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鍵のない宝箱
港町ヴァレリア。霧に包まれたこの町に、ひとりの青年が降り立った。名はレン。職業は“探し屋”――つまり、どんな依頼でも探し出すことを生業としていた。
今回の依頼は風変わりだった。
「鍵のない宝箱を探してほしい」 依頼人は白髪の老紳士。報酬は高額、だが説明は曖昧だった。
「宝箱はこの町の“どこか”にある。鍵がないのに、開く方法があるそうだ」
レンは町を歩き回り、伝承や古い地図を調べ始めた。 そして、ある古書店で奇妙な地図を見つける。地図は“風を読め”と記されていた。
風を読む――それは潮風の流れ、海鳴りの音の先に“鍵のない宝箱”があるという意味だった。
彼は夜の海岸に立ち、風に導かれるまま崖を登る。すると、苔むした岩の中に、金属の箱が埋まっていた。
レンは息を呑んだ。蓋には鍵穴すらなかった。 だが、箱に触れた瞬間、彼の持っていた地図が光り始める。
箱が静かに開いた。中には、古代文字で書かれた書物と一枚の小さな鏡。 それは“世界のどこにいても、真実を映す鏡”だった。
老紳士に報告すると、彼は微笑んで言った。 「私が欲しかったのは“真実”そのもの。鍵がないのは、人の心にこそ鍵があるからだ」
レンは依頼を終えたが、その鏡をひとつだけ手元に残して旅を続けることにした。
この世には鍵のない宝物が、まだまだ眠っているかもしれない――そう思いながら。
あれ?毎日投稿なんにちめだ?