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    冷
    
    
    
    私は冷たい。
それは、体が鉄でできてるからなのか、血が通ってないからなのか。
よく分からないですが、とにかく冷たいです。
温もりも何もないと言われ、いつしか周りには誰も居ませんでした。
ロボットだけど、寂しいです。
少し暗い中、フラフラと歩いていると、枯れた木の下で雪だるまと出会いました。
特に会話をする訳でもなく、ただ同じ空の同じ星を見ていました。
何もない時間でしたが、なぜか落ち着きました。
それから時々会うようになりました。
一緒に何かを食べたり、どこかへ行ったりすることもなく、最初に出会った場所で過ごすだけでした。
それでも、雪だるまと会ってから、少し楽になった気がしました。
ある日、雪だるまの近くには子ども達がいました。
子ども達と一緒の雪だるまは、どこか楽しげでした。
私はそれを見て、しばらく会うのをやめてしまいました。
嫌いになった訳ではなかったけど、心も体も、雪だるまに会おうとはしませんでした。
一人で泣きました。
理由は分かりませんでした。
段々と夜が短くなってきて、無意識にあの木の下へ向かっていました。
何となく、嫌な予感がしたからかもしれないです。
着くと、雪だるまは少し溶けかけていて、泣いていました。
どうして泣くのと訊くと、一度も抱き締められたことがないと言いました。
木の枝の口は止まったままでも、そんな声が聞こえました。
人は温かくて、自分が溶けてしまうからと。
でも、結局はこうして溶けてしまうのだから、気にせず触れてほしかったと。
気づけば、私は雪だるまを抱き締めていました。
私は冷たいから、あなたを溶かすことはない。
そう言っても、雪だるまの涙は止まりませんでした。
私も溢れていました。
雪だるまの体は私よりも冷たく、色も段々と薄くなっていきました。
それでも、抱き締めることを辞めませんでした。
足元に、水溜りが広がっていきました。
それには色んなものが混じっていました。
最後に、小さくありがとうと聞こえた気がしました。
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次の日、その木は綺麗な桜を咲かせていました。
おそらく、雪だるまからのお返しでしょう。
私も心の中で、ありがとうと言いました。