公開中
第5話:魔物
「面白い!速攻で終わらせてやる…人生ごとな」
「お前の様な、気味の悪い獣…この世に生まれてきたことを後悔させてやる!」
その言葉が、言い終わった瞬間に戦闘が始まった。
―ドゴ―ン
という、普通では聞かない音と共に、教卓の後ろの黒板に大きなひびが入った。
勝負は、たった一撃で決まった。
「命だけは…逃してやろうか?」
そう、俺が一瞬で黒板を粉砕し敵の戦意を喪失させたのだ。
「………」
「どうした?この拳を…お前の顔に当ててもいいんだぞ?」
無言な、イきり勇者をちょっとだけ煽ると…。
「す、すいませんでした!!!」
とだけ言って、何処かに行ってしまった。
「ふぅ~」
俺は、息を小さく吐くと心の中で〈スキル解除〉と唱えた。
その瞬間、俺を謎の光が包み…体の熱が消えた感じがした。
「す、すげぇー!!かっけぇー!!」
「なんだ、目で追えなかったぞ!」
「めっちゃ、かっこ良かった!」
戦闘が終わった瞬間に感激の声が上がった。
(ここまで、褒められると…めっちゃ、嬉しい)
しかし、感激の声にまじって誰かがぽつりと呟いた。
「でも、あれって…“鬼”だよね?」
誰かが、言ったその言葉で俺への歓声は一瞬で消え全員言葉を発しなくなった。
誰も話さないという、状況が数分続いて…俺は、このクラスの人達が俺をどんな目で見ているのかが分かった様な気がする。
「“恐怖”“不安”そんな感情なんだ…ごめんね…“ボク”がいると邪魔だよね」
俺は、そう呟き教室を出る事にした。
「ま、まって!」
突然、声がかけられ教室を出ようとしていた体が止まった。
「なに?ボクに何か用?」
「わ、私ちょっと貴方と話したいことがあるの」
その言葉を聞いて振り向くと、そこには一人立ってこっちを見る幼馴染の姿があった。
「そう…ボクも丁度話したいことがあるから…歩きながら話してもいい?」
「う、うん!!」
俺達は、教室を出た後…歩きながら、これまでの空いていた時間を埋める様な感覚で小5からの事を話した。
「へー、あのイきり勇者…ボクを虐めていた一人だったんだ」
「そうそう…よく、たち向かえたなって思った」
「それは、教えて来ない野乃が悪くない?」
「…確かに、言えてるね」
「で?ここまで歩いて来たってことは何か重要な話でも有るの?」
「…バレてた?実は、私のスキルの中にね…〈種族予知〉って言う能力があってね、内容としては…」
「その人物の未来の種族を見る事が出来るってこと?」
「そう、そして…その人物がその種族になってのちょっとした未来も…」
それは、ほぼチート能力じゃないか…。
「それは……!!なに!?」
俺が、何か言おうとした瞬間…何か不穏な気配が俺の背中を撫でた様な感じがした。
「ど、どうしたの!?」
野乃は、感じなかったらしい。
「ちょっと、向こうが気になるから戻って良い?」
「い、良いけど…」
許可は貰った。
さて、この選択が吉と出るか…凶と出るか。
さっき居た、1-2の教室の近くに来ると…教室内から化け物の様な声が聞こえた。
「ぐぎゃぉああああああ!!!!!!」
(耳が、痛くなる)
こればかりは、我慢するしかないと感じながら俺は教室に飛び込んだ。
そこには、約20人近くの頭無き死体があった。
いや、それが死体なのかどうかは分からない。
何故か、感覚的に転がっている死体が…死んでいるのではなく“眠っている”ように感じるのだ。
そして、窓際を見ると…緑色の体と4頭身位しかなさそうな小さな体…そして、長い耳が特徴的な、ラノベやゲームでの定番モンスター〈ゴブリン〉が居た。
「ま、魔物?それにしては、小さくない?」
俺は、そんな事を言いながら何も考えずに教室に入った。
その瞬間、背中側からバタンという音が聞こえた。
「…もしかして、トラップ?」
俺は、しまったと思いながら目の前の現実と向き合う事にした。
目の前に広がる、操られている様な動きをする頭のない人間共を…。
数分が経った頃。
「で?これ以上はいないみたいだけど…他に、何かあるの?」
私は、糸の切れた様に倒れる死体の山を背に…窓際に向かってそう呟いた。
「キィキィ!!」
「五月蠅い!ゴミは黙れ!早く、本体を出せ!!」
小さい蜘蛛の様な生物が出てきたが俺は、無視して本体を探す事にした。
色々な物を破壊しながら数分が経つと…。
『うぅ…すいません…い、命だけはぁ…ご勘弁を』
と言いながら、白く小さい蜘蛛が土下座しながら謝ってきた。
「お前が本体?」
一先ず、確認を取ると…。
『はい、そうです』
「そう、じゃあ…命は助けてあげる代わりにいくつかの質問に答えて貰ってもいい?」
『わ、分かりました…。何でもお答えいたします』
まずは…やっぱりあの質問だ。
「君は、何者?」
『わ、私は…種族は〈ポイズン・スパイダー〉と言います。話せているのは…スキルの中に〈念話〉があるからです。あと、名前は無いです。』
「そう…なんで、ここを襲ったの?」
『えっと、これに関しては私個人の理由になるのですが…』
そう言って、蜘蛛の魔物…もとい、彼女は自分の身に起きた事を伝え始めた。
「…君も、あの【勇者】に虐められてたんだ」
『君もって…もしかして、貴方様もですか?』
「うん、ボクに関しては…小学校の頃の話だから君にあった事無いけど…」
『で、でしたら…【勇者】に復讐するために手を組みませんか?』
確かに良い提案だ…しかし…。
「ボクは、別に復讐とかはどうでもいいんだ。ただ、今回は楽しみたいんだ。だから、復讐をサブとしての仲間だったらいいよ」
『で、では…それでお願いします!』
こうして、俺は彼女と仲間になる事になった。
『そう言えば、貴殿様はどうやって私の攻撃を破壊したのですか?』
それ気になるかぁ…
「簡単な事だよ…君は、人とかを操る時に糸で操ってたでしょ?その糸を全部破壊したってだけだよ」
『…で、でしたら…貴殿様が物を破壊で来た理由は?に、人間種は壁にかけている黒い物も、普段使用している木の構造物も破壊できないと思いますが…』
「あー黒板と机椅子の事?…あれは、なんでだろう?確かに壊す事が出来た理由は謎だな…今度、ステータスを見て見るよ」