公開中
第二話 術師たちは動き出す
今回は特級たちの会議です。憂太が上層部にブチギレてます。女性のオリキャラが出ます。恋愛的に誰かと絡むことはなく、潤滑油的なものです。
コーヒーの入ったカップに、砂糖が4,5個入っている。
「…先生、砂糖入れ過ぎじゃないですか?」
特級術師の乙骨憂太は五条悟に声をかけた。
「糖尿病にならないように気をつけてくださいね」
「大丈夫」
五条は親指を立て、コーヒーに口をつけた。
「やっぱもう一個だったわ」
「君は相変わらずだね、五条君」
「あ、おひさ〜」
聞き慣れない声がして乙骨が顔を上げると、アメリカ人のようなスタイルの金髪の女性が立っている。
「…あなたが九十九由基さんですか?」
「そうだよ。君は乙骨憂太君だろう。」
「ええ、よろしくお願いします」
人懐っこく笑った乙骨に、九十九は面白がるように微笑み、口を開いた。
「して、乙骨君。君はどんな女がタイプかな?」
「…ええっ!?た、タイプ…?と、とりあえず…お座りください…」
「ああ、悪いね。それと、男でもいいよ」
乙骨に促されて、九十九はとりあえず椅子に座る。
「………ちゃんと自分の意志がある人です…」
「そうか。いいじゃないか。少しつまらないがね。ありがとう」
「はい…」
「それで、今日の本題は何かな?」
乙骨が笑顔のまま話し始める。
「まず、九十九さんにお越しいただいた原因は、大きく言うと虎杖悠仁の盛岡での大量殺人事件です。」
「…あぁ、ニュースで見たよ。宿儺の器の子だろう」
「あ、そうです!…虎杖君が大量殺人をしたっていう事実はあるんですけど、犯行時、虎杖君の体は宿儺のものだったんです」
「………そうか」
九十九が目を細めた。
それだけで大体の状況を察したらしい。
「お分かりかもしれませんが、虎杖君は自分が殺していないにも関わらず、今世間からバッシングを受けています。…その上、呪術界の上層部はここぞとばかりに虎杖君の執行猶予を取り払い、死刑をすぐに執行するよう言った。」
乙骨の口の前で組んだ手に力がこもる。人懐っこそうな笑みが、すっと冷徹な笑みに変わる。
「…クソだとは思いませんか?あの腐ったミカン共、ボケて善悪の判断すらできなくなってやがる」
「…ほう」
思った以上の乙骨の怒りに、九十九は面白そうに微笑む。
乙骨を制止し、五条は九十九の方に向き直った。
乙骨はハッと我に返る。
「すみません」
「別にいいさ。それだけ本気なんだろう」
「そんで、いくらバカで腐ったミカンでもあいつらは一応上層部のお偉いさんだ。実力が認められてる…悪く言えばめんどくさがられてる|僕ら《特級》がなにかアクションを起こさなきゃ現実は変わらない。なんとか悠仁を無罪にしてあげられるよう、九十九さんにも協力してほしいってわけ。もう裁判は決まってる」
「なるほどね。具体的には?」
「基本的にはなんか聞かれたらうまく口裏合わせといてっていうのと、九十九さんが日本にいる間は悠仁関連で戦闘になったら呼ぶかも。あとは、僕と憂太と交代制で悠仁の監視かな。今のところ戦闘員で仲間が僕と憂太しかいなくてさ」
「…監視?宿儺が暴れる可能性があるのかい?」
「……いや、今悠仁の精神状態はかなりやばい。あれは、気ぃ抜いたら自殺するよ。…どしたん」
「…そうか。いや、特級の力をだいぶ大胆に使うなと思っただけさ」
九十九はくつくつと笑い、乙骨と五条を見据えた。
「…乗ろうじゃないか。私も、あいつらのやり方に不満がないと言ったら嘘になる」
「ありがとうございます!」
乙骨がぱっと笑顔になり、九十九に頭を下げる。九十九は乙骨に対して微笑みながら言った。
「ああ、一緒に頑張ろう。あと、仲間を増やしたほうが良くないかい?」
「それは僕も思った〜。でも、上と繋がってない人で悪い事できて、僕らにビビって逃げない、しかも戦闘員ってなるとあんまいないよね。時間かけて口説いてる暇もないし」
五条の言葉にふたりとも納得する。
全員が一瞬黙る。
「その話、|妾《わらわ》も協力しようじゃないか」
不意に、部屋に女性の声が響く。
思わず全員がその方向を向くと、そこには三十代半ばの呪術師が立っていた。
憂太は心底驚いたような顔になり、五条はふっと笑った。
「入るならひと声かけてくれって言ったでしょ」
「|斎《いつき》さん!聞いてたんですか?」
「ああ、聞いていた。それにしても不用心だな、妾が入ってくる恐れがあるのに結界を張らないとは」
「…誰だい?」
「特別一級の|天城《あまぎ》斎だ、もともと弁護士をしていた。よろしく」
「斎さんはフリーの術師で、たまにコーチとして僕達のところに教えに来てくれることもあるんです。」
「そうか。それで、なぜ入ってこれたのかな?」
五条が笑みを浮かべたまま話し続ける。
「天城の術式は透過と分析。分析はいいんだけど、透過の方がちょっと面倒でね。姿を消してものをくぐり抜けるんだけど……軽い結界なら無視して入れる。だから、僕らぐらいのが作った結界がないと普通に入ってきていつの間に話聞いてたりする。安心して、モラルはちゃんとしてるから、聞かないほうがいい話と判断したら部屋に勝手に入ってきたりしないさ」
「ああ、妾の行動源は侠気だからな」
九十九が「へ〜、道理で奇妙な呪力があったわけだ」と言いながら天城に向き直る。
「それで、天城さん。君はどんな男がタイプかな?もちろん女でも結構さ」
「君、面白いな。そうだな、金目当てじゃなくちゃんと妾を見る男だよ。」
「…いいね、そういう女は嫌いじゃないさ」
「それはいいが、まず君も名乗ってはくれないか」
「ああ、すまないね。特級の九十九由基だ、よろしく」
「…よろしく」
天城はふっと笑い、全員を見回した。
「本題に戻るが、その虎杖悠仁の件、妾も協力しようじゃないか」
「それはありがたいんですけど…何か理由があるんですか?」
「盗み聞きの宿命さ。義理は大切にしないとね。」
五条がふっと吹き出す。
「まだ言ってたの?義理だの侠気だの」
「君だって、生徒思いは変わらないじゃないか。というか、久しぶりのような事を言うな。結構最近会ったろ。それに、虎杖君を担当する弁護士…ちょっと顔なじみなんだ」
「あ、弁護士ももう決まっているのかい?」
「そだよ〜」
「なんていう方なんですか?僕まだ名前聞いてなくて…」
天城は歯を見せてニヤッと笑った。
「日車寛見。妾の古い友人で、誰よりも正しい男さ」
読んでくださってありがとうございます。斎の階級を特別一級としたのは、特別一級の定義は高専は出ていないけど一級相当の実力がある人とのことだったので特別一級としました。別に禪院家縛りではないみたいです。個人的に侠気って言う言葉好きです。憂太があの感じで上層部嫌いなのかわいいです。三話もぜひ読んでください。