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第4章:炎の裁き《スコーピオの記憶》
砂の谷は、夜でも熱を孕んでいた。 風はなく、空気は重く、岩肌は赤く焼けていた。 ルミナは、星霊の声に導かれて谷へと足を踏み入れた。 その地には、焦げた岩と黒い砂が広がっていた。
谷の奥に、崩れかけた神殿があった。 そこには、さそりの形をした石像が横たわっていた。 ルミナが手をかざすと、熱と痛みが同時に彼女を襲った。
「この地は、裏切りの記憶が染みついている。 彼女は、愛を失い、復讐の炎に身を投じた。 その毒は、今も星霊の心を蝕んでいる」
「私は愛された。 だが、私は裏切られた。 私の愛は、毒となり、炎となった。 私は星霊となり、復讐の刃となった。 だが今、私の記憶は封印されている。 あなたは、私の毒に耐えられるか?」
ルミナの心に、過去の痛みがよみがえる。 信じていた者に裏切られた記憶。 そのとき、彼女もまた怒りに身を任せようとした。
「私は…あなたの痛みを知ってる。 でも、復讐は星を曇らせる。 あなたの炎は、誰かを守るために灯すべきだった」
その言葉に、神殿が震えた。 さそりの石像が砕け、炎と毒の光が空へと昇る。 スコーピオ座が、夜空に戻る。
ルミナの手に、毒の刃が現れる。 炎と毒が絡み合い、敵を焼き尽くす。
スコーピオ・ヴェノム:単体に高火力+毒+防御ダウン。
星霊の声が、低く響く。
「あなたの言葉が、私の毒を浄化した。 愛は、憎しみに変わることもある。 だが、それを乗り越えた者だけが、星霊となれる。 次に待つ星霊は、秤を持つ者。 彼は、正義と迷いの狭間にいる。 あなたの選択が、彼の封印を解く鍵となる」
ルミナは、砂の谷を後にした。 空には四つの星座が輝いていた。 だが、次に向かうのは――秋の都。 そこには、封印された星霊《リブラ(てんびん座)》が眠っている。