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とおりゃんせ 後編
「真子〜。あ、この子って」
「わたしはレイ。気軽にレイって呼んで。通りゃんせがしたくて」
「そうなんだ!いいよ〜!わたしは|沙恵《さえ》」
「わたしは|梨花《りか》」
「|優実《ゆうみ》だよ〜ん」
「|真子《まこ》です」
「わたしは|鈴《すず》」
沙恵、梨花、優実、わたし、鈴、レイ。この6人でやるんだ。
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はじめは、鈴と沙恵が橋番。
とおりゃんせ とおりゃんせ
ここはどこの細道じゃ 天神様の細道じゃ
ちっととおしてくだしゃんせ ご用のあるものとおしゃせぬ
この子の七つの祝いに お札をおさめにまいります
行きは良いよい 帰りは恐い 恐いながらも
とおりゃんせ とおりゃんせ
捕まったのは優実。
「わぁ、捕まっちゃったや」
じゃんけんして、鈴が勝った。鈴は交代。
「そういえば、改めて思うと、歌詞って不思議だよね」
「そうね」
真っ先に反応したのはレイだ。見た目からして、ものしりなんだろう。
「いろんな説があるの。天神さまに参拝する親子に、通っていいよというのが『通りゃんせ』。用がないものは帰れ、というのが『ご用のあるものとおしゃせぬ』。昔は7歳まで生きるのが難しかったから、『此の子の七つのお祝いに』。行きはスムーズだけど、帰りは困難だから『生きは良いよい帰りは恐い』。他にも、本当は子どもを捨てに行くためとか、生贄の歌とか。いろんな説があるみたいね」
「へえ…」
ぺらぺらとしゃべるレイを見て、すごいなあと感心した。
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「ね、そろそろ帰らない」
空が真っ赤に染まったとき、沙恵が言った。
「そうだね、けっこう暗くなってくるし」
「うん」
「じゃあね、ばいばーい」
そう言って、あたしは帰ろうとした。でも、レイは帰ろうとしない。
「__現代でも、いい子はいるのね…__」
何やらつぶやいていた。
「レイ?帰らないの?」
「あ、ううん。改めて、ルールを守ってくれるなと思って。じゃあ、また。わたし、引っ越しちゃうの。もう遊べなくなるけど___また、必ず遊ぶわ。あなた達と遊ぶのは、久しぶりに楽しかったもの」
「うん」
引っ越し、か…。
「さみしくなるけど、また、通りゃんせできるといいね。あたしも、そうだったから」
「うん」
弾むような声で、レイは言った。