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【第一章】6.レスコでのカレンダーチェック
冬休みに入り冬期講習が始まって、今までの私の人生にほとんど選択肢として存在しなかった『勉強』の存在が明確になってきた。
いい意識だとは思うが、それが明確になる前にやらかしたことが私に影を落としていた。
「やべぇ、冬休み下手したら毎週カラオケだわ!」
「俺デートとゲームとカラオケと旅行の予定が詰まりまくってるわ!」
「おかしいだろお前ら」
中一の冬休みと似たようなノリで予定を入れた結果であるカレンダーアプリを開いたまま翔太と私はひたすらに驚いていた。
相変わらずあまり表情が変わらない奥田にそうツッコまれるが、そんなことは自分が一番わかってんだよね。
「いつものプラス冬期講習で塾の頻度週三日ってことは…」
「私翔太より一日多いから…」
遊びの日数を含めて指を折っていくと、恐ろしくなってしまい数えるのをやめる。恐怖に耐えてすべて数えた翔太は、顔をさっと音がしそうなほど青ざめさせた。
「「えまって死ぬくね??」」
「そもそもなんでそんなに予定入れたんだよ…」
変なところでシンクロした私たちに、奥田の呆れ顔が銃弾のような威力を放って突き刺さる。息も絶え絶えになりながら、私は残りの気力で彼に反論した。
「だって、誘われたら断れないじゃん…子供は風の子だし…あとそう!あの、ね?」
「……絶対大半は樋口が誘っただろ」
「うっ…なんでわかった…」
「逆にそれ以外あるのかよ」
参りました、もうやめてください。そう言うと、奥田は呆れを通り越したような表情で少し口角を上げた。
今、私たち三人は駅前のフードコートでハンバーガーを食べていた。レスコというショッピングモールの中にあるこのフードコートには学生と家族連れで週末や長期休みは割と賑わう。
校区からそんなに離れていないので、私と翔太が通う青葉西中はもちろん、奥田が通う桜丘第二中の生徒も見かけることがあった。
ふと、少し離れた席に座った中学生くらいの男女五人組のうちの一人と目が合って、す自然と逸らされる。
薄茶色っぽい赤色のくせ毛をそのまま下ろした小柄な女の子だ。一つ下と言われると納得できるサイズ感だが、雰囲気からして同い年だろう。控えめに笑ったたれ目のせいもあってか、癒やしオーラが溢れ出している。
五人組のなかで一人の男子が立ち上がり、こちらにやってくる。奥田の眉が少し反応した。
その男子は奥田に声をかけた。
「和馬じゃん!こういうとこ来てんのめずらしーな!」
「お前、相変わらずモテないな」
「なんでだよ、みんなで遊んでるだけだろ?」
「多分女子全員|泰平《たいへい》目当てで来てる」
「えっ、マジかよ…」
『|阿部《あべ》さん、ちょっと気になってたんだけどな…』と落胆した様子を見せた男子は奥田と友達のようで、かなり気さくに喋っている。が、ふとこちらをみてぴたりと固まった。
私の方を見て目を白黒させると、和馬の胸ぐらを引っ掴んで耳元で何かを喋りだす。私には『おい和馬…』くらいしか聞こえなかったが、何を話しているんだろうか。
その瞬間、ふっと和馬が吹き出した。