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超主人公
しょせん、わたしは脇役なのだが。
「ほら、ストラ!」
ストラ・サポーティ。それがわたしの名前だ。
「あ、待ってよ」
ただの、|回復役《ヒーラー》の、魔法使い。だが、エクス・プロタの親友という、絶大なポテンシャルがある。
エクスは、類まれな才能を持つ|攻撃役《アタッカー》の剣士。美しい金髪をツインテールに結い、紺色のマントをなびかせる彼女。彼女はこの世界を脅かす、深い紫色の汚れた髪をふたつにした|魔王《ラスボス》を倒したのだ。
「早く!」
頑張って、魔王を倒した彼女は、まさしく《《主人公》》に相応しい。
IQ・フィジカル・人脈・ルックス、すべてを兼ね備えた女。切れる頭で戦略を立て、その行動力で敵を倒して味方を救い、人脈で人を助け、その美しい容姿は人々を魅了する。
ここまで揃っていると、最早怖い、恐ろしいまである。
|最高《サイコ》にキラキラしている彼女は、人々の憧れの的だ。しょっちゅう成功物語を語り、少々ヤンチャをする。その姿さえ、人々を救う。
「あたしさぁ、あの歌嫌いなんだよね。刺さんなくなっちゃってさぁ」
あの歌、とは弱者を歌った歌。とんでもなく刺さる、共感できると話題のやつだ。
「そうなんだ」
「スライムとかさ、今までどんだけ倒してきたわけ?もうウンザリだよ。ま、上目指しすぎたからかなっ?」
昔は、スライムにも共感を持てたはずだった。彼女のレベルは、もう0が幾つついているか不明だ。
「みんな、あたしになりたがってんでしょ?だから、あたしを邪魔する|奴《モブ》らはこっそり消したいわけ!」
それが彼女の持論だ。
「あたしのこと好きでしょ?」
彼女は、一方的な愛を押し付ける。
「あたしのこの行動、すごいでしょ?」
彼女は、「YES」という人を集める。
「あたしのやること、正しいでしょ?」
彼女は、エゴを正当化する。
彼女は、
「あたし、なんかみんな怯えてるなーって思うんだよね。あーもう面倒くさい、邪魔する|奴《モブ》ら、ごっそり消して、根絶やしにしたいわぁ」
「君、変わっちゃったね…」
ここは、黒い洞窟の中。ここがエクスにとって、過ごしやすいらしい。
「いた!」
「本当!?」
「え?」
入口のほうで、何か聞こえた。
「《《魔王》》、覚悟!」
「違うよ、あたしは____」
振りかざす剣。赤い服にも、紺色のマントにも、美しい金髪にも、鮮やかな赤の雫。
「やった、倒せた!」
「待って、まだ味方残ってんじゃん!」
「ちょっとっ…」
わたしの方にも、振りかざす。白銀に輝く剣に、怯えるわたしが映る。
彼女は、
「これで、魔王討伐!」
世界を滅ぼ《《した》》。
ピノキオピー 様の、「超主人公」です。