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妖怪リブート【第一話】
みどりもも
宮下あおい、高校二年生。白いシャツに黒いネクタイという至って普通の制服に身を包み、前髪を少し長めに残した黒髪の少年。
周囲からは「いつも物静かでちょっとクールな奴」だと思われているが、その実態は、寝ても覚めても怪異のことしか考えていない、重度の妖怪オタクである。しかし、中学の頃に妖怪の魅力を語って変人扱いされたトラウマから、その想いは学校では絶対に表に出さないと誓っていた。
キーンコーンカーンコーン――。
待ちに待った放課後を告げるチャイムが鳴り響く。あおいは素早く荷物をまとめ、いつもの友人と一緒に校門をくぐった。西日に照らされた帰り道、並んで歩いていた友人が、スマホの画面に目を落としたままふと口を開いた。
「なあ、お前。妖怪って信じる? 今ネットのオカルト掲示板でさ、謎の怪奇現象が妖怪の仕業じゃないかってプチバズしてんだよ」
「し、信じてないよ? 根拠ないしな」
心臓がドクンと跳ね上がったのを隠し、あおいはわざと冷淡さを装った声で短く返した。
「(……本当は信じきってるどころか、家では毎日妖怪の発生起源を調べてるのに! でも、また絶対にバカにされるんだろうな……)」
激しい自己嫌悪に陥りながら友人と別れ、夕闇が迫りつつある寂れた路地裏へと足を進めた。その瞬間だった。あおいの背中に、ゾクリとするほど冷たい風が吹き抜けた。かと思いきや、風と同じくらい冷ややかな声が響く。
「……ねえ、君、本当に妖怪って、信じる? 信じない?」
あおいは弾かれたように振り返った。夕暮れの細い道、赤黒い影が伸びるその先に、一人の少女がぽつんと立っていた。自分と同い年くらいの黒髪ぱっつんで、白装束に紫の羽織、足元はなぜか現代的な編み上げのブーツを履いている。何より、その足元はほんの少し透けていた。
「私は『灯(ともり)』。妖怪みたいなものだけど」
「よ、妖怪!? 本当に、本物の妖怪なのか!?」
オタクとしての本能が嘘をつくことを拒絶し、あおいはついに本音を白状した。
「……う、うん……実を言うと、めちゃくちゃ信じてる……かな」
灯はほんの一瞬だけ意外そうに目を見開くと、すっと白い指先を立てた。その先にポッと淡い光が灯り、怪しく揺らめく青紫色の「人魂」へと変化して、あおいの周りをグルグルと回り始める。頬をかすめる空気は冷たく、不思議なエネルギーを帯びていた。
「す、すごい……!!」
生まれて初めて本物の妖怪に出会えた感動で、あおいの身体がプルプルと震え出した。驚かないあおいを不思議そうに見つめながら、灯はふうと小さくため息をつく。
「驚かないんだ。変なの。⋯⋯今ね、こういう妖怪は、どんどん世界から消えてきているの。妖怪は人間の想像力や噂から生まれるから、忘れ去られると存在が消えちゃうんだよね」
現代人はスマホばかり見て怪異に気づかない。だから灯たちの存在は消滅の危機に瀕しているのだ。
「でも、逆に思い出されれば、その数だけ復活する。私は妖怪の存在を取り戻したいの。まあ、君みたいな人がいてくれただけで、少しは希望が見えたかな」
灯は背を向けて立ち去ろうとした。その華奢な背中を見た瞬間、あおいの熱い想いが一気に決壊した。
「なら……!! 妖怪を復活させるの、俺にも手伝わせてくれよ!」
「⋯⋯はぁ?」
灯が体を揺らして振り返る。
「俺のことをただの高校生だと舐めてもらっちゃ困る! たとえ世界中の誰もが覚えていなくたって、俺が、俺だけは絶対に覚えてるから!!」
一気に早口でまくし立てるあおいの気迫に、灯は怪訝そうに、でも無表情のまま淡々と言い放った。
「……要するに、ただの妖怪オタクの変人ってことだね。でもいいや、そこまで言うなら協力して」
「な、そんこと言わなくても⋯⋯」
あおいがガクッと項垂れ、再び顔を上げた瞬間――。
夕闇の路地裏には、すでに灯の姿も、怪しい人魂の光も消え去っていた。
だが、手のひらに残るあの冷たい風の感触だけは、決して夢なんかではないと、あおいに強く確信させていたのだった。
初めて小説投稿します!めちゃくちゃ頑張りました⋯!
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