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王道ラブコメってこんなんだっけ…?
命空‐meiu‐
初投稿ですので温かく見守っていただけたら幸いです。
「うわぁぁぁぁ!!!」
自分の叫び声が、静かな朝の住宅街に響き渡る。
完全に遅刻だ。
新学期の初日から大寝坊をかました私は、トーストをくわえたまま全力疾走していた。
高校二年のスタートなのに最悪の幕開け。
そう、最悪のはずだったのに――。
曲がり角を曲がった瞬間、私は信じられないくらい綺麗な男の子とぶつかって、派手に転んだ。
夕日に透けたような、吸い込まれそうな瞳。
最悪の出会い。
だけど、心臓がうるさいくらいに跳ねていた。
新学期の春は、恋をした。
もしかしてこれって曲がり角で超がつくほどの転校生イケメンとぶつかって…ってやつ?!
――なんて、乙女チックな妄想|妄想《もうそう》に浸れたのは、ほんの一瞬だった。
「て、てて、敵の襲撃か……っ!? 待て、一般人は下がっていろ!」
ぶつかった男の子、|香野光永《かのひなた》は、慌てて立ち上がると、背負っていた大きな袋から現実離れした漆黒の大剣をジャキィィン!と引き抜いた。
その視線の先、私のすぐ後ろの影から、ドロドロとした異形の|怪物《モヤモヤ》が這い出てくるところだった。
光永は額に汗を流しながらも、私をかばうように大剣を構え、不敵に微笑んで言った。
「ねぇ知ってる? この街、油断してるとすぐに死んじゃうんだよ。……ここは俺が食い止める、お前は早く逃げろ!」
「……はぁ」
私は大きなため息をつき、膝の泥を払った。
そして、くわえていたトーストをパッと手で掴む。
「あーあ。お母さんが焼いてくれたせっかくの食パンが、砂まみれ。……ちょっとアンタ、邪魔だからどいて」
「え? おい、何を――」
光永が振り返るより早く、私はスッと右手を振り抜いた。
|掌《てのひら》から放たれた目に見えない衝撃波が、光永が大剣を構えて冷や汗を流していた怪物を、正面から木端微塵に消し飛ばす。
ドンッ!という風圧と共に、怪物は一瞬で塵になって消えた。
カッコつけて大剣を構えたまま、光永は開いた口が塞がらない。
「え……あ……?」
私はパンの砂をフーフーと息で払いながら、|呆然《ぼうぜん》とする彼を睨みつけた。
「*ソレ**、アンタが引き寄せてるのよ。新学期早々、変なもの連れてこないでよね、香野くん」
「な、なんで俺の名前を……っていうか、お前、今何をしたんだ……!?」
「何って、お掃除だけど? あと、アンタのブレザーの胸ポケット、名札見えてる」
私は冷たく言い放ち、まだ半分残っているトーストを齧りながら、再び学校へと走り出した。
「ま、待ってくれ! 俺は香野光永! お前は!? なぁ、さっきの技どうやったんだ!弟子にしてくれ!!」
後ろから必死に追いかけてくる光永の声を無視して、私はスピードを上げる。
新学期の春。私は恋をした。
……いや、前言撤回。
「私は|浅野波支奈《あさのなみしな》。弟子なんて取らないから、ついてこないで!」
「えっ、弟子にしてくれるまで毎日つきまとうからな!」
私の平穏な高校生活は、どうやら今日、木端微塵に吹き飛んでしまったらしい。
(おわり)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
これを読んだあなたの退屈な日常も、ちょっとだけ吹き飛びますように!!!