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不思議な絵画とお客様 3
3話。
また。まただ。なんで。
「あれ?いたんだw」
「ごめんごめんwチビすぎて見えなかったわw」
おかしいじゃん。いじめ、なんてあっちゃいけないものでしょ。
「何で幼稚園児が中学校に来てるの~w?」
「あははw言えてる~w」
もう嫌だよ。私がおかしくなっちゃう。誰にも言えない。どうすればいいの…?
「あ、そうだ。ねぇねぇ知ってる?」
「何が?」
「古臭い本屋あるじゃん。あそこにさ、変なポスター貼られてたんだよ」
不思議と、その話が鮮明に耳に入ってきた。
「で、そのポスターにさ、絵画に悩み相談しませんかって書いてあったんだよねw」
「うっわ何それ…w」
…絵画、?悩み相談?彼女たちが言う古臭い本屋は、この街にある古本屋のことだろう。…本当に、そんなことが出来るのかな。出来るんだったら、相談してみても良いかも、なんて。
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…本当に来てしまった…。ここまで来たら引き返すのもなんか…。えぇい、行ってしまえ!大丈夫、大丈夫だ私!
意を決して古本屋に入る。壁一面の本と本屋特有の匂い。…こんなに落ち着く場所だったっけ、本屋って。
「…いらっしゃいませ」
「ひぇ…」
おっきい人だ…。怖さと同時に、羨ましさも覚える。この人みたいに、私も身長が高ければ…。
「ぁ、えっと…あの!」
「はい…?」
勇気を出して話しかけると、しっかり受け答えをしてくれる。あ、優しい人だ。基本、人への接し方で人間の性格は分かると思っている。
「表のポスター見たんですけどっ…!か、絵画に悩みを相談できるって、本当ですか…?」
「…あぁ、彼女目当てですね。どうぞ」
…本当、なのかな…?案内されて、奥の部屋に連れていかれた。
「ナーノ、初めてのお客様だよ」
「あら、本当?」
この人と自分以外の凛とした綺麗な声。発せられている場所は…壁の方。
「レイ、布を取って頂戴」
「…はいはい。では、どうぞ」
レイ、と呼ばれた男の人が布を取った。そこに現れたのは1枚の絵画。美術の授業で見たような、でも美術で見たものとは比べ物にならないぐらい美しい印象を与えられた。
「初めまして。私は名の無き絵画。好きにお呼びになって」
そう言ってその絵画は微笑み、首を傾けた。確実に、動いた。思わず後ろにいた男の人を見たが、何も動じていない。
「あの…な、何で絵画が動いてるんですか⁉」
「…あぁ、驚かせましたか」
「私は動くのよ。ねぇ、貴方のお名前も教えて」
先ほどとまた違う体制で、表情で。ただの噂だと思ってた…。本当だったの…?
「は、初めまして、翡翠陽葵です」
「ヒマリね。よろしく、ヒマリ」
「…あの…絵画さん、私の相談を聞いてもらえますか…?」
話を切り出す。そうすると、絵画さんはにこりと笑った。
「えぇ、もちろん。じゃあ、少しこちらに近づいてくれるかしら?」
「?は、はい…」
「ありがとう。…さ、遊びましょ?」
そこに広がる景色は、先ほどとは打って変わったものだった。真っ黒な部屋。そんな中に白い丸机と椅子が2脚。
「…えっ、ここどこ⁉」
「絵画の中よ」
絵画の中にいた彼女が、私の後ろに立っていた。人間らしい動きをして。いや…人間そのものだ。
「ふふ、ごめんなさい。驚かせたわよね。私の能力なの。絵画に人を引きずり込むのが」
絵画に人を、引きずり込む…?どうして…?もしかして…なんかされる…⁉
「ここなら、私とあなた以外に声は聞こえないわ。そっちの方が、話しやすいでしょう?」
「あ…ありがとうございます…」
優しかった。疑ってごめんなさい。どこから出て来たか分からないけれど、机の上にカップが2つある。
「何が良いかしら?紅茶もコーヒーもココアもあるわよ」
「あ…じゃあ、ココアで…」
座って、と促される。椅子に座ると、ココアが差し出された。
「はい、クッキー。これ、レイが作ったのよ。すごいわよね」
勧められたし、と1枚食べてみると、バターの風味が口いっぱいに広がった。
「美味しい…!」
今まで食べたどんなクッキーよりも美味しいと感じた。
「美味しいでしょう?レイ、色んな才能あると思うのよねぇ。まぁそんなことは置いておいて。相談、って何かしら?」
大丈夫。話せる。この人は、優しいから。
「私…学校でいじめられているんです。身長が低いだとか、チビだとか言われて。でも、私がいじめられなくなったら、他の人に標的が移っちゃうから…。ねぇ、絵画さん。どうすれば、いじめはなくなりますか?私には、もうどうしようもできないんです」
ずっと、疑問に思ってた。どうしてこの世にいじめがあるんだろう。人間は、どうしてこんなことをするのだろう。
「あらあら。じゃあ、まず1つ聞かせてくれる?貴方おいくつ?」
「え…?13、ですけど…」
何故そんなことを聞くのだろう。
「13。なるほど。その年でこの疑問を持つのは素晴らしいわ。じゃあ、あなたは戦争を知っているわね?」
「はい…歴史の授業でも、やったので…」
戦争の話は好きじゃないけれど、歴史は過去に行った過ちを繰り返さない為にある授業だから。戦争は特に。
「これは持論でしかないのだけれど。戦争といじめは同じよ」
…戦争といじめが、同じ…?…考えてみれば、近いような、遠いような関係だと思う。
「どういうことですか…?」
「皆何かが欲しくて、何かが気に入らなくて相手に対して攻撃する。まぁ戦争に関して言ってしまえば領土問題も関わってくるわね。学校でだって、居場所が欲しいからいじめに加担する人だっているんじゃないかしら?」
「…確かに」
私が助けた子も、居場所が欲しかったんだろうな。今まで私をいじめてきた子たちも。
「今も海外では戦争をしている。でも、ほとんどの人が戦争の発端は知らないでしょう?知っている人なんて僅かよ」
…言われてみれば、そうかも。何年も長引いているけれど、何で戦争してるかとか、あんまり知らない。
「いじめも、何でいじめられてるか分からない。何でいじめているか分からない。そんな状態のことが多いのよね」
「え…?」
「力が全て。教室と言う小さな国で、どれだけ勢力を持てるかで立てる地位が変わってくる。だから、皆勢力を広げたがる。その為に標的にされている可能性もある。いじめの原因なんか、分からないのよ」
はぁ…と彼女が溜息を吐いた。
「本当に人間って愚かよね。弱いから群れたがる。弱いから皆と同じ方向に行きたがる。信じられるものに縋り、同情し、信頼を得ようとする。日本人なんかその典型よ」
彼女が言うと説得力が高くて…。確かに私も、そう言う所があったのかもしれない。
「ま、ただ単純に自分より不幸な人を作りたいんでしょうね。そう考えれば、辻褄が合うと思うのよ。…まぁ、人間が生きている限り、いじめを無くすのは難しいことよ」
じゃあ、いつまで経っても、何も変えられないの…?そんなの嫌だよ…。
「…まぁ、1番は教師が見て見ぬ振りをしないことよね。もし本当に嫌になったら、この本屋に来なさい。レイなら多分受け入れてくれると思うし、私も受け入れられるわよ」
…先生が見て見ぬ振りをしない…。確かに、きっとそれが一番か。
「よく今まで頑張ったわね。お疲れ様」
そう言って、頭を撫でてくれた。その手が何だかあったかくて。幸せな気分になった。
「ありがとう、ございました」
「またなにかあったらおいでなさい。それじゃあ…お帰りなさい」
次の瞬間目に見えたのは古本屋の絵画が飾ってある部屋。彼女の方を見ても、ただ額縁の中で白い猫と共に描かれた状態だった。
「…お疲れさまでした」
レイさんにそう言われる。心が、ちょっとすっとした。
「あ、あの…レイさん…」
「…はい?」
「嫌になった時、とか…またここに来ても良いですか…?」
また、一緒に話したい。今度はレイさんとも、もう少しお話しできたらな、なんて。
「…えぇ、もちろん。いつでもお待ちしてます」
「…!ありがとうございました!バイバイ、絵画さん!」
「また会いましょうね」
心が軽くなって、足取りも少し軽くなった気がした。
その日は、笑顔で家路を辿れた。
こんな感じでしょうかっ。
うーん…うーん…?
なんか…まぁいいか…(
大分私の持論を混ぜております。よろしくお願いします。(?)
あと今の所9人分。頑張るぞぉ。