伝わらないおれの態度にイライラしているのだろう。それでも、朝になってきてくれたり、おれが正解に辿り着くのを待ってくれていたりと、一番最初に出会ったアカバとは比べ物にならないほど成長した。
「焦ったいのぉ!」
そしてとうとうアカバも我慢の限界が来たのか、おれの肩をガシッと掴んで言った。
「シライさんは、おまえが好きなんじゃ、恋愛的な意味で!!」
「…………え?」
れんあい、れんあい、恋愛。恋と愛。
おれの脳内が情報を処理するより先に、アカバが捲し立てる。
「そもそも友愛だったとして、あの状況でいうわけないじゃろ」
「おまえは本当に___って、クロノ?」
好き、[[rb:シライ > おじさん]]が、おれを。好き?
真っ先に浮かんだのは、ツンコさんの任務だ。恋愛においての好きって、ああいうものなのだろうかと思ったことがある。でも、おれは恋愛に関わりのある環境ではないし、そもそも興味がないから、すっかり記憶から抜け落ちていた。
「おまえ、顔が真っ赤じゃぞ」
「へ」
言われてわかった。顔がすごく熱い。風邪をひいて、熱が出たみたいな。
「そうか。うん。そうじゃな」
アカバは何に納得したのか、1人うんうんと頷いている。
「よし、とりあえず理解したじゃろ」
アカバは満足したのか、腰を上げ、扉の方へ向かう。
「じゃ、わしは任務に行ってくる」
「えっ、あ」
顔がまだ熱い。でも、言わないわけにはいかない。
「ありがとう、アカバ!」
「はん、シライさんのためじゃ、勘違いするなよ!」
照れ隠しか、少し乱暴に扉を閉めて、アカバは去っていった。
「スマホン」
ずっと黙っていた相棒に声をかける。
『クロノさん』
「ちゃんと、まだわかってないことも多いけど、[[rb:シライ > おじさん]]の気持ちはわかった」
まだ自分の気持ちはわからない。でも、でも。
「朝ごはん食べに行こう」
もう少し、もう少しで分かりそうな気がする。
『はい!』
おれは部屋を出た。
「クロノくん!」
食堂に向かう通路を歩いていたところで、後ろから声をかけられた。
「チャイヌさん」
振り向くと、黒い短髪と特徴的な赤いアホ毛を持つ彼女がいた。
以前のおどおどした感じは薄まり、自分の意思を持つようになったチャイヌはきっともう大丈夫だ。
「あの、ちょっといいですか」
「なんですか?」
『昨日のことなんですけど』、とおずおずと彼女は口を開いた。
「えっと、………大丈夫ですか?」
長考したのち、チャイヌが言ったのはおれへの脈絡のない心配だった。でも、言いたいことはなんとなくわかるので問題はない。
「はい。[[rb:シライ > おじさん]]のことですよね」
おれがそういうと、チャイヌはぶんぶんと何度も頷いた。
確かに、少し触れづらいことだから、優しいチャイヌが尋ねるのに戸惑うのもわかる。おれは気にしないのだけれど。
「えーっと、アカバに今朝色々教えてもらって…」
「…よかった」
チャイヌが小さく声をもらす。
「それで、おれはどうしたらいいのかなって」
「そうですか…」
そこまで聞くと、チャイヌは押し黙った。しばらくして、チャイヌは力強い目でおれを見た。
「クロノくんは___」
「______クロノくんは、どうしたいですか」
「……おれ?」
赤色の隻眼がおれを射抜く。言い逃れを許さない、意思を感じさせる目だ。
しばらくして、その言葉が、おれがチャイヌに言ったものと同じ意味だと気づいた。
『自分の未来は自分で決めろ』と、おれはチャイヌに言った。だから、チャイヌもおれに『自分のしたいようにしろ』と。
そこまで気づいて、胸がカッと熱くなる。
「おれは、おれは___」
でもすぐに、その熱は冷めた。
だってトキネは?
「おれは、できない」
「え?」
トキネはまだ、あの日に置いて行かれたままだ。まだあそこで、助けを待ってる。おれが、おれがどうにもできなかったから。おれの力では、トキネを助けることはできなかった。
だから、だから早く。早くおれが助けないと。
どんなに恨まれていてもいい。ただ、トキネにまた笑ってほしい。トキネは、いろんな人たちに囲まれて幸せでいるべきだから。
そう考えると、自然と呼吸が浅くなる。視界が白んで、前がよく見えない。ぐらっと体が傾いたのを、チャイヌが支えてくれた。
「だっだだだ大丈夫ですか!?」
「っ、は、っは、っ…はっはっは…」
呼吸ができない。あれ、どうやってやるんだっけ?
「クロノくん、クロノくんっ…!」
チャイヌの泣きそうな顔が見える。しっかりしなければと思うほど、呼吸の仕方が思い出せなくなる。
「…っ」
「吸って、吐いて、吸って…?」
チャイヌがとるリズムに合わせて呼吸をする。ぐわんぐわん歪む視界がマシになった。伝わる体温が懐かしい。
しばらくすると、ちゃんとした呼吸ができるようになった。チャイヌにお礼を告げて、彼女から離れる。ちゃんと自立できている。
「くろのくぅん…」
落ち着いたところで、チャイヌがぼたぼたと涙を流し始めた。
「わっ、すみません。なんか呼吸が___」
言い終わる前に、チャイヌに抱きしめられた。ギュッと力が加えられる。
「死んじゃうかと思いましたぁ…」
ぐすぐすと音が聞こえる。
「……ごめんなさい、ありがとうございます」
少しの間、互いの体温を共有していた。
「ぐすっ、ずびばぜん。なんかわたしが…」
「大丈夫ですよ」
滲む涙を拭い続けながら、チャイヌは鼻詰まりの声で謝った。
「……それで、『できない』ってどういうことですか」
先ほどまで大泣きしていた瞳なのに、今はもう『話から逃げることは許さない』と言わんばかりの視線だ。
「………おれは、トキネを、妹を置いて幸せになることはできない…!」
だってトキネは、トキネは。あのトラックの前でずっと、ずっとずっとずっと!
チャイヌは目を少し見開いた後、優しげに細めて口を開いた。
「大丈夫です」
「あなたの[[rb:未来 > 幸せ]]は、あなたが決めていいんです」
「妹さんも、きっとそれを望んでいる」
おれが言ったことだから、強く反論もできない。おれは弱々しく、『でも』『だって』と意味をなさない単語を言うことしかできなかった。
「でも、でもトキネは、___」
それ以上弱きになることを許さないという風に、チャイヌが口を挟んだ。
「大丈夫。トキネさんも、クロノくんも幸せになれば何も問題ないです」
「は、ぇ」
ずっと横で浮遊しながら無言で話を聞いていたスマホンが、『まるでクロノさんみたいなこと言いますね』と小さく電子音を鳴らしていた。
「クロノくん、どうしたいんですか?」
「おれは、おれは………」
思案するおれを、見ながら、チャイヌが、あっと声を上げた。
「もしかしてシライさんのこと全然そういう風に見てなかったりします…??」
『全然いらないこと言っちゃった』と、またも涙で視界をぼかし始めたチャイヌに、おれは声をかける。
「いえ、勇気づけられました。ありがとうございます」
ぎこちなく笑顔を作ってみると、チャイヌは愛らしい笑みを返してくれた。
[[rb:シライ > おじさん]]のこと、どう思っているか。
おれにトキネを助ける道を教えてくれた巻戻士。おれが巻戻士になるために修行をしてくれた師匠。1日だけ、中学時代の先輩。
やはり、頼りになる師匠というイメージが強い。
ならば、[[rb:シライ > おじさん]]に何かされたくないことがあるだろうか。例えば、きす、とか。
想像してみるが、別に嫌な気持ちにはならない。
「うーん…」
「えと、どうですか…?」
「好き、と言われれば好きだけど…それが恋愛かと言われると…」
「チャニイに[[rb:変更 > エンコード]]してみます…?」
「……参考になるかな」
「………」
2人して頭を悩ませる。
ふと、例えば別の人だったらどうだろうと考える。
例えばアカバ。アカバとキスするってなったら?
任務で必要ならするが、愛情表現としてするのは嫌だ。アカバも嫌がるだろうという先入観もあるが。
例えばレモン。
これは…見た目が少女だから微妙なところだ。でも、しなくていいならしない。
やはり、任務抜きにキスするとなったら、[[rb:シライ > おじさん]]以外には少し抵抗感があるかもしれない。
これが、好きということなのだろうか。
「えと、チャイヌさん___」
先ほどまで考えていたことをチャイヌに伝える。彼女はしばらく思考したあと、はっきりと述べた。
「……それは『好き』ですね」
「そう、ですか…??」
おれが納得しかけたところで、『でも』とチャイヌが口を開く。
「改めて向き合ってみて嫌だったら断ってもいいんです」
「シライさんも、多少傷つきはすれど、大人ですから」
「でも、もし嫌じゃなかったら、はっきりと自分の気持ちがわかったら、その時は」
「その時は、シライさんを受け入れて、幸せになってくださいね」
にっこり微笑んだチャイヌは、もうあの時の弱々しい彼女ではない。
おれも、覚悟を決めるべきだ。
「ありがとうございます、チャイヌさん!」
「…いえいえ!」
「……はい、頑張ってくださいね」
大きく手を振り、おれは食堂に向かう。
「…敵に塩送るようなことしちゃった」
チャイヌの呟きを聞き届けることなく。
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『午後七時くらいに、部屋に行ってもいいか?』と打ったメールの返信が来たのを確認して、おれはスマホを置く。
『どうだ? シライ』
相棒のクロホンが心配そうに見つめる。
「大丈夫だ。おれも覚悟が決まったしな」
現在時刻は午後六時半。あと三十分だ。
あと三十分で、おれはクロノに告白のやり直しをしに行く。失敗しても構わない。伝わるまで伝える。報われなくても構わない。ただ、ちゃんと正気の状態で伝えて、伝わって上で振られたかった。
お互いに意味もわからず告白して振られるなんて悲しすぎる。告《《白》》は、明《《白》》にしなければ。
「クロホン」
『どうしたんだ?』
意味もなく相棒の名前を呼ぶ。会話が続くことはないから、プロペラの、回る音だけが聞こえる。
『……どうしたんだ?』
名前を呼んだのに続く会話がないことを疑問に思ったのか、クロホンが再度尋ねる。
「………呼んだだけだ」
『なんだそれ』
吹き出したように笑うクロホンをみて、少し心が軽くなった。
実際は、不安で仕方ない。吹っ切れたように見せていても、心うちはずぅっと荒ぶっている。振られることへの不安じゃない。何か、別のもの。
おれのせいで、いらない負担まで背負ってしまったら。おれは、気遣われたいわけでも、同情がほしいわけでもないから。優しいクロノに枷になるようなことを考えさせたくない。なんて今更だろうか。
不安の芽は他にもある。もしクロノがこれで『恋』を知って、別の人と結ばれたら。そう考えると、胃がきゅっとなって、何も食べていないのに吐きそうになる。本来それは、喜ばしいことなのに。
なんでだろうか。きっと、他の人に背を押されたからだ。他責に聞こえるだろうが、他の人に否定されれば、今ほど重い気持ちになることもなかった…と思う。レモンやクロノの弟子2人に背中を蹴っ飛ばされて、もしかしたらと思ってしまった。そんなこと、望まなくていいのに。それはただのおれのワガママなのに。
「…っはー」
息を吸って、はく。落ち着くわけもないので、机に置いてあるいちごミルクを一口、口にに含んだ。人工甘味料で表現されたいちごの味がする。
部屋の時計をみると、午後六時五十分。そろそろ本当に腹を括る時間だ。
「よし、行くか」
終業後、急いで買ってきた花束を《《手に持つ》》。《《手荷物》》だけに。
『頑張れよ! シライ!!』
『手は出すなよ』
「ありがとう、クロホン」
最後の一言は余計だが、やはり胸がきゅっとなる。
心優しい(AIだけど)相棒を背に、おれは精一杯感謝を伝える。
そして、花を傷つけないように慎重に扉を開けて、おれはクロノの部屋に向かった。
いくら終業時間が午後五時くらいとはいえ、ほとんどの巻戻士が任務後の報告書作りや、事務員などもその報告書の確認なので忙しく働いてる。残業万歳。相変わらず思うがブラックすぎる。
皆々様が残業をしているところをおれは本来の終業時間でスパッと仕事をやめ、ダッシュで近場の花屋に駆け込んだ。そして、ここ最近で一番大きな買い物をした。花束を買ったのである。
花の種類は、ひまわり、ガーベラ、チューリップ、カスミソウ、ブルースター、リンドウ…なんかそんな感じのやつである。名前だけはかろうじて、巻戻士の記憶力で覚えているが、花言葉までは忘れてしまった。店員だが、『告白ですか?』と聞いてきたのだけは覚えている。
そんなことを考えながら、おれは巻戻士寮内の通路をひたすら歩く。やはり人通りは少ない。
しかし、その方が都合がいい。何せ、『元特級巻戻士が花束を抱えて誰かの部屋に向かってる』なんて注目の的だからである。昨日大勢の前で告白(酒入り)をしたのだから今更感もあるが。
気づけば目の前にクロノの部屋があった。
大丈夫。大丈夫と自己暗示をする。
そう、報われなくてもいい。ただ、おれの自己満足で伝えたいだけなのだから。伝わって、振られても大丈夫。もし無理をしてそうだったら諭せばいい。おれは傷つかない。だって大人だから。
もうすぐ、中学校時代からの初恋に何かが起きる。いや、酔った状態で告白した時すでに、何か変わっていたのだろうが。
意を決して、おれはクロノの部屋の扉をノックした。
「どうぞ」
扉の奥から、くぐもった声が聞こえる。おれは扉を開けてから、花束を正面から見えないように後ろに回して入室した。
「[[rb:シライ > おじさん]]…」
相変わらずほとんど物のない部屋に、クロノが1人、ポツンと立っていた。座っていればいいのに、と思ったが、誠心誠意答えてくれる気などだと理解する。とりあえず、今回も伝わらないということはなさそうだ。
「クロノ」
名前を呼ぶ。
「クロノ」
もう一度名前を呼ぶ。クロノは何も言わない。
心臓がバクバクとうるさい。顔に熱が集まるのを感じる。大きく息を吸って、言った。
「好きだ。クロノ」
花束を差し出す。
「中学時代、お前に救われてからずっと好きだった」
時間が止まったかのような錯覚。誰か[[rb:停止 > ストップ]]したか?
なんてふざけてしまわなければいけないほど心は限界だ。よくわからない汗がだらだら流れる。
しばしの沈黙を破ったのはクロノだった。クロノは花束を受け取り、口を開く。
「おれ、も、おれも、おれも[[rb:シライ > おじさん]]が好きだよ」
「____え?」
予想外の答えが返ってきたことにより、間抜けな音がもれる。
「アカバとか、チャイヌさんとかに教えてもらったんだ」
「おれの知ってる、友達に向ける『好き』と、[[rb:シライ > おじさん]]が言ってる『好き』は違うんだって」
あいつら、と思いつつ、クロノの話に耳を傾ける。
「それで色々考えて…やっぱりおれも、[[rb:シライ > おじさん]]に向ける『好き』は、別のものなんじゃないかって思って」
「今日、[[rb:シライ > おじさん]]の話を聞いてから判断しようと思ってた」
「やっぱり、おれは[[rb:シライ > おじさん]]のことが好きだ」
あぁ、あぁ、やっぱりお前はおれの光だ。《《一等》》強く光る《《一等》》星。または、全てを照らす太陽。
黒曜石におれのことをまっすぐ見られたらもうだめだ。疑うなんてできなくなってしまう。おれは、おれはコイツの曲がりくねりひずみのない瞳に射抜かれると何もできなくなってしまう。
クロノの肩に手を置き、自分の意思とは関係なく言葉がとめどなく溢れ出る。
「おれも、おれもずっとすきだった…」
クロノを抱きしめ、肩に顔をうずめる。泣きそうなおれの背を、クロノは花束を持っていない手で撫でてくれる。
「おまえに最悪を一瞬変えてもらってから、約束の日が待ち遠しくて仕方なかった」
「何も諦めないおまえが、眩しくて仕方なかった」
「ずっと、おまえはおれの太陽だった」
丸まった背を、クロノの温かい手のひらが往復している。
「今度はおれがおまえを救う番だと思って、でも__」
「大丈夫だ。十分助けられたよ、おれは」
優しい声でクロノは諭す。ずっと涙腺がうるうるしているのに、これ以上泣かせようとしないでくれ。
「ごめん、ごめんくろの…」
「あの時、おれに巻戻士になるっていう選択をくれてありがとう」
おれの謝罪を、コイツは感謝に変えてしまう。あぁ、ずるい。ずるいやつだ本当に。これ以上惚れ直させないでくれ。
「くろの…すきだ」
「おれもだよ、[[rb:シライ > おじさん]]」
「よかったらおれと付き合ってくれますか?」
おれが言いたくて、でも言えなかったことすらコイツは軽々と言ってしまう。
「づぎあ゛う゛……」
「声大丈夫??」
かろうじて、『いつ振ってもいいから』と伝えると、『絶対ないから安心して』と返された。なんなんだほんと。
「じゃ、よろしくね。[[rb:シライ > おじさん]]」
そう言ってクロノは、おれをぎゅっと抱きしめた。
___おれの明《《白》》な恋は告《《白》》になって、クロノの《《曖》》昧な《《愛》》は明瞭になった。これにてハッピーエンド。
幸せな気持ちで、おれもクロノをさらに強く抱きしめ返した。
<了>
没ネタ
•実は、シライさんのシーンでマイ先生から
『たたら踏んでたら、クロノっちのことあたしがもらっちゃうよん?』みたいな伝言が入り、シライさんが机を殴る…という没シーンがありました。
(思いついたのがシライさんのシーン書き終わった後で、入れる場所がなかっただけです)