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14.クランは、アロバンを不思議に思う
剣術のあとは、一時間、座学があった。
これは、正直言ってつまらなかったわ。だってどれも知っているもの。
ただ、授業をしたベンティーナ先生のために言うのなら、この授業がつまらなかったのは、けしてベンティーナ先生本人ではなく、そもそもの内容のせいよ。
あ、これはフィメイア学園の授業にも言えることよ。
そして、魔物学の授業があった。
教師はもちろんヨーゲルン先生。
相変わらずわたくしを嫌っていそうなアロバンについて行った。
最上位クラス……どうやら二つに分かれているみたい……の方に入ったが、さっき、剣術のクラスにいた人が、ちらほらいた。
話しかけてみたいけれど……のらりくらりと交わす性格の人が、自分から話しかけたりするかしら? そう考える。すると、話しかけられて、それに答えるほうがのらりくらりとしていないわよね、という考えになった。
だから、さっそく一人の女の子に声をかけてみたの。
「こんにちは。あなた、剣術のときにいた方よね?」
「そうだよ。……クラン、だっけ?」
「ええ。まだ来たばかりでそこまで喋る人がいないの。隣に座ってもいいかしら?」
「いいよ」
良かった。この子はきっと優しい子だわ。
その子は名前をハミエルと言った。
「私、他には盾術と採集術、魔法薬学を取っているの。あなたは?」
「残念ね。わたくしは盾術じゃなくて魔術よ」
「剣術と魔術!? 本気!?」
「ええ。どちらも得意よ」
「そうなんだ……凄いね」
「そこまででもないと思うわよ」
特に魔術なんかは……ね。
ネイラは六年生だから、この学年の中じゃあいいほうかもしれないけど、学園全体となると……。そこまで上位というわけではないと思うわ。
「絶対凄いよ。大会は出るでしょう? やっぱり魔術と剣で出るの?」
「ええ、そのつもりよ」
「……やっぱり凄いじゃん」
ただ出るだけよ?
「そんなに少ないの?」
「うん、九百人中三十人くらいかな。両方使える人はもっといるんだろうけど、実践で使おうと思う人はあまりいないね」
へえ、少ないのね。
となると、アロバンは結構珍しい方なのね。
ちらりとアロバンを見る。
目があったが、睨まれてしまった。
……本当何なのかしらね。
「ん? アロバン?」
ハミエルは注意深いのね。まあまあアロバンと距離はあるはずなのだけど。
「ええ、なぜか嫌われているみたいなの」
けれど、ちょうどいいわ。理由に心当たりがないか聞いてみましょう。
「ああ、アロバンはね……」
「なにか理由の心当たりがあるの?」
「いや、理由はわからないかな。だけど、いつも一人でいるし、多分、そんなに気にしなくていいと思うよ?」
「そう……ありがとう」
結局何でかは分からなかったけれど、あれは普段とあまり変わらないのね。
それなら安心したわ。
そして、授業が始まった。
これは、正直楽しみにしていたのだけど……。フィメイア学園のときまでと、あまり変わらない授業だった。
ちょっと残念ね。
もっといろんなことを学べるかと思っていたわ。
「クラン、来てくれ」
授業後、ヨーゲルン先生に呼ばれた。
「何でしょうか?」
「オグルのことだ。分かったことを伝えようと思ってな」
「本当ですか!?」
それは嬉しいわ!
「ああ、ここに書いているから、ぜひ読んでくれ。疑問点などがあれば、放課後に来てもらっても構わない」
「分かりました。ありがとうございます!」
ふふふ、一体何が分かったんでしょうね♪
そして、わたくしはアロバンが教室から出ようとしているのを見て、急いで追いかけるのだった。
「それでは、今から授業を始めるわよ~」
次に、魔術の授業があったわ。
「そうね〜大会に向けて、皆さんならもう余裕でしょうけど、動いている物体に魔法を当てる訓練でもしましょうか? じゃ〜あ、ケビン、お手本を見せて」
間延びした口調の、その女の先生は、ケビン、と今言った。
ケビン、ね。聞いたことがある気がするわ……
そして、そのケビンと思われる人が出てきた。
「あっ」
思わず声に出す。
そのケビンと思われる人物は、ネイラにとても似ていた。
そういえば、ネイラの弟さんってケビンという名前じゃなかったかしら? 多分、この男の子よね?
ネイラと同じで魔術が得意だったのね。
「じゃあケビン、お手本を見せてみて〜?」
「分かりました」
魔導具が動き出す。
すると、十個ほどの的が縦横無尽に動き出した。
ケビンは。それをはざさずに打っていく。
「さすがケビンね〜。みんなも、ケビンのように、命中率百%を目指してみてね? それではスタート!」
始める? 何を? と思ったけれど、どうやら皆さんは五つある魔導具に並んでいるみたいだし、練習を始めろ、ということみたいね。
わたくしも一番近い魔導具に並ぶ。
ぼんやりと他の人を眺めているけれど、皆さんちゃんと当てられているようね。感心だわ。
わたくしはどうなるかしら?
ちゃんと当てられるとは思うのだけれど、初めてだもの。失敗しそうだわ。
列は進み、わたくしの出番がやってきた。
的が動き始める。
この動きも、実はちゃんとわかりやすいのよね。魔導具を人が作ったんだから規則性があるはずだと思って見ていたら案の定あったわ。
だから……
「水よ、貫け」
的に命中する。
「水よ、貫け」
的に命中する。
すべての的に当たった。
命中率百%!
やっぱり軌道を分かってしまったらこんなものよね。なんだか物足りないわ。
……まだ、アロバンに睨まれているわ。
わたくし、何もやっていないはずなのだけど。
もう一度、魔導具の順番が周り、授業が終わった。
午後の最初の授業は教室で受けるやつだし、昼食休憩の間はアロバンを気にしないで過ごしましょう!