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一頁 初桜
始業式。みんな、なんだかんだで楽しそうにはしゃいで、クラス分けの掲示を見ている。
そんな学生たちを睨めつけながら登校しているヤツがいた__この僕だ。
ちなみに、睨めつけているのは、不機嫌半分、元々の目つきの悪さ半分。
「よっ、よがりん。そんなピリピリしてても、担任はトキ先生にゃなんねえぜ?」
そんな史上最恐の顔面になっているであろう僕に、場違いに明るい声をかけてきたのは、クソガキ……ではなく、幼馴染のなびきであった。
|中下《なかした》なびき。幼馴染。ボーイッシュでキュートでフレンドリーなガール。開口一番うざったいが、これでも僕の唯一の友達である。
「おはよ、なびき。朝からうっせーな」
「にゃはは、厳しー。どう、もうクラス分け見た?」
「いや、まだ。ていうか、それはお前もだろ? 掲示板向こうなんだから」
「んにゃ、僕の人脈ナメちゃいけねえよ? 友達に写メ送ってもらってある」
「すげえ無駄に友達働かせるじゃん」
僕のツッコミを無視して、なびきは「ほい、これ」とスマホの画面を見せてくる。
「僕とよがりん同じクラスだって! ね、ね、嬉しい?」
「おー、そうだな。うれしーうれしー」
親しげに肩を組んでくるなびきを軽くあしらって、
「ほら、とっとと歩け。昇降口混んでるから、万が一にも遅刻したくねえだろ?」
と歩き出す。なびきも慌てて駆け足で追いついてきた。
「おい、置いてくなし!」
桜が舞っていた。なびきが笑っていた。澄んだ空をバックに。
別に感傷なんてない。奇麗なんだろうな、と思うだけ。
僕はまだ気づきもしていない。
その景色を、きっとすぐに溶けてなくなる景色を、分不相応にも奇麗だと思うことになることは。
予感さえしていなかった。