公開中
黒林檎
世の中は非情に時が流れていって、その中にわたしはいるはずだ。
不登校…か。あの時は、あんなふうには思わなかったのにな。高校最後の春、わたしは制服ではなく部屋着に身を包み、パソコンを弄る。シューティングゲームで高得点を稼ぎながら、なんとなく虚しくなる。にこにこと微笑むキャラは希望に満ちていそうだった。わたしは、ただ気だるさがぐるぐる廻るだけで、何もない。
昼食は適当にパンを齧る。もう11時か。今頃みんなは授業をしているはずだ。まあ、別になんでもないが。
舌打ちする気力もなく、またブルーライトを浴びる。こんな世界に入れたらいいのに、と夢見ても、いやもう無駄だという気持ちの方が大きくなっていた。別に哀れんでも悲しんでもいない。ただただ、過ごすだけ。今の無気力人間にできるのは、それで精一杯。
「|黒絵《くろえ》ちゃんは頑張ったら何でもできるんだよ!」
あーもううるさい。誰かの言葉が頭の中にフラッシュバックして、頭痛とめまいに襲われる。なんなんだよ、なんでもって。頑張ったら?どれだけ?あーもうクソが、知らねぇよ。
別に何をしたいとかない。夢も見ていないし、未来なんてない。感情なんてもう捨てたはずだ。もう無理だ、限界だ。ああもうっと、パソコンを叩きつけた。生きることさえ、もう鬱陶しくて面倒くさい。ましてや、学校で人のことを考えるなんて、損しかないんだ。
ああ、もう2時か。自己嫌悪に陥っているのに、もう3時間か。ああもう面倒くさい、何もかも。母ももう見捨てりゃいいのに。
ゲームのキャラが喋っていた。生き生きとしていた。未来に向かって頑張ろうとしていた。夢を見ていた。希望に満ちていた。
…わたしは?
いや、比較対象が悪いんだ。こんな能力持ちと比べても、何もならない。自己嫌悪にいっそう陥るだけ。
なんで学校に行っていないのか、最近よくわからなくなってきていた。こんなろくでなしに居場所はないし、学校は綺麗事ばかりだし、勉強は嫌いだし、関係は面倒くさいし。
あーもう、なんでこんなところにいるんだろ。早くいなくなったほうが、きっとマシなはずなのに、さ。
またパソコンを叩きつける。生命線だとか言っていたのが馬鹿みたいで、壊してやりたかった。だが、ゲームができなくなるのは嫌だった。
もう嫌だ、嫌だ、嫌だ。
わたしは何になる?わたしは誰のためになっている?
こんなろくでなしに、何を期待しているんだよ?