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勝斗視点 記憶喪失扱いされている #2
二話です。一話を見てない人は先に一話を読んでください。
自殺描写があります。
苦手な人はUターンでお願いします。
「記憶障害ですね。一時的なものかはまだわかりませんが。明日、検査してみましょう。」
「⋯はい」
「娘を、よろしくお願いします」
いくつかの質問をした医者は淡々と診断をした。
正直、釈然としないが正直に言ったとして、果たして誰が信じるだろうか?
俺は大人しく頷く。女性―――この体の母親が深々と頭を下げる。
質問をされてわかったことがいくつかある。
この女子の名前は|小林美春《こばやしみはる》。年齢は俺と同じ17歳。
父、母、の三人家族。いわゆる一人っ子ってやつだ。
性格はかなりおとなしいらしく、俺とは正反対なので少し母親に驚かれてしまった。
医者が「うーん」と唸りながらカルテをじっと見つめている。
「まぁ、自殺未遂をしたようですし、もしかしたら精神的なものかもしれませんね。」
医者が言った言葉にサッと空気の温度が下がった気がした。
今、なんて言った?自殺未遂⋯?
この体、美春は自殺未遂をしたのか?
「なんで、自殺未遂を⋯?」
思わず呟いた声はひどく掠れていた。
喉がカラカラになる。
自殺。それはどれほど怖くて、どれほど怖いことがあったらできるのだろうか。
医者は自分の失言に気づいたのかチラチラと母親を見ている。
母親は固い顔で頷くと、ぽつり、ぽつりと話し始めた。
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その日、美春の母親宛に警察から一本の電話が届いた。
「近くの廃ビルで、娘さんが自殺未遂をしたようです。まだ息があったので病院へ搬送しました。」
自殺未遂⋯?昨日、大好きなハンバーグを美味しそうに頬張っていたあの子が?
今日だっていつものように明るく「いってきます」と家を出たあの子が?
それは、何かの間違いじゃないか。
そう警察に言ったのだが、なんでも服の中から遺書が出てきたのだそうだ。
嘘だ。そうに決まってる。そう自分に言い聞かせてなんとか平然を保つ。
震える足を叱咤しつつ母親は病院へ向かった。
病院には二人の警官がいた。
警官はツカツカとこっちへ近づき、母親に一つの紙を渡す。
「これが、遺書です」
母親は震える手でなんとか受け取り、その内容に絶句した。
『 遺書
私は、いじめを受けていました。
私は、なんとか自分だけで解決しようとしました。
しかし、どうにもなりませんでした。
だから、先生を頼りました。けれど、「それはいじめじゃない。遊びだ。」と、取り合ってもらえず。
どこかから先生を頼ったことが漏れ、いじめがひどくなりました。
家族を頼ろうかと思いました。けれど。
もし、先生のように真面目に取り合ってもらえなかったら?
そう考えるともう、誰のことも頼れなくなりました。
人の目が怖い。もう限界。辛い。
家族へ。親不孝な娘でごめんなさい。でも、私にはもう耐えられそうにないの。ごめんなさい。
できることならもっともっと生きたい。生きたいよ。
最後に。私をこんな目に合わせた奴らを呪いながら死のうと思います。さようなら。』
ところどころ涙の痕がある遺書は間違いなく娘の字で書かれていて。
頼ってくれなかったやるせなさと、娘がひどい目にあっていたのに気づかなかった悔しさで。
感情がぐちゃぐちゃなまま、母親はその場に泣き崩れた。
反応が来たことへの嬉しさでもう一話書けました。
応援は偉大ですね!次の話はまた今度。