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11.クランは、自分自身を省みる
「ふう、寒かったわね」
「これで初雪なんて信じられない」
雪は、吹雪いてきたとは言え、まだ積もっていない。
だけれど、寒さを与えるのには、十分だった。
「どこか寮の中でいい場所はないかしらね」
「あ、確か個室を申請すれば借りられると聞いたよ」
「そうなの? それならそうしてみましょう」
「了解」
そこで、初めてわたくしは寮について詳しく知れた。
それ以外にも、談話室や、夜になっても訓練できるための訓練室があることを知った。
この機会があってよかったわ。
たまには訓練に行ってもいいかもしれないわね。
「よし、借りてきたよ」
「ありがとう。じゃあ行きましょう」
「そうだね」
「じゃあさっそく雪を作ってみましょう。……水よ、雪となれ」
はらはら。
ゆっくりと雪が舞っている。建物の中で。
そして、外には吹雪。
なんだか、それが、とても幻想的な光景であるかのように思えた。
「……綺麗だね」
「そうね、綺麗だわ」
結晶を観察してみる。
ちゃんと、違う模様の結晶があった。
「うん、成功だわ」
「ところでさ、魔力は大丈夫なの?」
「魔力? そんなの有り余っているわよ」
そういえば、どれくらいがわたくしの限界なのかしら?
今まで考えてみたことがなかったわ。
今度、何もない時にでも試してみようかしらね。
「そうなんだ……」
わたくしたちは、雪が舞い落ちるのを、見ていた。
「もうすぐ出ましょう」
「そうだね。時間も近づいてきているし」
そして、わたくしたちは部屋に戻った。
「サリア、綺麗だったわね」
「そうですね」
サリアはいつも通り、気配を薄くしていた。
それにしても、サリアの気配は時々存在を忘れてしまうくらいになってきたわね。何か特技にでもなってきたんじゃないのかしら?
そんなことを、ふと思った。
そこから夕方までは、図書館にお邪魔した。
わたくしがずっと読みたいと思っていた本。
『魔物大全』
これは、三百年以上前に書かれたとされていて、その当時、どんな魔物がいたか、どれくらいの強さなのか、などが分かるの。
三百年くらいじゃああまり変わらないと思う人もいるかもしれないけれど、実際オグルなんかは目撃証言が途絶えたし、それに新しい魔物も増えていくもの。
意外と変わるの。
今日の図書館に来た目的は、オグルについて、ちゃんと調べること。
確かに先生とかに聞いて、オグルがどんな魔物かは分かった。だけれど、それだけではなんで神々が今、オグルを復活させたのかがわからない。
そして、それさえ分かれば、対策の仕様があると思うの。
『オグル』
あった、ここだわ
ざっと読んでみる。
うん、知っていることだわ。あ、けれど、これは参考になるかもしれないわ。
オグルの推定討伐人数はこの頃で百人らしい。
この頃の推定討伐人数はどれくらいの指標なのかしら?
はじめから目次をたどっていくと、
『ガベストラージ』
の説明があった。
ガベストラージは驚いたことに、推定討伐人数、千人らしいわ。
今は五百人だといわれているし、昔の人は弱かったようね。
ということは、オグルの推定討伐人数は、五十人というところかしら?
弱っちいわね。
まあオグルは集団で行動することもあったみたいだし、一匹だったらそれくらいかもしれないわ。それに。集落を壊滅させようとしたらもっといるのかもしれないわ。
どうやら神々が復活させたみたいだけど、集落はもう作られているのかしら?
こんど探してみましょうか?
そして、わたくしは『魔物大全』にある、知らない魔物をいくつか読んで、寮へと帰った。
『アクアインプ
水辺の近くに出没する、緑色の推定討伐人数二百人の魔物。物理攻撃を無効にする。水属性が得意。ただし、頭の上の皿は弱点。
また、アクアインプは主に夏に出没するが、似たように物理攻撃無効の性質を持ち、頭の皿を弱点とするものに、ニクスインプは冬に出没する。季節もそうだが、こちらは水色であり。色で識別できる』
夕食を寮にある食堂に食べに行くと、そこにはネイラがいた。
「あら、クラン。こっちで食べない?」
誘われたので、ありがたく同じテーブルにつくことにする。
「そういやクランに関することをフィルゲから聞いたよ」
「わたくしに関すること?」
「そう、オグルを一人で倒してきた、ってこと」
「ああ、それね。それがどうしたの?」
「驚いちゃってね、だからクランにあったらどんなだったのか聞きたいと思っていたのよ」
そうなのね。
それならタイミングが良かったのかしら?
「ねえ、オグル、どうだった?」
「そうね、本当に魔法が聞かなかったわ。ああいう魔物、初めて会ったもの」
「やっぱりそうなんだ……剣で倒したの?」
「そうよ。粗そうな動きをするくせにあまり隙がないから時間がかかってしまったわ」
「そう……けれどそれでもちゃんと倒せるんだ」
「ええ、何とかなったわね。あ、ネイラはもとからオグルを知っていたの?」
「うん、知っていたわ」
「じゃあ角がどんなふうに素材として使えるか知っているかしら?」
「あぁ……ごめんなさい。それは知らないわ」
「まあそうよね。ごめんなさい。無茶なことを聞いてしまって」
「大丈夫よ」
そして、ネイラは食べ終わり、食堂から出て行った。
やがて、わたくしたちも食べ終わり、二人で部屋に帰る。
「そういえばカナンはどうしているの?」
フィメイア学園のとき、カナンが活躍していたのは移動の時だからね。
念のために住んでもらっているけど、正直遠出の時以外あまり必要ないのよね……
「カナンさんなら、今は暇だから、と他の執事の方たちと交友を深めているそうですよ」
そう。
まあカナンだもの。
きっと、自分にはそこまでの役目はない、とはじめからわかっていたのでしょうね。
そうね……
「暇なときは、夕方までに帰るのなら、出かけててもいい、と伝えといて」
「わかりました。明日にでも伝えておきます」
これも「約束」になるのよね。
正直、こういう時は便利なのよ。必ずカナンにその伝言が伝えられるから。
だけど、そんなふうな油断がたまっていって、あのようなことになった。
今のところ、わたくしは「のらりくらりとした性格」を演じられているのかしら?
あまり自信がないわ。
けれど、これからはどんどん人と関わる機会が増える。……多分。
だから、制限的には今日までよね、性格を固めるのは。
だけれど、もちろん大きく変えるのは無理。
わたくしは、そんなことを考え、具体的に性格を想定しながら、眠りについた。