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死神と悪夢 6話(前)
『君の記憶が、消えちゃうから。』
自分がそっち側だって気づいたのは、ついこのあいだのことで。
確か、暑い、暑い、…夏の日。
強く閉ざしていた目をそっと開けた。
何が起こっているのか分からなかった。なぜ自分は目を閉じていたのか、小さく、小さく膝を抱え込み座っていのか。
体中から汗がふきだしてくる。拳を強く握りしめ、大丈夫だ、と言い聞かせる。それでも状況が飲み込めなかった。
呼吸を落ち着かせてから、目線をそっと上に上げた。
自分が座っていたのは、道路の真ん中。
折れた電柱。崩れかけたマンション。怯える人々。
みんながみんな、自分を見ている。
咄嗟に自分が何をしたのかを思い出す。
交差点、交差点に信号無視をしたトラックが入ってきた。それで、そうだ、誰かが引かれそうになったんだ。
…誰が?
「お兄ちゃん」
声がした。
どこから聞こえたのか、声を頼りにあわてて目で探す。
「お兄ちゃん」
震えた声が耳にはいっていく。
後ろか。
ゆっくりと、後ろを振り返る。
自分より、3つは下だろうか。女の子が座っていた。
怯えた目をしてこちらを見ていた。服などがところどころ破れていて、長い髪はボサボサだった。
「君ー」
「お兄ちゃん…?」
「お兄ちゃんを…探してるの?」
女の子の喉から、ひゅっと音がした。
「なんで…なんで?私だよ?私だよお兄ちゃん。」
何がなんだか分からなかった。
頭の処理が追いつかない。視界がぐるぐる回っているような感覚がする。
だって、自分には妹なんかいないはずで。じゃあ、さっきからお兄ちゃん、お兄ちゃんと呼んでるあの子は一体なんなのか。
耳に残る救急車のサイレンだけが、鳴り続いていた。
はい、2ヶ月ぶりのシリーズです。主人公くん(名前決めないとそろそろやばい…)には辛い過去を背負ってもらいたいなと設定をねっていたら2ヶ月が過ぎてました。しゃーせん。
これが前編ということは、次は後編です。こんなに短いなら分けなくてもいいだろ…と思った方。残念もう気力がありません。
ということで、期待してる人がいるかわからないけど次号ご期待!!