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第10話:魔王〈前編〉
次の日、目を覚ますと私はベットの上だった。
昨夜は、お祭りに行って…温泉行って…馬車に乗って…それで…。
多分、それで寝てしまったのだろう。
つまり…
「今日、魔王様との対面ってこと!?」
え、心の準備整ってないんだけど…。
どうしよう…。
そ、そうだ…。
あれだ、もう一度寝よう!
「起きてるなら、着替えてください」
「いえ!今から、二度寝するので!」
私は、何故か聞こえてきた言葉に内心をぶちまけた。
その相手が誰だか知らずに…。
「そんな清々しく言わないでください…」
その呆れたような言葉を聞き私は、バッと掛け布団をめくりあげ扉の付近に立つ彼女を見つめ…驚いた。
「…!?なんで、棗私の部屋に?」
「礼装の着付けには時間がかかりますからね」
「回答になってないよ!!そもそも、主人の許可なく…」
「私は、姫や王子よりも位が上ですので」
「そんな横暴なぁ…」
どうやら、雷狼様は魔王の娘や息子よりも立場が上らしい…。
なんか、悔しい…。
「では、お着換えさせていただきます」
「え…二度寝…させ…あああああああああっ!!」
「ぐすん…棗に、いじわるされたぁ」
「人聞きの悪いこと言わないでください」
ウソ泣き攻撃は、あっけなく崩れ落ちた。
でも、いじわるされたのは事実だもん!
拒否権なしに勝手に着替えさせられたんだから…。
「それは、私の仕事なので意地悪をしたわけではございません」
「心読まないでよ!」
私は、涙目になりながら棗にそう訴える。
ちなみに、この涙目はウソ泣き後だからだ。
決して、恥ずかしくて泣いているわけではない
もう一度言おう。
恥ずかしくて泣いてるわけではないっ!!
「恥ずかしかったんですね」
「だから~!!!」
棗の言葉に、子供っぽく怒ったが…。
どうせ、また何か言われるのだろうと半分呆れた。
結局心を読んだのか、何なのか…棗はあの後何も言ってこずこのドレス姿で朝食を食べるという苦行を呈されこぼさないようにと慎重になりながら鈴音おばあちゃんの手料理を完食したのだった。
その後、馬車に入れられ魔王城へと向かった。
馬車は、人の国からここへ来るまでに使ったものと同じらしく私は少し怯えながら乗っていた。
途中で、私の戦闘能力なら馬車を引く馬とかは余裕とのことだとフミが言ってきたが…
実力で勝っていても、心で負けているので結局だめなのだ。
なんやかんや、言っていたら魔王城へついてしまった。
「ねぇ、棗…今からでも帰らない?なんか、嫌な予感がする…」
背筋が凍るような、首裏を刺されるような…。
そんな悪寒が身を包んだので、棗にそのことを相談してみた。
「と、言われましても…。ここで帰っては、私たちが酷い目に会うので駄目です」
「え、主人より身の安全のほうが大事なの?」
「もちろん」
ノータイムで言い切りやがったこのメイド!
ほんとにメイドか?
ほんとに、私の専属なのか?
「大丈夫ですよ?私は、貴方の専属ですから。でも、私も意思があるので」
「はぁ、分ったよ…。」
心を読まれたことと、その回答に少々不満を持ちながらも私は理解し早速魔王城へと踏み込むのだった。
中は、超豪華だった。
流石王族と言うべきなのか、なんというべきなのか…。
正直良く分からないが、今までの私では一生立ち入れない場所と言うのは確かだ。
私のつたない語彙力で悪いが、魔王城内部の情報をここに言おう。
黒曜石なのか、それともそれに準ずる何かなのか黒い石でできた柱や床、壁や天井などは邪悪な感じを出しつつも、とても高貴な雰囲気が出ている。
そして、何よりも真後ろに門があるのに目の前に広がるのは廊下のような壁だった。
普通なら、玄関やホールなどの広い物がある…ような気がするのだが。
これは、あれか?
城としての場所だから、玄関は必要ないという感じなのだろうか?
その景色に、私は一つの反応をした。
「うわぁ…なにこれぇ~」
どこぞの、二重人格的な少年(?)カードゲーマーの様に言ってみたのは良いものの…自分でも、なんでこの反応が出たのが疑問に思った。
「どんな反応だそれ?」
フミもそう思ったのか、質問してきた。
「んん、いや…ね?ほら、なんかそれっぽい感じのなんかだよ」
「意味が分かりません」
棗が、そういうが…正直に言おう私にも分りません。
ごめんなさい。
そう、思うと棗から冷たい視線が向けられている気がした。
「あー、もう…ここで立ち止まっていても何にも始まんないねぇ~早く、魔王様に会わないとねー」
私は、恥ずかしさから右へ曲がり進むと…
「このは様、そっちは逆方向です」
棗によって、制止させられた。
「んんっ!わ、分ってたし?わざと間違えただけだし?」
「見苦しいぞ」
そんな突っ込みがフミから言われる。
正直、羞恥心のせいで全然頭まわって無かったからこういうツッコミはありがたかったのだが…。
「こら、フミ…こういう時は、そうですねっていうんですよ?」
「そうなのか?」
「そうなんです」
「やめて…慰めも、同情もしないで…」
多分、分っている棗にとどめまで刺されかける私であった。
そんな、羞恥心まみれの事があった数分後…。
魔王の間と呼ばれる場所の扉がある一直線の道までたどり着いていた。
ここに来るまで、フミと棗は何ともなかったのに…なぜか私だけ至る所に仕掛けられた罠にかかりまくってせっかくのドレスに汚れが付いた。
そのため、(フミが)予備で持ってきていた和の服に着替えていた。
まぁ、これがここまでの経緯である。
何故、私だけ勇者みたいな扱いをされなければならんのだ!!
そんな文句を頭の中で魔王に愚痴っていると…魔王の間の門が大きな音を立て開き、少しふくよかな…いや、球体にちか…いや、正直言って豚が出てきた。
例えるなら、親の権力を使って暴飲暴食を続けてきた人みたいな?
うーん、一切運動してなさそうな…?
まぁ、そんな感じのオークが苛立ちながらこっちへと向かってきた。
なんだろう。あれかな、親に駄々こねてみたけど駄目だった的な感じかな?
「あれは、グリスフィン・アル・フィンセント皇太子です。この国の第一王子で、第一皇妃アリシア・アル・フィンセント様の実子です。ちなみに、アリシア様は魔王領で1位を争うほど美人です。」
なんか、考えていたら棗が耳打ちしてきた。
第一皇妃の実子で、皇太子…。
「物凄く偉い人?」
「そうですね」
「絶世の美女の息子?」
「そうですね」
「あの、オークが?」
「っく」
「っふ…そうです」
私の質問で、何故か棗もフミも薄っすらと笑っていた気がする。
客観的事実を述べただけなんだけど…。
そんな会話が聞かれたのか、それとも別の理由か…オークがこっちに向かってずかずかと歩いてきた。
数人の騎士とメイドを連れて…
はいは~い…あとがきのこのはちゃんだよ~
オークが手下引き連れて数人のか弱い(笑)女の子に向かうのって一つだけだよね~
いやぁ、現世でやったら犯罪だよ?
強姦だったり、暴行なんてお縄連行で豚箱行きだから駄目だよ~
あ、オークの小屋にはピッタリか…。
ふむふむ…また次回!