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無情で無慈悲な操人形(4)
前回のあらすじ
アキちゃんとシキちゃん((
清少納言side
太宰治「清さん、紫さんの異能力教えてくださいよ」
清少納言「……断る」
ちぇ、と治は自席の机に伏せる。
別に教えても構わないけど、何処で誰が聞いているか分かったものじゃない。
それなら、最初から云わない方がいい。
中島敦「そういえば何で|紫《ゆかり》さんなんですか?」
清少納言「呼びにくいじゃん、|紫《むらさき》って。それに式部も違うかなぁ、って感じであの|幼女趣味《ロリコン》がそう呼び始めた」
太宰治「それがもうマフィア内で定着してるんだよ」
中島敦「な、なるほど……?」
まだ疑問はありそうなものの、中島敦は納得してくれた。
あとはそうだな──。
江戸川乱歩「与謝野さん、少し休憩してきなよ。清さんの為に急いで帰ってきたでしょ」
与謝野晶子「……あぁ。そうさせてもらうよ」
清少納言「珈琲、後で持っていくよ」
私がそう云うと、察してくれたのだろう。
与謝野晶子はいつもとは少し違う足取りで医務室へと消えた。
金色の蝶を、大切そうに撫でながら。
太宰治「清さん。確か紫さんって、森さんがずっと昔からお気に入りなんですよね?」
清少納言「遠回りの聞き方は嫌いだよ」
太宰治「じゃあちゃんと聞きます。与謝野女医と紫さんって、森さんが軍医の時から知り合いですか?」
清少納言「……いいや、もっと前からだね」
私が云えるのはここまで。
後のことは彼女が決めることだ。
清少納言「そんなことより、窓どうにかしようよ」
窓ガラスが床に散らばり、私のせいで血もあちこちにはねている。
普通に申し訳ない、と思う。
やっぱり無像しか操れないのは不便だな。
好きなものをいい感じに操れたらいいのに。
泉鏡花「清さん」
清少納言「ん、どうかした?」
泉鏡花「服を着替えた方がいいと思う。血だらけだし、穴も開いてる」
確かに、と私は面倒なので服を取り寄せる。
会議室が空いてる筈なので着替えに行くことにした。
清少納言「……。」
ついでに電話するか。
???『君から掛けてくるなんて珍しいね』
清少納言「……何故話した。普通に殺しに来たんだけど」
???『一体何のことかな』
清少納言「とぼけるな、森鴎外。紫式部に私が武装探偵社にいることを話しただろ」
森鴎外「紫くんが……!?」
本当にとぼけているのかと思ったけど、この反応は──。
清少納言「──全て話してくれないかな。私にはその権利がある筈だ」
???『“|江戸雀《おしゃべり》は最初に死ぬ”。それは|首領《ボス》も変わらないのを、清も分かっていよう?』
清少納言「……尾崎紅葉」
森鴎外『ちょっと紅葉くん? 今は私が清くんと話しているのだけれど──』
尾崎紅葉『幼女趣味は黙っておれ』
森鴎外『ぴえん』
尾崎紅葉『……お主がマフィアに戻ってくるのなら、|私《わっち》たちは快く紫に関する情報を渡そう』
どうする。
そう、尾崎紅葉は電話越しで笑みを浮かべている気がした。