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ゆめのあと
夢の後、それは明けゆく朝、目覚め。楽しかった夢もいつかは覚めなければならない。深い眠りから覚めなければならない。
私は夢の後は嫌いだ。いつも後悔と、虚しさ、悲しみを連れてくる。辛い現実を突きつけてくる。
いっそこのまま暖かい夢の中で|溺《おぼ》れてしまいたい、なんていつもそう考えている。
無機質なアラーム、簡素な朝食、準備をして、学校へと向かう。半日位学校で過ごして家に帰る。その後宿題をしたり、夕飯を食べたり、お風呂とかいろいろ。最後に布団に潜り、深々と夢の中へ|堕《お》ちる。毎日その繰り返し。何の意味があるのだろう。生きている意味とはなんだろう。恐らくこれは悪夢なのではないか。ずっと続く悪夢。きっと暖かな夢は幻想に過ぎない。悪夢に囚われた故の幻想。そう考えているとなんだか愚かな気がしてくる。
何故、生きているのか。
何故、忠犬のように人の指示を聞かなければならないのか。
何故、型にはめられ、規律正しくしなければならないのか。
何故、人と何か異なるだけで怪奇な物を見る目で見られなければならないのか。
何故、多数の意見に流されなければならないのか。
何故、人がやりたくないことを押し付けられないといけないのか。
これが私にとっての現実なのである。こんな現実なんて悪夢のようにしか思えない。どうして悪夢は覚めないままなのか。楽しい夢はすぐに消えてしまうのか。これだから夢の後は嫌いなのだ。最近は悪夢から逃げるための現実逃避についてずっと考えている。「現実逃避」が私にとっての「逃げ」なのかもしれない。暖かな夢を見るために。
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夢の跡、それは自分の夢を諦めた時にできる影。いくら追いかけても追い付けなかった夢。高々と掲げている程、追い付けなくなると私は思う。
私の夢は今、よく分からなくなってきている。なぜなら、長年追い求めていた夢が現実味を帯びていないような気がしてきたのだ。小さな頃からずっと同じ夢を追い続けてきたが。自分にとってこれが憧れなのか、最善なのか、あやふやになってきたのだ。
どうしてこの夢を持ち始めたのか正直覚えていない。このまま夢に向かって突き進んでいいのか、もう夢を諦めて他のことを探すか、どうすればいいのか分からない。もう夢に呪われている。囚われの身なのかもしれない。
夢の跡をなぞって何になろうか。最善は何なのか、|揺蕩《たゆた》うしかない。
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「暖かい夢に囚われ続けていたい」なんて言っていたら私の周りの人々は離れて行くだろうか。失望させてしまうかもしれない。でも、私は現実なんて見たくないし、やりたくないことはやりたくないし、自分の夢なんて分からなくなってきたのだ。こんな私に存在意義なんてあるのだろうか。
皆が望むのならいっそ消えてしまいたい。
目覚めないままずっと暖かい夢の中で溺れてしまいたい。囚われの身になっても。
ゆめのあとはどんなあじ