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    5.5.寮生視点
    
    
        「5.この変態が。」のスリザリン寮生視点です。
腐です。
    
    
    「いった!!!」
隣の部屋から聞こえた叫び声に俺らは動揺を隠せなかった。
なぜなら、隣の部屋はノア・フォークナーとトム・リドルの相部屋だったからだ。この二人は5年程前に大きなニュースになっていた。
-「フォークナー家の一人息子が孤児院から子供を引き取った」
と。しかも孤児院はマグルのところだった。一応子供は魔法使いだったそうだが貴族の奴がそんなことをするなんてあり得ないと思った。しかも純血。フォークナー家はとにかく自由であることで有名で、家業とは別で度々新聞に出る。彼らの行いに皆が目を丸くすることはあったが今回のはさすがに彼の両親も許さないだろう。誰もがそう思っていたが、彼の両親はあっさりとその子供を受け入れ名字こそ変えないものの家族として見ていた。
そんな二人の、フォークナーの叫び声が聞こえたとき俺らは、フォークナーにリドルが暴行を行ったのだと思った。
急いで扉を開けて、大丈夫か?!と声をかけた。
「大丈夫だ。ノアが転んだだけだ。」
中からそう聞こえたので、俺らは一旦部屋まで帰ることにした。
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朝、監督生からフォークナーが来ないと聞き、血の気が引いた。
もしかして本当にリドルに殴られて、酷い怪我で動けなかったらヤバい。俺らの思いは一つになった。見に行かなければ。
俺らが部屋に着くと既にマルフォイやブラックの奴らがフォークナーを起こそうとしていた。みんな覗いている。人と人の隙間からちらっと覗いた。
すると、痣も何もないフォークナーがベッドで寝ていた。俺らは一安心した。なんせめちゃめちゃ心配したから。
ベッドの周りにはローブや靴が投げられていて、とうの本人はぐうすか眠っているようだった。マルフォイが揺さぶっても全然起きない。
やっと起きたと思って体を起こしたフォークナーの首もとを見て俺らは固まった。
歯形がついている。シャツに血のあともついている。
それに加え、変わっていない服に緩んだネクタイとボタン。俺らは思考を停止した。色気、ヤバ。
あいつの家はとんでもない美貌の持ち主であることでも有名だった。
あいつも例に漏れず、白くふわりとした髪にくりくりした青い目。程よくついた筋肉。今にも鼻血を出して倒れそうだ。これが、姉ちゃんの言ってた尊いってやつ…?
俺らは互いに目を見合わせてヤバいとしか言えないロボットになっていた。
あっ、あいつ写真を撮ってやがる。
俺らがくらくらした頭を押さえていると、フォークナーが低血圧なのか少しイライラした声色で
「着替えるから出てって!」
と言った。
俺らはそそくさと部屋をあとにした。
出るときに聞こえたんだけど、フォークナーってマルフォイにネクタイやってもらってんの?かわいい。俺らは尊いという感情を完全に理解した。
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マルフォイにつれられ、フォークナーが大広間にやってくる。まだ眠いのかうとうとしていた。
他寮生も皆フォークナーのことを見ている。俺らはフォークナーたちの会話を盗み聞きすることにすべての脳を使った。
「随分と遅いお目覚めだな。」
「トムのせいだろ。」
「イライラして、どうしたんだ?」
「低気圧。」
ぶっきらぼうでも、かわいい。いけない。邪念だ。
黙々とフォークナーがプレートを食べる。
「これ、苦手だろう。ここに置け。」
「ありがとー。」
キノコ苦手なんだ。喧嘩してる相手にお礼言っちゃうとこ、好き。
「そう言えば、なんで朝はあんなに人が居たの?」
「昨日、ノアが悲鳴をあげていただろう?心配でみんな集まったんだ。」
「ごめんね。」
「いや、大丈夫だ。謝るなよ。」
「そっか。…ってかなんで悲鳴あげたか聞かないの?」
「なんとなく聞いちゃいけないかなと思ってね。」
分かる!ありがとう、マルフォイ…!
「トムに聞いて。全部こいつのせいだから。」
ん?
「何もありませんよ。」
なんとなく、答えが見えた気がした。
…そういうことですか?
勝手ににやける口角を必死で抑えて、フォークナーの方を見た。
あ、またうとうとしてる。やっぱり朝は弱いんだ。
ついに意識を手放して後ろに倒れる!というところでマルフォイとリドルが同時に支えた。
笑顔で睨み合う二人、すやすやと眠るフォークナー。
俺らは決意した。絶対にフォークナーのファンクラブを作ると。