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死亡希望届「かみさまへの一希望」
「…ここは」
「あ、目が覚めた?」
目が閉じていた少女の前に黒に覆われた男が手を振る
「…どなたですか」
「まぁまぁ、それは…」
「神様ですか?」
「え、うーん…神とは、また違う」
「では、なんですか?」
「え、いやえーと」
「ここはどこですかあなたは誰ですか」
「ちょ、ちょっとおちつい」
「ここへ私を呼んだ理由は?それに私は昏睡状態だったはずですがいったいどうやって…」
少女の圧にやられて男は背中に机が当たるくらいにたじろいていた
すると後ろから羽が動く音と声が聞こえた
「…おもしろいやつ呼んでんな」
黒髪と背中に生えた大きな黒い羽を揺らして
男が落ちてくる
「あ、バルー!」
「…翼?」
「助かったよバルー、状況説明手伝ってくれない?」
「いやお前が説明した方が…」
「悪魔、ですか?貴方は」
男の羽を見つめながら少女は問いかける
「…だったら、なんだ?」
「ならばここは死の世界か地獄ですか、死の世界にしてはいささかシンプルですが…」
「まぁ似てる、ここは夢の世界だ」
「…夢」
ぽかんと効果音がつきそうな顔で2人の男の顔を見つめる
「お前、いまどんな状況だった?」
「…病気で、寝たきりでした」
「だろ?だから選ばせにきたんだよ」
「まぁ死にたくないなら状況的にまだ選べるけど…寝たきりなのは変わらないよ」
「選ぶ、ですか」
「あぁ、どうする?どう死にたい?」
「そうね、それを聞かないと!」
バルーに問われた少女の後ろから高い女の声がする
「イート、いつの間に?」
「さっき来たのよ、2人とも遅いもの、お腹空いちゃった」
「…天使、様?」
「あら?わかるのね、みんな信じないんだけど…」
「天使様…私、貴女の役に立ちたいです」
「役に?」
「はい、せめて、最後は…」
「…なら、貴女の魂を食べさせて?」
少女の顎を撫でて目を合わせて目の奥に覗く渦巻きをのぞかせると共に白く大きい羽が2人を包もうとする
「…おいこら、さらっと先に取るなよ」
「でもこの子、私を選んだのよ?いいじゃない!ねぇ貴女、名前は?来世はどうなりたい?」
「… 西川、恵麻です、来世は…もっと、楽しく走り回れるように…」
「もちろん!叶えてあげるわよ…いただきまーす」
目を閉じた少女の意識が消えてすぐに天使の鋭い牙が体に刺さって音を立てながら食べていく
「美味しかった!さて、輪廻に入れてくるわね!楽しく暮らせるように私の加護も入れてあげる!」
ふわりと羽を広げて飛んでいく天使を見上げながら男は微笑んだ
「…お代、どうしよ」
「…今回だけだ、俺が払ってやるよ」
悪魔の手から割れた銭のかけらが落ちる
それを受け取った男は笑って呟いた
「ありがと、バルー…今度は絶対イートにもらわないとね」