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35.
「いい動きだったけどね、いつもの無鉄砲さがなかった」
「実質1対4でしたから、大健闘です」
シャルムと美音はそう言ってくれる。
けど―――
(|私の父親《魔王》は、多分もっと強い)
みんなが弱いわけじゃない、あいつが強すぎるだけ。
西魔界の誰も反発できない。他の地域の魔王も手を出さない。
その理由は、圧倒的な力。
誰も手出しできない独裁者がいるから。
私が戦えているのも、きっとこの家系だからだ。
普通の家に生まれていれば、ここまでの能力は手に入らなかった。
だから、責任を持って私が終わらせるんだ。
「お姉ちゃんなら大丈夫だよっ! 絶対勝てるもん!」
「そうだね、私達ならきっとやれる」
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そのあとは、リブレ村にみんなであいさつ。
昼食を食べさせてもらえることになり、
デュマンさんが待つ村長宅へお邪魔することに。
「そうですか、あの魔王を・・・・」
何かあいつに思うことがあるみたい。
「私からは何も申すことはございません、ただ―――」
「一筋縄ではいかない、ということはご承知おきください」
私達は力強く頷く。
「もちろんです。それでもやるしかないので」
デュマンさんは、私の目を見て納得したように微笑む。
「あなた達なら、きっと大丈夫です」
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「武器屋さん、いますかー?」
そう問いながら、ドアを開けて中へ入る。
「あぁ美音たちか。昨日完成させたんだ、見てみろ」
そこにはあの設計図と同じ形をしたランタンがあった。
「すごい! 武器屋のお兄ちゃん、これ使っていいの!?」
「もちろんだ、ほら持ってみな」
朱里ちゃんが手に持つと、周りのオーラが少し薄れたような気がした。
周りにいた幽霊が、ランタンの中に収まっているんだ。
「これでも『覇霊』は使えるんですか?」
美音は疑問を投げかけた。
「おそらく発動できるはずだ、不安なら試してみるといい。」
私達は外に出て、開けた場所へと進む。
「『中級地魔法 |地魔刀《テールエペ》』」
この技で作ったナイフは、土で作られたものもあればダイヤで作られることもある。
つまり、ランダムってこと。
生み出したナイフから土でできたものだけを朱里ちゃんに飛ばす。
これなら『覇霊』が発動しなくても怪我はしないはず。
「わぁ、すごい! ちゃんと使えてるよ!」
杞憂だったみたい、前と同じように攻撃が逸れてる。
これなら十分すぎるほどに戦える。
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「もう一週間を切った、今日で模擬戦はラストにしてそのあとは自主練にするよ」
美音が用意したくじ引きの結果、私と美和さん、朱里ちゃんとシャルムがそれぞれ戦うことになった。美音は星奈さんを連れてくるらしい。
「それじゃあ始めるよ」
今回は明確なスタートの合図はない。攻めるのも守るのも自由だ。
「『神降 月影乱舞』『神降 |月光銃《ルナ バレット》』」
そのとき私がふらっと重心を崩したように思えた。ただ、痛みはない。その代わりに腐卵臭と耳鳴りが私を襲う。美和さんの技だ、意外と性格が悪いことをしてくる。
「その状態では避けれぬだろうな。我の勝ちだ」
「『上級闇魔法 影潜』」
間一髪で影の中に隠れることができた。でも、美和さんは本気だ。私が太刀打ちできるか怪しい。今も、外では弾丸が不規則に飛んでいる。
「美咲、我はな。その技の攻略法がわかっておる」
美和さんは私の影の上にたった。
「そなたが出てきた瞬間に技を打ち込む、『神降 新光の断行』」
きっとエネルギーの塊みたいな光があたりを包んでいる。
ただ、私には関係ないよ。
「『能力創造 存在を操る程度の能力』」
魔界に潜入したときにも使ったもの、多くのものをすり抜ける事ができる。
「命知らずだな。『神力解放』」
私が目の前に現れた直後、それは放たれた。天変地異が起きたと思うような大地の轟き。地面を刺す光の数々。それらは私の体を通り越し、草木に着地する。
「じゃあ、美和さん。続きしよっか」
私の様子を見て、彼女は口を半開きにしたまま目を見開く。
「―――そなたは面白いな」
どこか納得したように頷き、こう吠えた。
「だが、その程度で我を超えられると思うな!」
「『神降 |無慈悲な世界《クルーエル ワールド》』」
神々しいを通り越して、もはや禍々しいまでの力を放つ剣が降る。地面に刺さるたびに亀裂が走り、岩が砕け散った。私が得意な近距離戦も、近づけないせいで意味がない。
「道がないなら、生み出すしかないよね。『上級闇魔法 |闇吸花華《ナイト フラワー》』」
攻撃なんてあたらなければどうってことない。剣を宵闇が包んで、溶かしていく。
「『神降 月華神威』」
美和さんがレーザーを出した。いつもは頼りになる技だけど、今だけは恨めしく思う。
「『中級雷魔法 雷神の加護』『中級零魔法 |小規模爆発《スモール エクスプロージョン》』」
真下で爆発させると、私の体は天高く舞い上がった。
「『中級闇魔法 |幻刃《トリックナイフ》』『妖刀』」
斬撃を蹴って加速する。これできっと勝てるはず。
「美咲は我を舐めすぎだ。」
加速して威力が増した攻撃を、彼女は当たり前かのように受け止めている。しかも、素手で。私は刀で、本気で勝ちにいった。それをいとも容易く受けてしまう美和さんの涼し気な顔を見ると、実力差を感じざるを得ない。
「『中級雷魔法 放電』」
美和さんが私に蹴りをいれる寸前に、電気が触れた。それでも勢いは収まらず、私は吹っ飛んで木に打ち付けられた。これでも手加減されてると思うと恐ろしい。
「うわ、背中から嫌な音がなった気がする」
体の痛みに顔をしかめつつも、上からの剣を処理する。
「お嬢様方、お時間になりました」
気づかぬうちにかなりの時間が過ぎていたらしい。
「次はシャルムと朱里ちゃんだね。どっちも応援してるけどやっぱりシャルムに勝ってほしいな」
「私だって成長しましたから、見ていてくださいね」
普段からは想像もできないくらい、自信満々に彼女は告げた。
戦闘シーンが書きたくて始まった模擬戦。
あと5話か6話で完結するから、最後までついてきてほしい。