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余生
俺は自我を失う病気で隔離されている。強い感染力を持つ病気のため、家族とも2度と会えない。
海の見えるサナトリウムの中で、壊れるまでを過ごすことは、|運命《さだめ》。
俺は数学を愛した。数学は人間みたいに嘘をつかないしつけない、裏切らないし裏切れない。突き詰めれば絶対にそこに解があるから好きだ。
許されることであれば、数学を伴侶として余生を生きたい。そんな願いは普通に生きて叶うわけがなかった。母が縁談をとりつけ、好きになれない女性と家庭を築いた。はたから見れば幸せな男だった。
患者になってからは、ひとりで思う存分解き続けている。
俺の願いはただ1つだけ。この檻の中で、すべて解きたい。