公開中
あなたのもとに
ハピエン(?)にするためにオリ設定もりもりで、オリキャラ的な人もいます。あの世界では存在してるでしょうが。それでも良い方だけ読んでください。
私には天使がいた。
亡くした夫の忘れ形見で、私の天使。私1人で育てていて、他の子よりも不便を強いてしまったのに、とてもいい子に育ってしまった。
私が疲れている時には、
「お母さんは心配しないで!私が夜ご飯、やってあげるから」
あなたには料理はまだ早いわ。私は大丈夫だから、遊んでいなさい。
「テストがね、100点だったの、だからね…お菓子、買って欲しいんだ」
100点じゃなくたって買ってあげるのに…。よく頑張ったのね。
そう、あなたは────⬛︎⬛︎⬛︎はいい子なんだから、帰ってきてよ…
「…お母さん」
後ろからあの声が聞こえた気がして、ベランダに駆け寄る。
「⬛︎⬛︎⬛︎!?⬛︎⬛︎⬛︎なの!?」
そこには⬛︎⬛︎⬛︎が立っていた。背中に羽根を生やして。
(会いに来て、くれたのね…)
「お母さん、あのね」
その瞬間、視界がぐにゃりと歪み、目の前が真っ暗になり、意識を手放してしまった。
---
《???視点》
天国は、現実世界を見ることができる。
だから俺は、いつも妻を眺めていた。
(妻にバレたら、恥ずかしい、と怒られるかな)
生前のことを思い出し、懐かしい思いに襲われる。
妻には迷惑をかけて死んでしまった。妻も初産だったのにも関わらず、先に突然死だなんて。あいつには親がいないから、きっと不安だっただろう。
それなのにあいつは、娘をちゃんと育ててくれた。娘も、あいつに似たのか責任感のあるいい子だった。
(それなのに、俺は娘を守れなかった…)
娘を事故で亡くなってしまってから、あいつは変わってしまった。
(俺は、あいつが娘を大事にしていたことを分かっていたのに…娘から目を離して…その時に、娘は)
あの時に俺が《《力》》を使っていたらきっと、娘は助かっていた。なのに俺はその時、たまたま目を離してしまったのだ。
(ごめんな、ほんとうに、ごめんな…)
俺が守れなかったあの日から、あいつはずっと部屋にとじこもって、ぼんやりとしているだけだった。
俺の母さんが様子を見に来ているが、あいつは憔悴しきったままのようだった。
(俺は、どうしたら…。)
《《最悪の事態》》を想像すると、こんな時に力を使いたくないし、あいつがもとにもどる保証もない。
(ずっとあいつのあんな姿を見るのは、つらいな…)
愛している人の変わり果てた姿を見るのは来るものがある。だが、俺は決めたのだ。娘から目を離してしまったあの日から。俺がどうなっても、あいつを守りきると。
天を仰ぎ、もう一度現実世界のほうを見る。
(目を離すな、守りきると、決めたんだ…!)
「あの…お父さん、なの?」
よく聞いていたけれど、聞いた事のなかった声に振り返る。
そして、目を見開く。
「どうしてここに、⬛︎⬛︎⬛︎が…」
子供のうちになくなってしまったら、余程罪を犯していなければ1度天使になり、その後生まれ変われるはずなのに。
「あの、ね。私、お母さんにありがとうって伝えたかったの。だから、ベランダの方に降りたんだけど、そしたら、お母さんが…」
(なんだって…。)
天使が現実世界に降りることは、禁忌だ。生者に姿を見せることも。
生者が、死にたくなってしまうから。
天使とは、生まれ変わるための短い修行のようなもの。天使が何をするかといえば、死ぬ|運命《さだめ》にあるものを迎えにいくことである。だが、その者が死ぬから迎えに行くのではない。《《死なせるために》》迎えにいくのである。そのを死なせると神が告げ、それを天使が実行するのだ。
天使とは、神の使いであり、死神のようなものなのである。
(あいつが危ない…!!)
「⬛︎⬛︎⬛︎、ありがとう。お前は次の仕事に行きなさい」
あいつの方を見ながら早口でまくし立て、急いであいつのもとに向かう準備をする。
「…お父さん!」
「何だ?」
「…大好き。」
初めて会うはずなのに、不思議な事を言う娘に笑いが漏れ、嬉しさで涙がこぼれそうになる。
「俺もだよ、⬛︎⬛︎⬛︎」
---
力とは、死者に与えられる、なんでも一つだけ夢を叶えることができる能力のことである。
ただし自分の体と引き換えに。
(俺はかまわない。あいつの幸せのためなら消えたって。)
視界には、ベランダに足をかけるあいつの姿が見えた。
(届け、力…!!)
「神よ、私と引きかえに、彼女を救ってください…!」
あいつがベランダから宙に舞っていた。
(お願いだ、生きろ、生きてくれ…!!)
あいつの体は木の上に着地し、人がそこに集まって来た。この調子なら、救急隊もすぐ来るだろう。
(良か、ったぁ…)
俺は、今度こそ守れたのだ、大切な人を。
俺の体を見ると、足の先と手の方から、どんどん消えていっているようだった。
(あいつを守れたのなら、それでいい)
あいつにとってはきっと生き地獄を強いるようなものなのだろう。それでも、生きていて欲しかった。
俺は見守ることはもうできない。でも、幸せを願うことはできる。
(幸せになれよ、█ █。さようなら)
---
█ █ 視点
私は飛び降りていたらしい。
らしい、というのは記憶がないからだ。
そうできたならと考えたことはあっても、実行しようとしたことはなかった。
(なに、してるんだろう)
死ぬだなんて、きっとあの子は望んでいない。
(きっとあの人も…)
生きなくては。あの子と、あの人を背負って。
病室のカーテンを開け、照った日を見つめながら私はそう決意した。
---
そこまでの怪我ではなかったので3ヶ月の入院で済んだ。お義母さんも見舞いに来てくれていたので、暇ではなかった。好きだったドラマも見ることができたし、入院生活にしてはなかなか充実していた気がする。
病院から家まで歩いていると、ふとあの子の思い出が蘇り、涙が零れてしまった。
この交差点はいつも幼稚園までに行く道、この信号はあの子が赤信号が長いと文句を言っていた所…。
ハンカチで目を抑えてもとめどなく流れてしまう涙が辛くて、苦しくて、道にうずくまった。
「…あの、大丈夫ですか?」
顔を上げる。妙に夫に似ている気がして、涙が止まり笑ってしまった。
「ええ、あの、大丈夫です」
腫れた顔を隠すために下を向いていたけれど、失礼ではないだろうか。
「それはよかったです。それでは」
「あ、あの!すみません」
去っていこうとしている彼を思わず呼び止めてしまい、私は後悔に襲われる。
「私達、お友達になりませんか?」
突然過ぎたかもしれない。でも、こうしないと何も始まらないから。
(そういえば、あの人も突然だったなあ…)
懐かしいことが思い出され、笑いがもれる。
立ち直れたのかは分からない。でも、きっとこれからいいことが始まる。そんな予感がしていた。
お読み頂きありがとうございます。