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おうじょさま
夜空のような髪、秋空を吸い込んだような瞳、雪のように白く、陶器のような肌。華奢な体と裏腹には、強い志を持っている。
今日も、綺麗だなぁ。クロアは。絵を描く無邪気な姿や、本を読み解く姿はある威厳を持って、思い出せる。
その姿を、僕に向けていった言葉を、一字一句、間違わずにだって。
頬の赤みから、目元、輪郭、しなやかな指先、みみのかたち。それらを完璧に思い出せる自信がある。
僕にとってのクロアは、ゴッホにとってのひまわり、ワイラーが探したオードリー、神が選んだジャンヌ。とにかく、素敵なんだ。
ベットうつ伏せのクロア。顔だけあげて、そっときかれた。
「どうしたの、ラピ、暇なら庭へ行かない?」
「なにするの?」
「肌を焼くの」
「なんで?」
「みんなと同じになろうかなって」
僕はその言葉に、悩まされた。クロアは白人であるのだから、なかなかに浮いてしまう。でも、そんな雪みたいな肌だって、とってもきれいなのに。
「僕はありのままが好きだよ」
「…そぉ」
ぽふっと音を立てて顔を沈めるクロア。僕は知ってる、知ってる。クロアがほんとは嬉しいことだって、知ってる。うまく秘密を隠せない、そんな抜けた王女様が、かわいらしい。
そして、僕に気を許してくれること、いつもの演説中や、隣国の宰相と話すときや、城での会議、あの真面目な顔、キリッとした、ほんとの王女様。
どこにも抜け目がないような、厳しい表情。僕の前では、疲れ切ってたり、ぐてりところがってたり、ただただくっつきまわってきたり。そこも、可愛い。
うつ伏せの黒髪を指でくるくると回すと、ばっと顔をあげる。
「何」
「なんでもない」
やっぱり君は、王女様は、きょうもかわいい。