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レンズの裏の独占欲
sutu05212
付き合い始めてから一ヶ月。ゆうせいと星太郎の関係は、サークルの仲間にはまだ秘密のままだった。放課後、人通りの少ない旧校舎の裏。大きな銀杏の木の影で、ゆうせいは星太郎を壁に押し付けるようにして、その唇を貪っていた。「ん……っ、は、ゆうせい……待って」星太郎が息を弾ませ、ゆうせいの広い胸を手で押し返す。切れ長の目が薄く潤み、赤くなった唇が色っぽい。ゆうせいは名残惜しそうに唇を離すと、星太郎の首筋に額を埋めて深くため息をついた。「サークル棟じゃ足りない。星太郎、今日このあと俺の家に来てよ」「え……でも、今日はサークルの飲み会があるだろ? 先輩たちも来るし、断れないよ」星太郎が困ったように眉を下げて、ゆうせいの髪を優しく撫でる。ゆうせいはその心地よさに目を細めながらも、内心では面白くなかった。飲み会には、最近星太郎にやたらと絡んでくる他学部の先輩も来るはずだ。「……じゃあ、飲み会中、俺の隣に座って。他の奴と楽しそうに話すの禁止」「何言ってるんだ。みんなに怪しまれるだろ」星太郎は呆れたように笑うが、ゆうせいの瞳は真剣そのものだった。付き合う前は飄々として見えたゆうせいが、これほど独占欲が強くて子供っぽい一面を持っているなんて、星太郎は知らなかった。けれど、その重い愛情が、たまらなく愛おしくもある。「わかった。なるべく近くにいるから」星太郎がそう約束してくれたことで、ゆうせいはようやく大人しく引き下がった。しかし、居酒屋での飲み会が始まると、ゆうせいの思惑は外れた。席の配置の都合で、星太郎は例のチャラついた先輩の隣に座らされてしまったのだ。ゆうせいは斜め向かいの席から、じっと二人を監視する。「星太郎くんってさ、本当に肌綺麗だよね。何か手入れしてるの?」先輩が星太郎の肩にぽんと手を置き、顔を近づける。星太郎は困惑しながらも、生真面目さゆえに愛想笑いを浮かべて受け流そうとしていた。(……触んな。こっち見ろ、星太郎)ゆうせいの手元で、ウーロン茶のグラスがカツンと音を立てる。星太郎がハッとしてゆうせいを見ると、そこには見たこともないほど冷ややかな、暗い瞳をしたゆうせいがいた。いつもカメラを向けてくる時の優しい光は一切ない。その強い視線に射抜かれ、星太郎の背中にゾクリとした甘い戦慄が走った。一時間後。トイレに立った星太郎を追って、ゆうせいもすぐに席を立った。店の奥にある、薄暗い化粧室への通路。ゆうせいは星太郎の腕を掴むと、そのまま誰もいない従業員用の物置スペースへと連れ込んだ。「ゆうせい……っ!?」狭い空間で、ゆうせいに背中を壁へ押し付けられる。「約束したよね? なんであいつに触られて笑ってるの」ゆうせいの声は低く、怒っているようにも、泣いているようにも聞こえた。「違う、あれは先輩が勝手に……っ」弁解しようとした星太郎の唇が、手荒に塞がれる。お酒の匂いと、ゆうせいの熱い吐息が混ざり合う。いつもの優しいキスではなく、独占欲を隠そうともしない、激しい口づけだった。星太郎の舌が強引に絡め取られ、何度も深いところを貪られる。「んむ……あ、はぁ……っ」星太郎が息を詰まらせて、ゆうせいの肩をぎゅっと掴む。強引なのに、重ねられた唇からは切ないほどの執着が伝わってきて、星太郎の身体からすっかり力が抜けてしまった。ようやく唇が離れたとき、ゆうせいは星太郎の首筋に顔を埋め、きつく抱きしめてきた。「……嫉妬で頭がおかしくなりそう。星太郎の綺麗なところ、俺以外に見せたくない。サークルの奴ら全員に、お前は俺のだって言い触らしたい」耳元で囁かれる独占欲の塊のような言葉に、星太郎の胸は激しく高鳴った。真面目な自分なら「困る」と言うべきなのに、ゆうせいにそこまで狂わされている事実が、体の奥底をじわじわと熱くしていく。星太郎は、ゆうせいの背中にそっと腕を回した。「……バカ。言い触らしたらダメだけど、僕の主人は君だけだから」「星太郎……?」「飲み会、もう体調不良って言って二人で抜け出そう。……君の家、行くから」星太郎が顔を真っ赤にしながらも、真っ直ぐにゆうせいを見つめて告げる。その瞬間、ゆうせいの瞳にいつもの輝きが戻り、獰猛な肉食獣のような笑みが浮かんだ。「言ったね。明日、大学来れなくなっても知らないよ」ゆうせいは星太郎の指を絡め取ると、ポケットからスマホを取り出し、サークルのグループLINEに「星太郎が酔い潰れたので、俺が家まで送ります」と手早く打ち込んだ。二人は誰にも見つからないよう居酒屋を抜け出し、夜の街へと駆け出した。繋いだ手から伝わる熱は、これから始まる甘くて濃密な時間を予感させていた。