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友人との再会
気がつくと森の入り口に突っ立っていた。ルーフは心配そうに見上げてくる。
「大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても。」
アリフェはルーフの頭を撫でた。
「でもどうやって戻ってきたでしょうか?あの館から出た記憶が無いんですよね。挨拶もしないまま戻ってきてしまいました。また行けたらいいですね」
しばらく歩くと町並みが姿を現す。
「あれ? アリフェ? 何してんの?」
突然声をかけられた。聞き覚えのある声の主の姿にアリフェは驚く。同郷の友人であるネリネ・ルトベキアだったのだ。
「ネリネ!? お久しぶりです。会うのはだいたい5年ぶりでしょうか。貴女、騎士団に入っていたのでは?」
5年前、ネリネは騎士団の試験を受けるために故郷であるクラーディを出ていったのだ。アリフェの両親が亡くなるまで文通でやり取りをしていたがそれ以降連絡を取り合っていなかった。アリフェの姿があまり変わっていなかったので気がついたらしい。それに比べてネリネは雰囲気がガラリと変わっていた。
「実はいろいろあってね騎士団、2ヶ月くらい前に辞めてきちゃた。今はすることがなくて故郷に帰りながらブラブラしてるとこ」
「でしたら一緒に旅に出ませんか? 1人と1匹では戦闘面では少し心細くて。私、魔術師ですし」
「いいよ、特にすることもないしそっちの方が楽しそう。でもアリフェって剣じゅ……」
「その話は今はいいでしょう。これからよろしくお願いしますね」
アリフェは話を遮ったが、こうしてネリネが旅の仲間に加わった。お互いにこれまでの話をしながら歩いていると、突然ネリネが話を切り出した。
「思ったんだけどなんでオオカミちゃん連れてんの?」
ルーフの事を興味深そうに観察している。
「『ついてきますか?』って聞いたらついてきたんです。大人しいし、人間言語を理解するオオカミって珍しいでしょう? オオカミであることを隠すために普段はイヌって言い張ってますけどね。名前はルーフって言います」
自身が紹介されていることに気がついたのかルーフはワフッと鳴いた。
「ふーん、ずいぶん野性的なイヌですこと。面白いしいっか、よろしくね。ルーフ」
ルーフも尻尾をパタパタ振って喜んでいた。
「|あれから《故郷を出てから》料理ってできるようになりました?」
今度はアリフェから話を振った。ネリネは料理が苦手なのだ。少しは良くなっていることを信じてアリフェは話を振った。
「騎士団に入ってさある時からなぜかね、炊事場に立つことを禁止されてた」
「絶対何かしでかしたのでしょう?」
「ほとんど心当たりないんだけど、仮にあるとしたら作った料理が黒焦げだったり、炊事場で爆発を起こしてみたりとか?」
曇りなき|眼《まなこ》でそう言った。
「それは本当ですか?嘘でしょ……」
そして、アリフェは絶句した。となりで聞いていたルーフもピシャリと一時停止している。
「んじゃあ、何か作ってあげよっか?」
「い……いえ、結構です。代わりに私が作りますよ」
今後決してネリネに料理を作ってもらおうなんて考えないようにしようと思ったアリフェなのであった。
ネリネ・ルトベキア
元騎士でありアリフェの友人
騎士であっただけあって剣術に長けている。料理が苦手で3回に1回暗黒物質を作り出すらしい。ルーフを少し警戒している。