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11.護衛の奪還
魔石をもっていかせてから2日がたった。
さて、もうそろそろかな。
カンゲが私の魔力入りの魔石を持っていってから、ずっと脳内で後を追っている。
この魔力の使い方は……なんとなく、としかいえない。
なんとなく、あっちの方向に私の魔力がある気がするのだ。
そして、それと今回通る道とを示し合わせて、今ここら辺にいるんだろうな、というのを感じている。
そして、推測が正しければもうすぐ着くころだ。
……と、反応が消えた。これは転移されたということだろうか。
けど、どこに? 転移された先が分からない。
しばらく辛抱強く探した。そしたら、反応があった。
90度ちょっとずれた方角だ。
どうやら、転移されたようで間違いはないらしい。
地図を覗くと、その方向には街があって、山脈と森があって、|隣国《ファステリア》の王都がある。
さすがに隣の国の王都はないだろうから、それまでにはあるだろう、きっと。
「準備はできている? ファステリアの王都の方向に向かうよ」
「かしこまりました」
さあて、今のうちに進むだけ進んでおかないと。
「ちゃんと休憩したから飛ばしていいわ」
「かしこまりました」
護衛の5人くらいと身軽に進む。
もう昼過ぎ。だけど、今行動しておいた方があとからがはるかに楽になる。
カンゲが神殿に戻る前に進んでおかないと。
一晩、徹夜した。
そして、次の日は、早めに宿についた。
カンゲは、まだ神殿に着いていなさそうだ。
朝。目が覚めた。
カンゲが動いているような感じはなかった。もしかしたら神殿についているかもしれない、と方向を確認するとドンピシャだった。
「カンゲを迎えに行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
◇◆◇
おつかいから帰ったカンゲは驚いた。
ユミ様がもう出かけたらしいと聞いたからだ。
俺、おいて行かれたのかなぁ。
分からないが、とりあえず一晩神殿で過ごすことにした。
朝、早起きをして運動をしていた。
ユミ様からは相変わらず何もない。本当に見捨てられたかもしれない。
あぁ……ユミ様……
「カンゲ、おつかいご苦労様」
だから幻聴が聞こえたのだろうか。
ユミ様の声が聞こえた。
「え?」
そして、振り返ってみると身体もあった。
「私は本物ですよ?」
自分の考えも見透かされていた。ちょっと恥ずかしい。
「今から私たちは進んだところまで連れていきますね」
「進んだ? どういうことですか?」
「私は転移魔法が使えるんですよ?」
「だから何なんですか?」
「カンゲを待たず先に進んでそこから転移魔法を使ってカンゲを連れて行くほうがはるかに効率がいいじゃないですか」
「確かに……」
「なにも言わず話を進めてしまってごめんなさい。だけど、これも早くべノンを救出するためだから」
「ありがとうございます」
「わかってくれたならよかったです……風ーー聖転移」
ユミ様は、俺のためだけに聖転移を使ってくださった。
聖転移は、聖属性を使えるものしか使えない魔法。転移時に、その違いは現れる。
そして、一瞬で目の前には仲間がいた。
「進みましょうか」
「はい!」
やはり、このお方は素晴らしい。
◇◆◇
「なあ、ユミ様はまだか?」
「もう4日もたつぜ。食事は与えられているからいいにしてもよぉ」
「ここが王都から離れているとことだったらいくらユミ様とはいえども時間はかかりますよ」
「お前さんはなぜそんなユミ様を信じられるんだ?」
カミラは考える。
「そうですね……強いて言うなら、ユウナ様から解雇された自分をなんの偏見もなしに見てくれたから、ですかね。なぜか信用できると思ってしまったんですよ」
「そうか……なら、俺たちも信じて待つしかねえな」
「だな」
「俺らももう少し頑張ろうぜ」
そして、時を過ごすこと一時間。
「なんだ?」
「さわがしいな」
「待ってくださいね。今、確認します」
魔力を広げる。すると多くの人たちが入って来ていた。
壊すなら今がチャンスだ。
ここにかけられていた阻害を解除する。
だが、外に出られるわけではない。正直手詰まりだ。
「カミラさ~ん」
ユミ様のお声が聞こえた。
助かった。
ひと安心だ。
◇◆◇
「カミラさ~ん」
反応がはっきりしてきた。10,20,30……いったいどれくらいの人がいるんだろう?
こんな人数を生かしておくよりさっさと殺したほうがいいと思うけどな。
何か目的があるのかもしれない。
「この鍵、どうやって開けれますか?」
カミラなら理解していると信じて、聞くことにした。
あの奴らは今頃めっためたにされているだろうから聞くに聞けないんだよね。
「一つ目の鍵は……」
説明してくれた。やっぱり把握していたようだ。
カミラは優秀な人物だと関わりが少ない私でも分かるのに。
佐藤さんは何で無駄なことをするのだろうか?
「ありがとう。少し待ってね」
この鍵はこうして。
あ、だけど3番目は普通に鍵が必要なんだっけ?
どうにかならないかなぁ。
ピッキング……やってみようかな。
鍵の仕組みならわかるし、意外とできるかもしれない。
結果、出来ちゃった。
多分、ただ手さぐりにやるだけでなく、魔力も使って鍵の内部を感じることができたからできたんだと思う。
ここでも魔法……というかもはや魔力だけでも十分な気もするけど……の威力を知る羽目になった。
「助けにしましたよ」
「聖女様……」
「ユミ様だ……」
「尊い……」
なんだろうね、前世でも聞かなかったことを言われているよ。
この人たちの目、大丈夫かな?
「怪我をしている人はいませんか?」
「はい。大きい怪我は誰にもないです」
「それは良かったです。では帰りましょうか。4日5日ほどかかりますけど構いませんよね? あと今日は休養してもらいますからね!」
転移を使うことも考えたけど……
あんまり大人数を転移に巻き込むのは申し訳ないし、報告に行かせる者一人に転移は使うことにした。