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Episode3.人間不信のお嬢様がクラスのいじめに巻き込まれない話。
実は、転校生の二人は結構なイケメンだった。早速彼方は日向の王子様、伊織は氷の騎士様と呼ばれるようになった。怖いことに早速彼らに憧れた男子たちがアレクサンドリットというグループを作ったらしい。そして文は伊織が好きなようでずっとベタベタしている(ずっと無視されている)。伊織たちは何故かとっつきにくい雰囲気を発しているらしく、クラスメイトでは狙っている人は多くても近寄る人はいない。のにも関わらずベタベタしていたらそれは不興を買う。仕方がない。馬鹿だともいえる。このクラスには鬼山さん率いる派手なグループがあり、可愛そうなことに自分たちは一軍だと思っている。最近そのグループからものすごく嫌われている。ちなみにそのグループから最近追い出された加藤さんという気の弱いおとなしいタイプの人がいて、女友達のいない文に目をつけられ声をかけられているらしい。その誘いに乗ると絶対に鬼山さんにいじめられると思うが果たして加藤さんはそれに気づいているのか、と考え、面白くもないのにくすりと笑う。もうすぐテストだから、教本を開いて暗記する。だいたいこんなもの一度見れば覚えられる。だから数十冊持ってきた。昼になってお昼ごはんを開け、食べるが、殆ど食べられずに残すことになる。お弁当は味がする。
(美味しい。)
少しほほえみながらご飯を小さすぎるひとくちで口に運んでいたら、突然階段のドアがガチャリと開いた。
(誰も来ないはずなのに…1年生かな)
来たのは何故か伊織だった。彼は私の前を通り、階段の上の屋上に一番近いところに座った。そして特にお弁当を食べることもなくスマホをいじり始めた。特に邪魔なわけでもないのでお弁当を片付け、寝ることにした。その前にスマホを開き、遥花にLI○E通話をかける。日課のようなもので、今日の授業なんかについて聞いたり、提出物の期限を聞いたりしている。
「もしもし…」
「あ、もしもーし。今日ねえゆうちゃん先生と竹内が宿題あるって。」
「えー」
「んで、ゆうちゃん先生はこないだ言ってたレポートだからいいとしてさ、竹内がさ、テスト範囲のワーク10回分やってこいってゆうんだよぉ」
「あー頑張れ」
「他人事みたいに言わないでよぅ」
「だって他人事じゃん?私終わってるもん」
「うう…。正しいから何も言えない…」
「ま、頑張れ」
「うん。じゃあまた〜」
「ばいばい」
通話を切って、ぼんやりと外を見る。流石に人がいるのに寝るのは不用心か、と思ったので本を読み始めた。しばらくして予鈴がなり伊織が戻っていく。何をしに来たんだろうか。今日はこのまま本を読むことにした。
そしてそんなことが続いて一週間。遥花から一緒に御飯を食べないか、と誘われた。
(誰も来ないといいんだけど)
遥花の所属している生徒会広報部の部室に行くと、そこには案の定広報部のメンバー5人が待っていた。ちなみに、メンバーは遥花、七海 柊(ななみしゅう)、綾瀬 翔(あやせかける)、神楽 葵(かぐらあおい)、如月 雫(きさらぎしずく)の五人である。
(あーやっぱり)
部室の端に座る。遥花の話を聞く。
「でさ、最近やっぱり加藤さんがさ、嫌がらせされてんだよね。」
「あーやっぱり?」
(あーあ、よく考えて動かなきゃ)
こうなることはわかっていた。ただ、進言してあげるだけの優しさはなく、人と接することへの怖さが私が動くことを拒否した。[そういうこと]の恐ろしさは一番良く知っている。今の私は強い。だからいじめられることはない。ただ、止めることはできない。怖いから。両親ですら、本当の家族とは言いづらいほど分厚い壁がある。遥花ですら一線を引いて接している。
「まーひどくならなきゃいいけど」
なるだろう。だって加藤さんは友達がいない。だから文にしがみつき続ける。一緒にいる限りどんどんひどくなるだろう。
「まーねー。総務部に上げるほどではなさそうだし。今の所は。」
「うん。まあひどくなったり続くようなら総務部に上げるか。」
このあと遥花は注意するだろう。でもそうしても見えないところでひどくなるだけだ。逆効果だ。人のことには干渉しない主義なので何も言わないが。
そしてその後たまたま教室にいた華夜乃がブチギレてことはすべて収束した。―しばらく華夜乃は鬼山さんたちに恐れられることとなるが、それはまた別のお話。