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僕の願い
ファスナー
左腕からドス黒い血が垂れてくる。
視界が真っ赤に染まる。
体がうまく制御出来ない。
左手の爪をたて、メッタ刺しにする。
グチュ グチュ グチャ グチュ グチュ
深紅の液体が爪の中に入り込む。
手が真っ赤に染まる。
グチュ グチュ グチャ グチュ グチュ
体の奥から何かが込み上げてくる。
込み上げてきたものをその場に吐き出す。
ベチャ
血とゲロと内臓のようなものが口から吐き出される。
「今の感覚はどうよ?気持ち悪い?やり直したい?」
すごく楽しげな声だ。
僕は声の主がいる方向を向く。
「そんなに睨まないでよ。まるで私が悪い者みたいじゃないか。」
「いいかい、殺ったのは君だ。それと同時に殺られたのも君だ。後悔をする時はね、いつだって、手遅れだと自分自身が悟った時なんだよ。」
そいつはニチャーと化け物じみた笑顔を浮かべ僕にそう言った。
意識が朦朧としてくるのを感じた。
どうして今まで立っていられたのか不思議だ。
僕はその場に吐血して、地面にうずくまる。
僕の体の形が崩れ始める。
最後には灰のように風に飲まれ、消滅した。
苦労せず手にした力には代償がある。
そんな事は分かっていた。
僕は消えるべくして消えた。
ただ、それだけの事。
でもなんだろう、この気持ち。
辛い、悲しい、悔しい。
やり直せますよ、と言われたら僕はどんな代償を支払ってでもやり直すだろう。
でも、死んだ体が払える代償なんてたかが知れてる。
僕は悔しさを噛み締めながら消えた。
これが仮に成功していたらどうなっていただろう。
僕は再びあの頃のような幸せを掴む事が出来たのだろうか。
おそらく他の失敗者達も同じ気持ちであっただろう。
自らが求める願望の為に立ち向かい、そして消える。
願望は叶わないものだから願望なのだ。