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■■■■■の犯罪4
夜の静まり返ったオフィス街。OLの田中美咲は、ヒールの音を響かせながら駅へと急いでいた。背後には、スマホで熱心に話し込みながら一定の距離を保つ男(生田)の姿。
「あ、マジで? それはヤバいな……」
生田の独り言のような話し声(演技)は、深夜の道において不自然な静寂を消し去り、美咲の警戒心を巧みに解いていた。
前方の街灯の下、スーツ姿の男(田中、整形済み)がうろたえた様子で膝をついている。足元には中身が散乱したビジネスバッグ。
「ああっ、最悪だ……」
美咲が通り過ぎようとしたその時、田中が情けない声で呼び止めた。
「すみません……! 風で大事なUSBとコンタクトケースが、あっちの植え込みの方に転がっていっちゃって。スマホのライトで照らしてもらえませんか?」
指差されたのは、ビルの隙間にある、防犯カメラの死角となる暗がりだ。美咲は一瞬躊躇したが、彼の清潔感のある風貌に毒気を抜かれ、「あ、はい」と足を向けてしまった。
美咲が暗がりに足を踏み入れ、スマホのライトを植え込みに向けた瞬間、背後で生田の話し声がピタリと止まった。
異変を察知して振り向こうとした彼女の視界を、強烈な光が遮る。田中が至近距離でスマホのライトを彼女の顔に向けたのだ。眩暈にひるんだ隙に、背後から田中の太い腕が彼女の口を塞ぎ、路地の奥へと引きずり込んだ。
「……この時を待っていたよ。片時も忘れずにね」
田中の声は、先ほどまでの卑屈なトーンとは別人のように冷え切っていた。美咲の脳裏に田中が蘇る。
「………あなたなの…?」震える声だ。
生田が手慣れた手つきで、彼女の首筋へ音もなく細い針を突き立てた。高濃度のカリウム製剤。
「これは、君が奪った田中の大切な時間と同じ。ゆっくりと、でも確実に止まるよ」
数秒後、美咲の視界は急速に狭まり、手足の力が抜けていく。彼女が最後に見たのは、無機質に赤く光る、自分たちを「見ていない」防犯カメラのレンズだった。
十分後。
路地から出てきたのは、酔い潰れた同僚(に見える美咲)を肩に担いだ二人の男だった。
「飲みすぎだって、美咲さん。家まで送るからさ」
田中は防犯カメラに向かってわざとらしく声をかける。生田は傍らで再びスマホを耳に当て、「あ、もしもし? 今、酔った子を介抱してて。少し遅れるわ」とアリバイの音声を夜の空気に刻みながら、彼女を自宅へと運んでいった。
翌朝、田中美咲は自宅のベッドで「静かな心不全」として発見される。
枕元には、飲みかけのワイングラスと、彼女が服用していたはずのないサプリメントの瓶。
警察の検証結果は、事件性なし。「過労による体調不良と、アルコールの併用による不慮の事故」。
復讐は、成功した。だが、田中は怖い顔をして生田が待つ漫画喫茶へ向かっていた。
ついにやったよこいつら!うわああああ!
(佐野駅は実在するけど関係ないからね!)