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旅の一幕
登場人物
雨
薄茶色のの髪を2つ結びにしており、綺麗な水色の瞳をしている。
意志が強く、4人のリーダー的存在。
自己犠牲的な判断を下すことがある。
夏の巫女
照
長く流れるような白銀色の髪を持ち、
その瞳は澄んだ青緑色。
性格はとても優しく、おっちょこちょい。癒し枠。
泣き虫で、四葉とは幼馴染。
春の巫女
四葉
明るい緑色の瞳は美しく、くすんだ淡い緑色の髪がひとつに結ばれている。
しっかり者で賢い。
身体が弱く、薬を飲み続けないと長い時間活動できない。
秋の巫女
色
真っ直ぐ伸びる白い髪を横で結び、鮮やかな赤色の瞳をしている。
常にオレンジの花を身に着けている。
どんな悲しみにも立ち上がる強さがある。
動物と話せて、人の嘘が分かる。
冬の巫女
4人は季節の子であり、村から大切にされていた。
季節が変わるときに儀式を行う。
4人の季節の神様に、次の季節の要望を出したり、前の季節の感謝を告げる。
儀式は、言わば次の神様に季節の主導権を渡すようなもの。
巫女は?????はいけない。
巫女は神様に背いてはいけない。
「……そろそろ、儀式の時期だろう。雨、四葉、頼んだぞ。照、色は補佐を頼んだ」
夏のとある日、集められた四人に村長は言った。
あんなに煩かった蝉の声も少なくなった。
だから、呼ばれたのだろう。
「「分かりました」」
儀式は何度もやっている。
いつでも完璧になるようにしている。
だから、何か発生するはずがないと思っていた。
村長に呼ばれたあとは、儀式の練習をする。何度やっていたとしても、完璧でなければ要望を聞いて貰えないかもしれない。
「皆、早速やろっか!」
「うん。ちゃんと覚えてるし、いつでも大丈夫だよ」
四葉がそう答えた。
照と色は舞を踊る。
照は舞い散る桜の如く、優雅に。
色は突き刺す吹雪の如く、|凛冽《りんれつ》に。
目を閉じて、深呼吸をする。
「夏の神よ。燃え盛る熱をおさめ給え。我らに課せし宿命の鎖、今ひとたび強固に結び給え」
「秋の神よ。枯れゆく風を呼び覚まし給え。我ら、神の豊穣に背くことなし、雫、黄金の穂に宿し給え」
まだ練習と言えど、熱風が少し涼しく感じた。
(……本当に神様聞いてるんだろうな)
今度は私と四葉が舞を踊る。
雨は揺らめく陽炎の如く、熾烈に。
四葉は染まりゆく秋霜の如く、繊細に。
「…良い感じだね!本番も大丈夫そう」
「じゃあ遊ぼうよ!準備で暫く遊べないしさ!」
照の明るい笑顔でこちらも顔が綻ぶ。
「そうだね。遊ぼっか」
「でも、何するの?」
私が照に賛同するも、色が問う。
「私はあんまり走れないし。どちらにせよ、怪我したら儀式に影響出るし」
四葉が事実を確定させる。
「…どうしよ。なんか思いつかない?」
「じゃあ、かくれんぼする?鬼は走る必要ないし、隠れる方もそこそこ時間があれば隠れられると思う」
そのままかくれんぼに決まった。
鬼決めの結果、鬼は照に決まった。
「も〜!なんで私が鬼なの?」
「まぁまぁ、そんな事もあるから」
雨が宥めている間に、私は隠れる場所を考える。
四葉の体調を気遣って、隠れる場所は近めにしておこう。
すぐに気付けるように。
「いーち、にー、さーん……」
照が数えてるうちに、離れつつ四葉とこそこそ会議する。
「私は祭壇の裏にしようと思うんだけど、色はどうする?」
「村長の家の裏にする。近めの方が照も見つけやすいでしょ?」
「そうだね」
それぞれ、隠れに行った。
息を潜めて、四葉を見守りつつ待っていると、数人の声が聴こえてくる。
家の裏だから、ひとりは村長だろうか。
「……四葉はもう持たなそうだな」
「儀式の途中で体調を崩せば、神の怒りに触れるぞ?」
「構わん。もし体調を崩したら雨が引き受けるだろう。あの子の自己犠牲精神を育てておいてよかったわい」
「……二人が力尽きても、巫女は何人でも育てられるしな」
村長の声だ。
私は嘘が分かるから、恐ろしく感じる。
`全員、嘘を付いていない。`
(どういうこと?四葉が儀式に耐えられないって言ってるの?私達は替えが効く部品でしかなかったの?)
思わず口を押さえる。
信じたくない。
皆の優しさも、大切にされていたことも、信じていたことも。
全部、全部『嘘』だったの?
「もーいーかーいー?」
暴走列車のような思考は閉じられた。
「捕まえーた!やっと色見つけたー!」
「………………あ……」
見つかったことにすら、気付かなかった。
どうしよう、こんな秘密言えないよ。
雨は引き受けると思う。
照はきっと焦ってこの事を言っちゃうだろうし。
四葉には先が長くない事を知らせたくない。
「色、どうしたの?体調悪い?」
「いや、そんなことないよ。ぼーっとしてただけ」
心配してくれた照には悪いけど、嘘ついちゃった。……ごめんね。
`嘘つきになろう。`
`嘘が分かる私は疑われないはずだから。`
儀式当日。
巫女服に着替えた四人は真剣な面持ちをしていた。
(儀式だから頑張らなきゃ。四葉の体調は心配だけど、何かあったら私が…)
(雨と四葉がんばれ!私は転ばないように、練習通りやろう!)
(朝から少し身体が重いな。薬も飲んだのに。儀式の時には倒れない、はず)
(本当の事を言わないように。皆には分からないように。でも、儀式はちゃんとやろう)
それぞれの想いを胸に時は過ぎていく。
私は儀式の前に一言、何か言わないといけない気がした。
「照、色。舞、頑張ってね。四葉、もし続けるのが難しいかったら言って。私がなんとかするから」
色が泣きそうな顔をした気がした。
「行こう」
無言で頷いた三人が着いてくるのを感じながら、祭壇に登る。
音楽に合わせて舞を踊る二人。
神様の登場を祝っている。
それが終わったら私の出番。
目を閉じて、深呼吸をする。
練習と同じように。
「夏の神よ。燃え盛る熱をおさめ給え。我らに課せし宿命の鎖、今ひとたび強固に結び給え」
ちらりと四葉を見る。
顔色が悪い。
青ざめる、というより白い。
「……秋の神よ。枯れゆく風を、呼び覚まし給え。……我ら、神の豊穣に、背くことなし、雫、黄金の穂に、宿し給え」
途切れ途切れだけど、祝詞は乗り越えたみたいだ。
一番の関門。
神様が帰るときの舞だ。
私は激しく動くのだが、四葉は繊細な動きが求められる。
(舞だけは、何もできないからどうにか耐えて、四葉……)
音楽が止まった。舞は終わった。
……よかった。
ほっとしたのも束の間、四葉の足元がふらついている。
倒れていく様子を見た。
その瞬間だけ、ゆっくりになったみたいだ。
「__四葉!」
倒れ込んだ四葉に駆け寄る。
周りのざわめきも聴こえない。
上手く息が吸えない発作の呼吸をしている。
隙間風のような音ばかりが続いている。
「やだ!四葉!死なないでよ!!」
焦った照の声も、やけに静かな色の事も、何も気にする余裕がなかった。
大人達の視線も。
四葉が倒れた。
頭の中は焦っているのに、何処か冷静だ。
(……知ってたから、かな)
村長の方を見てみる。
周りの男性と一緒に場違いな笑みを浮かべている。
(今、この瞬間が嘘だったらいいのに)
照は四葉を揺さぶっている。
恐らく、咳をさせて呼吸を戻そうなんてするつもりなのだろう。
きっと、無駄だ。
そんなとき、村長がこちらに来た。
「…村長! くすり……薬! 四葉が、死んじゃうの!」
照は血の気が引いた顔で、場違いな顔の村長に縋った。
普段なら、きっと話し掛けるのにも迷っているはずだ。
「儀式は終わったんでしょう!? お願い、助けて……!」
笑顔は動かない。
それどころか、満足げに頷いた。
「……四葉は、最後まで舞を全うできなかった。震えていただろう?神はお怒りだ。……どうすべきか分かるな?」
雨は立ち上がろうとした。
私は知っている。
雨の事。村長の事。
裾を掴んで制止した。
「だめ、雨。やめて」
「振り払え、雨」
私はどうしたらいいの?
色のことは信用してる。
でも、村長の言うことは聞かないと。
神様が怒ったら、取り返しがつかない。
「神様は怒ってないよ。私が嘘をつくように見える?」
色は嘘が分かる。
だから嘘が嫌いだ。
私は嘘をつくようには思っていない。
「何をしている?四葉が失敗した分は、誰かが埋めなければならない。それが、村と神との約束だろう?」
その通りだ。
だから、私がやらなきゃ。
「……嘘つき」
地獄から響くような低い声で呟いた。
色から、聴いた事もない声。
「……え?」
「今の言葉、全部嘘だよ。村長は全部仕組んでる。従えば雨も死ぬ。村長は四葉と雨を殺したいだけだよ」
「ははっ。どこにそんな根拠が?」
「お前は計画通りだと嗤っただろう?」
「………計画、通り?」
今まで泣いていた照が呟いた。
青緑から溢れる雫は止まり、蒼炎が宿る。
「四葉が倒れるのが計画通りなの?雨と四葉を殺すのが計画なの?」
「………そんなの、許さない」
親しんでいた村長へ敵意を向ける色を、怒りを向ける照を、見たことがない。
決めた。私は、自分の心に従う。
「………舞を踊らない」
「それで死ぬくらいなら、友達を失うなら。私は舞を踊らない!」
「な……!四季が巡らず、村が滅ぶんだぞ!!?いいのか!?」
`「………滅んでしまえ、こんな村」`
照が低い声で囁いた。
私は発作で苦しむ四葉を抱えて、祭壇から降り、逃げ出した。
地面を殴りつける村長を置いて。
『それ面白そう!お手伝いさせてよ』
(くそ………!くそっ……!雨の自己犠牲精神を育てたのは良いが、これじゃ使い物にならない!色が居なければ、丸く収まったのに)
そもそも、色はどこから知った?
考えられるのは呼び出しのあと。
いや、今は必要ない。
(こんなんじゃ、神からの祝福が得られないじゃないか!!)
祝福とは神様に巫女の命を吸わせる代わり、季節の願いを聞き入れてもらうことだ。
『それだけじゃないけどね』
(…面倒だが、また作り直せばいいか)
人間に不都合になるだけで、季節が止まる訳じゃない。
逃げ出した先で四葉に薬を与え、暫く様子を観る。
呼吸も安定し、少し顔色も良くなった。
「四葉……!よかった、死んじゃうかと思った……」
照が安堵する。
『いや〜死んでなくてよかった。こっちとしても困るからねぇー?』
「さっき、何があったの?」
斯々然々。|《かくかくしかじか》
一部始終を把握した四葉は言った。
「やっぱりおかしいよ、村長。儀式を利用するなんて」
「それだけじゃない気もする。けど、ここに居続けるのは危ない」
私はこう提案する。
「……皆で、逃げよう。こんな村から」
`__巫女は逃げ出してはいけない。`
『やめてほしいなー!神様との約束破るんだ?いけないんだ。』
逃げ出す為の準備を始める。
四葉の薬に、ありったけの食料。
マッチ、ナイフ、オイル、ランプ。
数日、数週間かけて集めていく。
あれから、変なことは起きていない。
村人達の目が厳しくなっただけだ。
「怪しまれてるから目立った行動できないね」
『えー………本当にやるの?儀式に関しては怒ってないけど、これに関しては怒っちゃうよ?』
「準備できたら、すぐにでも出よう」
「出るなら夜中がいいよね」
雨、四葉、色の三人が話すなか、ひとり、黙って違和感を抱えている。
ずっと、誰かの声が聴こえている気がしてならない。
(しっかり聞き取れないし、気の所為だよね!)
『気付かれてるの?早くない?』
『もう、逆に協力しちゃおうかな』
決行の日、昼。
「ここまで長かったね」
「そうだね」
大量の荷物を詰め込んだカバン。
草むらの奥に隠した。
『やっとかー…長いねぇ』
私の幻聴はしっかり聞こえるようになった。
お喋りなのか結構うるさい。
遠い目で三人を眺めていたら、色に話しかけられた。
「……照」
「ひょえ!?」
「私達に隠し事、してない?」
「いや、そんなこと……」
真摯な目で見つめられ、つい嘘をついてしまった。
相手は色だから、下手くそな嘘はすぐにバレる。
「照が嘘ついたー!………本当は?」
色の声に反応した二人が、こっちをむく。そしてそのまま話し始める。
「照、嘘ついたの?……嘘、というより隠し事かな」
「そうだね」
「えっなんでバレてるの!?」
三人口を揃えて言った。
「「「顔に出てる」」」
「そんなー!」
それからまた色が問いただす。
「それで、何を隠してるの?」
「うぅ……」
隠しても無駄だと直感した。
素直に白状しよう。
「あのね、頭の中に誰かの声がするの」
『あは。照ちゃんてば鋭いね〜』
また声がする。
『逃げ出し記念に村でも滅ぼしとく?』
『君の望んだ通りにね』
「誰かの声って?照とは関係ないの?」
「うん。ずっと喋っててうるさい」
雨の問いにそう答えると、謎の声は言った。
『ひどーい』
それから頭は静かになった。
「神様の声、とか?」
色が言う。続けて理由も。
「照って儀式のときに凄い怒ってたじゃん。その怒りに反応して……とか、ありそう」
それらしい理由を言ってみせるが、ちょっと自信なさげだ。
『だいせいかーい!!この村はゴミみたいだからね。神様、飽きちゃったの』
「合ってるってさ。私の中の声は、神様みたい」
全員が驚くが、すぐに受け入れた。
「神様に関して信仰があったし、私達は一応巫女だし、声聴こえてるらしいし」
「照、嘘ついてないもんね」
「まぁ、そんなこともあるよね」
いつもは皆につっこまれてるが、今だけはつっこみたい。
「皆、適応早くない!?」
散々話したあとは、いつもみたく生活をする。
あとは、時間を待つだけ。
決行の日、夜。
「ふわぁ……ねむい……」
雨が目を擦る。
いつもは起きない時間帯だから、なんだか新鮮だ。
星空は月に負けんと煌めいて、門出を祝福している。
荷物を持って、さあ行こうという時。
「……あのね、言っておきたい事あるんだけどね」
「どうしたの改まって」
「神様がね」
やっぱり、言わない方がよかったかな。
ここまで言ったら、引き返せない。
「村を滅ぼそうって言ってたの」
「……拒否はでき」
「できないよ。神様の言うことは絶対」
遮ってまで言う事じゃないかもしれないけど。
『…神様に背くのかな?できないよね』
「『だってそう教育されたから」』
「今更逆らえないよ」
四葉が少し考えてから、言った。
「…………照はどうしたい?」
「私は………」
どうしたいんだろう?
こんなところ、無くなってしまえと思う。
それと反対に、四葉の薬はどうするのかとも思う。
四葉の薬は特殊で、この村以外には作られていないと思うから。
「壊したいとも壊したくないとも思う」
「そっか」
『病気ぐらい、対価くれたら治すのに』
「神様が、四葉の病気、治せるって…」
今聴いた言葉を、忘れないうちに伝える。
こんな希望、縋るほかない。
『……面倒だから、皆にも聞かせてあげよーっと』
『ねぇ、選ばせてあげるよ』
急に頭の中で声が響く。
照が言っていた神様?
色も四葉も照もこの声が聴こえてるようだ。
「何を……?」
『条件だよ。無償で治すのはつまんないからね!』
悪魔は条件を並べ始める。
『片方は、誰か一人が命、もしくは巫女としての魂を捧げれば、四葉の病気は今すぐ治す。でも、村はそのまま』
『もう片方は村を滅ぼす。憎い大人も、君達を苦しめる仕組みも全部消える。私も力を使えて楽しいし。けど完治はさせない』
`さあ、どっちがいい?`
「私は治して欲しい。本当に少しだけど、薬も段々と効かなくなってるから」
四葉がそう言った。
なら、私は。
「私の魂をあげる!それで四葉が治るなら、苦しまなくていいなら、いいよ」
『ふーん……その選択で後悔しない?』
覚悟は決めた。
私が側に居られなくても、三人はきっと幸せになれるから。
「ま、待って!雨に死んでほしいわけじゃないの!」
「村を滅ぼす?………でも、薬はなくなるし、作り方もわかんないよ」
『どっちかだけだよー!さあ悩んで悩んで!』
無邪気にけらけらと笑う。
どっちに転んでも絶望。
そんな中、四葉が何か閃いたようだ。
「…今話してる神様は、何の神様なの?四人いるはずでしょ?」
『気付いたかぁ。私は春の神、小春』
『それで、私の事がどうしたの』
「秋の神様を呼んでほしいの。今は秋でしょ?貴方は今じゃない」
『……つまんない。千秋、呼び出し』
『はーい。要件は?』
今まで聴こえていた声とは違う。
「私の病気を治して下さい。何でもしますから」
『わかった。でも何もしなくていいよ』
「「「「えっ?」」」」
『…えっ?まさか小春がなんかした?』
「いや、まだ実害は出てないけど……」
一部始終を説明する。
『…………はぁ?小春ってば、なんて事してるの!?巫女さんに意地悪しないの!!』
『はい……ごめんなさい……』
(なんか……親近感湧くような……)
あれだけ絶対的に思えた神様が、別の神様に怒られている。
やらかした照を叱る四葉みたいだ。
『まったく………あ、病気は治しておいたから、薬は必要ないよ』
「ありがとう、ございます……!!」
四葉が感謝を伝えると、神様、小春は言い訳がましく言った。
『でもさぁ、照ちゃん言ったんだよ』
『滅んでしまえ、こんな村って』
『巫女の願いは叶えてあげるべきじゃないの?ねぇ千秋さん?』
『いや、その』
たった今、四葉の願いを叶えていた千秋は反論できない。
照が震え出す。
「違う、私は……そんな、つもりじゃ」
『でもさぁ、照ちゃん、あんなに綺麗な目をして「滅べ」って言ったんだもん』
『間違ったこと、言ってる?』
(あの時の照も、今の小春も嘘は付いていない。全部本心だ)
私がなんとかできるわけじゃない。
どうするべき?
「……色、どうすればいい?」
震える照が、縋るように私を見る。
(嘘は、誰もついていない。照の怒りも、小春の無邪気な残酷さも……なら、これを利用するしかない)
私は、照の震える手を強く握りしめた。
「照。神様の言う通りだよ。あの時、本気で願ったんでしょ?四葉の病気も治ってる。薬も必要ない。だからもう、この村はいらない」
照が目を見開く。
その青緑は潤んでいる。
「雨も、私も。いつかは照も色も。皆、この村に殺されかけた」
雨が言う。
「…照、これは事故じゃないよ。私達の意志で神様に願うの」
照は深呼吸して、言った。
「……全部、壊して」
その瞬間、鮮やかな色が飛び出した。
春の嵐。
照の怒り。
桜吹雪。
輝く蒼炎。
『あはははははっ!!』
『楽しいねぇ!』
美しい青緑の瞳は、桜色の瞳となって、爛々と輝く。
燃え盛る家。
崩れていく村。
死にゆく人々。
飾る桜。
「綺麗だねぇ」
輝く瞳で照が言った。
私達は何も言わず、荷物を持って、村だったモノに背を向けて歩く。
「これからどこ行こっか」
色がそう言った。
まだ、行き先は決まっていない。
だけど、皆で行くなら何処へだって行けるはずだ。
「あ、ちょっとやりたいことある」
四葉が荷物を下ろしたと思うと、いつも飲んでいた薬をばら撒き始めた。
錠剤が散らばって、草むらで見えなくなった。
「これでよしっ」
四葉なら、普段絶対しない行動。
村を焼いたから感覚麻痺しているのか。
薬のいらない身体で喜んでいるのか。
もう、どうだか分からないが、気にしない。
『私達もついて行って良いかな…?』
知らない神様の声がする。
どこか色と似ている気がする。
『もう村ないもんね!君達の守り神にでもなってあげよう!』
『信仰してくれる人がいないと消えちゃうもんね、私達』
小春に千秋、名前は知らないが、きっと冬の神様も話す。
また別の神様が言う。
『あ、ついて行っても大丈夫かな』
「うん!」
快く承諾した。
きっと居てくれた方が楽しい。
『ありがと!私は夏の神様、露夏。これからよろしくね!』
『私は冬の神、深雪。守り神になれるように頑張るね』
「名前は……小春、露夏、千秋、深雪、でいいかな?」
『うん、大丈夫だよ〜!』
一応神様だ。
名前を間違えて覚えたくはない。
「それじゃあ、行こっか!」
輝く満月を道標に進んでいく。
道はない。
どこに行くかも決めてない。
だから間違いはない。
正解もないけれど。
道は幾つだって創れるはずだ。
だって、言いつけを破れたのだ。
長年染み付いた言葉を無視できた。
ただ、自分たちの季節を、自分たちで選ぶために、彼女達はどこかへと旅をする。
四人と、四柱の旅。
「季節の子」おしまい
おまけ
祝詞と舞
「春の神よ。吹き荒ぶ花嵐を鎮め給え。綻びし命の糸、ふたたび結びて永久の春を刻み給え」
照は舞い散る桜の如く、優雅に。
「夏の神よ。燃え盛る熱をおさめ給え。我らに課せし宿命の鎖、今ひとたび強固に結び給え」
雨は揺らめく陽炎の如く、熾烈に。
「秋の神よ。枯れゆく風を呼び覚まし給え。我ら、神の豊穣に背くことなし、雫、黄金の穂に宿し給え」
四葉は染まりゆく秋霜の如く、繊細に。
「冬の神よ。吹き荒ぶ氷刃を振るい給え。命、白銀に染め抜き、来たるべき巡りの果てまで封じ給え」
色は突き刺す吹雪の如く、凛冽に。
ここまで読んでくれた方!ありがとうございます!良ければコメントもどうぞ!
だいたい返信いたします!