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地震の中、君達と出会った①
グラリ、と視界が歪んだ。
緊急地震速報の不協和音が街に響き渡る。
「……っ、よりによって今?」崩れゆくビルの外壁。逃げ惑う人々。
そんな喧騒の真ん中で、ちぐはは立ち尽くしていた。
乱れた髪すら芸術品のような、見る者を平伏させる「国宝級」の美貌。
しかしその瞳には、恐怖ではなく、ただ状況を静観するような冷ややかさがあった。
そこに、3人の男たちが駆け寄ってくる。
「おい、お前! 危ないだろ、こっちこい!」鋭い声で叫んだのは、踏分誠一だった。
彼はちぐはの腕を強引に引き、安全な柱の影へと押し込む。
遅れて、無表情な青年・神柴健三と、気だるげに目をこする少年・恵美まどかが追いついてきた。
「……まどかさん、お怪我はありませんか?」
「眠い……。地震とか、重力に逆らうエネルギーの無駄遣いだよ……」安全が確保された直後、誠一がちぐはを睨みつける。
「おい、お前。死にたいんか? あのままじゃ下敷きやったぞ」
「……助けてなんて、頼んでない」ちぐはは短く答えた。
本当は心臓が口から出そうなほど鼓動しているのに、不器用な彼女は、感謝の代わりに精一杯の虚勢を口にしてしまう。
「……はぁ? なんやその態度は。こっちは命がけで——」
「誠一、やめなよ。その人、ただのパニックで脳がフリーズしてるだけ。……それに」まどかが、じっとちぐはの顔を覗き込んだ。
「……その顔。記録(ログ)にないレベルの造形美。……健三、これ保存案件じゃない?」
「……確かに。ですが、まどかさんを差し置いて目立つ不届き者です。非常に不愉快ですね」健三は冷徹な眼差しをちぐはに向ける。
命を救われたはずなのに、彼らのちぐはに対する第一印象は「高慢で生意気な美女」。
そしてちぐはもまた、彼らを「デリカシーのない連中」と定義した。
「……二度と、関わらないで」砂を払もちぐはが立ち去ろうとしたその時。
再び、大きな余震が街を襲った。
バランスを崩したちぐはの身体を、三人の手が、無意識に、そして同時に支え——。