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Episode7.人間不信のお嬢様がお兄様と会う話。
チャイムが鳴り、私は立ち上がる。今日は帰っても何もしなくていい。お兄様に会うからだ。ドレスは着なくてはならないが。特に理由はないが今日は少し気分が悪い。
「お待たせいたしました。」
黒塗りの巨大な車に乗り込む。ここでもう着替えてしまう。
「どんなドレスがいいですか?」
「着物じゃだめかしら…」
「だめですよお嬢様。今日は次期当主様にお会いする日ですから」
「はあ…」
「じゃあお兄様を引き立ててこの青いドレスにするわ」
「さすがお嬢様、お目が高いっ」
(どーでもいいわ。)
風呂に入り、着替える。このドレスなら着物の形を崩したみたいな作りだから着心地がいい。
「もう少しで着きますので、ごゆっくりなさってくださいませ」
(ドレスでごゆっくりってバカか)
家につき、一度部屋に入り、化粧をする。何故兄に会うだけでこんなにおしゃれしなくてはならないのか。社交じゃあるまいし。財閥の家は面倒な決まり事が多い。
「おお〜!!!華夜乃!」
「お兄様…うるさいです」
「今日もいつもどおりかわいいな」
(そりゃあ?貴方様のために疲れるドレスとお化粧できているのだから。)
そうしてお茶を飲みながら小一時間ほど会話する。
「クラスには馴染めているか?」
「まあ、遥花もいますし…」
「そっか、あんな家で育って突然ん引き取られたから不安なこともまだあるだろうからなんかあったら俺に相談しろよ」
「はい…」
「そうか、今度宝生の令嬢にはお礼をしないとな。何がいいと思う?」
「…今度うちに呼べば喜ぶのではないでしょうか」
「そうかそうか、じゃあ令嬢の好きそうなお菓子でも用意しておくように行っておくから今度来るように言っておいてくれ」
「わかりました」
「では、そろそろ時間なので失礼いたします。」
「えーまあ仕事だし…。ああ、またな」
「ごきげんよう、澪夜様」
「あ、いま澪夜って…」
にっこりと笑って立ち去る。疲れた。兄は名前を呼ぶと喜ぶ。
「お着替えいたしますか?次期当主様から新しい着物が届いております」
「ありがとう、そうするわと言いたいところなのだけれど、これから剣道の稽古をしに行くのよ。お兄様からの贈り物はいつもどおりしまっておいてちょうだい」
「わかりました。行ってらっしゃいませ」
兄からの荷物…贈り物は私の好きなものや実用性が高いものが多いためいつも助かっている。新しい着物は特に嬉しい。別に洋服も着るけれど、昔から着物ばかり着ていたから、どうしてもそのほうが落ち着く。袴姿で準備運動を兼ねたランニングで練習場までいく。
「お待ちしておりました。お嬢様」
この人は私の剣道の師匠で世界2位の実力を誇っている。
「待たせたわね。ごめんなさい。」
「いえいえお嬢様。それより早く練習しましょう」
「そうね」
このあと彼女らはひたすら練習に打ち込み、3時間後にピアノの教師が呼びに来るまでやり続けたとか。