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𝓮𝓹𝓲𝓼𝓸𝓭𝓮 𝓽𝔀𝓸 激痛の記憶
後半ちょい注意
―てふてふ視点―
ちょっとした事からクロウと知り合い、仲良く(?)なった僕達。
飲食店が立ち並ぶエリアへと向かう途中、何故かバトル中でやらかした珍プレイ大暴露大会が始まっていた。
クロウ「あー···。最初だとなかなか慣れませんからね···。」
奏者「そう。 あの時 すごく ビックリしたし あと あの···その··· すごく 怖かっ···た···。」
クロウ「えっと···大丈夫···?」
奏者の顔が暗くなる。
そういえば、まだこのギルドを作る前、最初の頃に集団リンチされて怖かった、なんて話してたな。
でも、流石に様子がおかしい様な···。
|永遠《エンダー》「昔の事思い出しちゃった···?大丈夫。大丈夫だから···。」
奏者「うん···。」
昔。
その単語を聞いた途端、心の奥底がチクリと痛くなった気がした。
クロウ「昔···何か?」
てふてふ「···クロウが知るには、まだ早いかな。」
そうだ。
たった今仲良くなった人にあれこれ話すのはまだ早い。
暗くなった空気を明るくしようとしたのか、|永遠《エンダー》は言ってはいけない事を言ってしまった。
|永遠《エンダー》「それより!!昨日のサメくんなんかホント酷かったんだから!!」
てふてふ「|永遠《エンダー》、それは···」
止めようとするが、既に手遅れだった。
|永遠《エンダー》「昨日さ、サメくんが、自分のガトリングで放った弾踏んで大転倒しちゃって、それと同時にステージギミック動いて落下したんだよ!?ホンットあれはビックリしたよ~!!」
···恥ずかしすぎる。
アレはマジで大失態だった。
相手チームが見てなかったのが不幸中の幸いだった。
あのギミック苦手なんだよな···
クロウ「あ、ここです!!」
雑談している間に目的地に着いた様だ。
そこは、僕達もよく利用する店だった。
奏者「ここ 私達も よく来る!! クロウさんも ここの "ジョウレン" なの?」
クロウ「君達もここに来てるの!?すっごい偶然!!僕、週1位の頻度で此処に来るんです。いいですよね、此処!!」
なるほど。
確かに此処の食事は美味しいし、リピーターも多いからね。
中に入ると、店主さんがいつもの様に元気に迎え入れてくれた。
店主「お、クロウに魔軍じゃねぇか!!なんだ、仲良くなったのかい?」
てふてふ「まぁ、そんな感じ?あ、いつものトコ空いてる?」
店主「アァ。もちろんさ!!いつでも空けといてるぜ!!」
店主さんはそう言うと、僕達をいつもの席(個室)に案内してくれた。
それから僕達は、頼んだ料理を食べながら、様々な事について語り合った。
クロウ「じゃあ、魔軍の皆さんは、無課金でここまで強くなった···って事!?やっぱり凄いなぁ···。僕なんか課金してもまだS1ですから···。」
服に着いたランクバッジを見るクロウ。
それには、彼の今現在のランクを表す「S1」の文字と、烏の様な模様が描かれていた。
クロウ「みんな強くていいなぁ···」
クロウが放った「強い」という単語に反応した奏者が騒ぎだした。
奏者「クロウさん 今 "強い"って 言った? 強い 強い!! みんな 強い!! 嬉しいなぁ。 もっと みんなで 強く なりたいね♪」
特殊な両腕をパタパタと動かして笑う奏者のその姿は、なんだか可愛らしかった。
そっか。
奏者は、「強い」と言われる事が好きだったんだっけ。
てふてふ「あの···」
ダァンッ!!!
「キャアァ!?」
僕が口を開いたその瞬間、店内に銃声が響き渡り、辺りは暗闇に包まれた。
入り口をよくよく見ると、|如何《いか》にもタチが悪そうな男が3人、武装をして店に入ってきていた。
てふてふ「うっわ最悪。」
クロウ「何なんですか!?あの人達!!」
てふてふ「え、君知らないの!?絶対アイツら"荒らし"だよもう···。」
―荒らし。
それは、店やギルドなどの建物をめちゃくちゃにしていく悪質プレイヤーの事だ。
警備の奴らが見て回ってるハズなんだけど。
絶対あの荒らし野郎に倒されてるよ···。
クロウ「あれが···荒らし···。」
奏者「そんな事より てふてふ!! |永遠《エンダー》が |永遠《エンダー》が···!!」
奏者に言われてハッとした。
―しまった。
今この空間は···!!
《《暗くて狭い部屋》》と化しているんだった···!!
急いで|永遠《エンダー》の所に行く。
|永遠《エンダー》「くっ暗い···狭い···嫌だ、怖いよっ···!!お姉ちゃん···嫌だ、嫌だ···っ···お姉ちゃん···助けてっ···」
そこには、いつもの笑顔で明るく話す時と真逆の、怯えてガタガタと震える妹の姿があった。
クロウ「え···|永遠《エンダー》さん···!?大丈夫ですか···!?」
てふてふ「|永遠《エンダー》は暗くて狭い場所が苦手なんだ···。」
―昔のトラウマを、思い出すから。
そう言おうとしたが、言葉がつっかえて出て来なかった。
僕も昔の事を思い出してしまったのだ。
鮫の帽子で隠された僕の頭の古傷が、ズキズキと痛みだす。
まるで、昔の僕が、この嫌な記憶を「忘れるな」と言っているかの様に。
まるで、あの憎い連中が「逃がさない」と言っているかの様に。
てふてふ「···っ···。」
いよいよ激痛が奔りだした。
あまりの痛さに、頭を押さえてうずくまる。
|永遠《エンダー》「嫌ぁっ···!!お姉ちゃんっ!!やだよっ···!!行かないで!!私を置いてかないでぇっ···!!」
|永遠《エンダー》の、悲鳴にも似たその声を聞いた途端、脳内にとある記憶がフラッシュバックした。
城内に入ってすぐ、兵···いや、王族に捕らえられ、無理矢理拘束され、連れていかれる。
2日間ろくに食料も与えられず、地下牢に監禁されて。
ようやく出してもらえたと思ったら、最上階に引き摺られていった。
―嫌だ。
ここから先は、何も思い出したくない。
しかし、僕の記憶の歯車は止まる事なく回転し続け、一番思い出したくなかったシーンを映し出した。
王自らの手で制裁が下される。
角をへし折り、翼を引き千切る。
噴水の様に吹き上がる血。響く絶叫。
嗚呼···。
この血は僕の血だ。
この叫び声も。
妹が見ている目の前で、谷底に落とされる。
一瞬身体が宙に浮いて、その後重力に引かれる様に、どんどん落ちていく。
あの感覚は、これからもずっと、忘れる事はないだろう。
てふてふ「痛···いっ···。」
???「―っ。」
誰かが呼んでいる。
一体誰だろう。
???「―っ···!!」
誰···
奏者「てふてふっ!!|永遠《エンダー》っ!! しっかり してっ!!」
我に返る。
そこは、依然として荒らしに占拠されている店内だった。
嗚呼。
また、嫌な夢を見てしまった。
痛みが治まらない頭に手をやりながら顔を上げる。
奏者「てふてふ すごく 苦しそう···。 |永遠《エンダー》も。 大丈夫? 怖いよね? 辛かったよね?」
心配そうに見つめる、奏者の顔があった。
"苦しそう"だなんて。
奏者も一緒なのに。
きっと、少しでも不安にさせない様にしているのだろう。
そんな優しい、仲間想いな所が、如何にも奏者らしかった。
奏者「私に 任せて。···。荒らしは絶対に許さない。」
今さっきまで優しく話し掛けていた彼女の雰囲気がガラリと変わった。
普段のカタコトではなく、ちゃんとした、普通の話し方。
昔の記憶と対峙しているかの様に、荒らしの方を向いて立っている。
人格が変わったかの様な彼女から、葛藤や荒らしに対する静かな怒り、そして、「|階級《ランク》|9《メルア》」の威圧感が、ひしひしと伝わってきた。
集団リンチの話は事実ですww
始めたばかりの頃、操作慣れなくて突っ込んで行っちゃって、相手チーム全員と3―1になってしまい、フルボッコにされました(((
操作って大事ですね((
あと店主ピエールに見えるの助けて((
てふてふ過去解明まで
あと5話