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本物の英雄。
前に投稿してたストックは無くなりましたが、なんとか生きてます。プロットがあるので。
その家からは、20代前半ぐらいの若い女性が顔を扉から覗かせていた。
少しだけ金が混じった茶髪を適当に一つにまとめて、瞳は綺麗な|碧《あお》だった。
その人の方を見た私は、綺麗な人だ、と私は思った。その人は碧の瞳で旅人とパイモンを神でも見たような目で見つめた。
「旅人さんとパイモンさんですよね…?」
オドオドしていた話し方だが、その瞳の中や話し方はどこか嬉しそうで興奮していた。
「うん、そうだよ」
旅人はまるで英雄のような腰に手を置いた自信に満ち溢れたポーズをとりながら、嬉しそうにそう言葉を発した。
そして、それに続くようにパイモンも、
「おう!そうだぜ!」
と元気にとても明るく答えた。蛍と同じく自信に満ちた腕を組んだポーズを取った。
蛍とパイモンがそう言葉を発すると、その女性は柔らかな会心の笑みを浮かべた。
「うちは、仕立て屋ですが………服の仕立てですか?」
笑みのあとにでも、喜びの気持ちを抑えているのだろう。彼女は少し不安が混じったような表情に戻って、それに良く似合った声で私達にそう聞いた。
「ごめん、違うよ。絵巻物を探しているんだけど……見たことはない?」
そう言うと蛍は、その絵巻の詳細を簡単に説明し始めた。すると、彼女は何かを思い出したかのような表情を浮かべて、口を開いた。
「絵巻物………あなた方が探しているものかは分かりませんが、絵巻物は一つ所持しています。どうぞ、中へ」
そう快く私たちを迎え入れてくれた。
彼女はOpenと書かれたドアプレートを裏側にして、私たちを家へと誘導した。
--- * ---
その家の中には、男性用から女性用、子供用など様々な形のトルソーが綺麗に並べられていた。
そして、タンスが所狭しと並んでいた。
その中には様々な色や模様の布や飾り、ハサミなどが入っているのだろうと勝手に想像をする。
そして、私たちは彼女の指示で椅子に腰をかけた。背もたれがない、高めの椅子だった。
「こちらでしょうか?」
女性はそう言い、絵巻を少し広げて私たちに見せてくれた。そこには、探していた絵巻と同じ物が描かれていた。
「………これだ」
何一つ変わりない日常を過ごしていても偶に、昔のことを思い出す。
悲惨だった当時のスメールのことを。
「本当ですか?助けになってよかったです!求められているのならば、自由に受け取ってください!」
と言って、彼女は赤の他人である私にその絵巻物を差し出してくれた。彼女にも、この絵巻を手に入れるまでの物語があった筈なのに。
どれだけお人好しなのか、私は呆れるように心の奥底でそう呟いた。
「私たちは旅人だから、何か依頼を引き受けないと行けないの。それが、私たちの|性《さが》だから」
蛍は一旦断った。その後、神のような優しく温かい笑い方で笑いかけた。
「……………それでは、私が布を買っている方が居るのですが、最近、その布の素材を集めるために使っている場所に化け物が沢山居ると言っていたのです」
「その化け物を倒してくれませんか?」
彼女はまたオドオドとした話し方に戻って、私たちにそう尋ねた。そして、また口を開いた彼女は話し始めた。
「あと……その方に服を作ってもよろしいですか?」
腕と指を目で辿ると、その先には私が居た。