公開中
第1章:春の目覚め《アンドロメダの記憶》
春の風が、静かに吹いていた。 草原には花が咲き、木々は芽吹き、命が目覚めていた。 だが、空はまだ沈黙していた。 星霊の声は、遠く、微かにしか聞こえない。
ルミナは、祠へ向かっていた。 アンドロメダの祠――かつて囚われの姫が星霊となった場所。 彼女の記憶が、最初にルミナを呼んだ。
祠は朽ちていた。 石は割れ、苔に覆われ、誰も訪れた形跡はなかった。 だが、ルミナの瞳には、星の欠片が見えていた。 微かに輝く光が、祠の奥に眠っていた。
彼女は手をかざす。 星霊の記憶が、彼女の心に流れ込む。
「私は囚われていた。 運命に、王に、神々に。 だが、私は抗った。星に願った。 私の力を、誰かの希望に変えてほしいと。 その願いが、星座となった。 だが今、私の記憶は封印されている。 あなたが、私を解放してくれるのか?」
ルミナは目を閉じた。 彼女の心に、希望が灯る。 それは、誰かのために祈る力。 それは、星霊と共鳴する感情。
「私は、あなたの願いを受け取った。 あなたの希望を、空に戻す」
その瞬間、祠が輝いた。 星光が空へと昇り、夜空にアンドロメダ座が戻る。 星霊の声が、再びルミナに語りかける。
「ありがとう、星読の巫女。 だが、旅は始まったばかり。 他の星霊たちは、まだ眠っている。 彼らの記憶は、痛みと怒りに満ちている。 あなたの心が、試されるだろう」
ルミナは静かに頷いた。 春の風が、彼女の髪を揺らす。 空白の星座を巡る旅が、今始まった。