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あなたに一つの贈り物を、そして溺れるほどに深い愛を。
これは本編とは少し違う、また別の世界線の物語__
夏ちゃん、美那、瑠依…
もう話せない
話したい
けど、こわい
今まで
『優等生』
『接しやすい女』
を演じてきた。
何を言われても平気で、笑っていられるように。
でも
夏ちゃんに
答えにくいことを聞かれて
答えられずに、とっさに逃げてしまった。
そこからは
気まずくて、美那とも瑠依とも話せなくなって。
ただただ、時間だけが過ぎていった。
いつしか、学校で顔を合わせるのさえも嫌になって
引きこもるようになってしまった。
ある朝
思ったんだ
生きる意味 ってなんだろう、って
考えてみたら、思い浮かばなかった。
いくら悩んでも、いくら考えても
生きる意味 だけは思い浮かばなかった
思ったんだ。私は結局、嫌われないように愛想笑いを浮かべてた、ただそれだけなんだなって。
生きる意味もなく、友達も失い、帰ったら帰ったで親に八つ当たりされる。
正直もうしんどかった。
貼り付けていた笑みさえも
はがれかけていた。
そんな時
奏多が私に言ったんだ。
「生きる意味がないなら、僕が作ってあげる。泣けないなら、ここでいっぱい泣けばいい。しんどいなら、いくらでも、いくらでも話を聞く。
美咲と過ごす、一秒一秒が僕にとっての宝物。美咲と話す時間が、僕の生きる意味。
美咲は、今までどんなことが楽しかった?どんなことが辛かった?全部、僕に吐き出しちゃいな」
って。正直すこしためらった。
奏多に知られたらどう思われるかなって想像して怖くなったのと、単純に奏多に心配掛けたくなかったから。
けど奏多は
「遠慮しなくていい
言いたくなかったら、無理に言わなくても全然大丈夫だから
たとえ美咲が何と言おうと、僕は美咲のことを嫌ったりなんてしない。大丈夫だよ」
そう言ってくれた。
奏多の言葉が少し背中を押してくれた気がした。
勇気を出して、今まで思っていたこと、我慢していたこと、ぜんぶ、奏多に言った。
「…仲良しだった子達の愚痴を違う子から聞かされて辛かった。
裏で陰口を言われててしんどかった。
嫌な事を無理やり押し付けられてきつかった。
それでもずっと笑い続けなきゃいけなくて
優等生続けなきゃいけなくて
ほんとはずっと
くるしかった…」
この言葉を奏多は
笑いもせず
ただ真剣に
この話を聞いてくれた
「よく今まで…頑張ってこれたね
えらいよ、美咲。
今まで美咲が苦しんだこと、全部僕が楽しい思い出に塗り替えてあげる。
最後に笑えるように
僕が最高の思い出を
作ってあげる」
慰めて、支えてくれた。
奏多のこのさりげなく言った言葉が
私には
心強いお守りになっていた…
---
「みーさき!これ、あげる!」
「んー?…これ…もしかして…」
「へへ、僕たちの小さいころの写真!」
「夏ちゃんも…」
「見つけたんだー!
…ほんとは仲直りしたいんでしょ?美咲。
ほら、行ってきなよ」
「でも…」
「ほんとの気持ちを言えば、必ず、思いは伝わるよ
それに
後で後悔しないようにも…ね
…ほら、何事も早いほうがいいって言うし!」
「…うん。行ってくる」
---
「夏ちゃん!!」
「美咲ちゃん…」
「あの時はほんとに、、、」
「美咲ちゃん、ほんとにごめん!美咲ちゃんの気持ちも考えずに私…」
「大丈夫。私もごめんね」
「美咲ちゃん、遠慮しないで、全然自分の気持ち、言ってもらっていいからね!!!むしろそっちのほうが私嬉しいし!!」
「…ありがと…夏ちゃん…」
「うんっ!」
---
「美咲」
「どうしたの、奏多」
「美咲っ!僕と…本物の家族になってくれませんか!」
「え、どうして…」
「それは…美咲のことが __好き…__だから…」
「え?なんて?」
「美咲のことが好きだからっ!!」
「…へへ…
私も、大好き…」
「美咲っ!!
へへ、これからはずっと、美咲の隣にいるからね!」
「うん…!!」
「美咲、これどーぞ!」
「これは…ガーベラ…?それに4本…
…も〜…ずるいよ、そんな不意打ち…」
「んー?よく聞こえないなぁw」
「もー!!」
「へへっ…これで一つ、思い出ができたね
これからずっと、ずっとずっと、一緒に居ようね」
「もちろんっ!」
「ねぇねぇ、アルバム作ろうよ。一緒に何かしたときとかに写真撮ってさ!
ほら、アルバム1枚目記念に写真撮影しよ?」
「え、今!?」
「今!!」
パシャ
「美咲と恋人になってから初めてのデート!」
「もー恥ずかしい…」
「ほら、写真とろっ!」
パシャ
「奏多、ハッピーバースデー!」
「ふふっありがと〜!」
パシャ
「「メリークリスマス!」」
パシャ
「「3,2,1…あけましておめでとー!」」
「恋人になってから初めての年越〜!」
パシャ
「美咲、たんじょーびおめでと〜!!」
「ありがと…!」
パシャ
「恋人なってから1周年記念日!」
「1周年記念日…?」
「つまり1周年ってこと〜!」
「…美咲、一つさ、約束しようよ」
「ん〜?どうしたの急に」
「今まで作った思い出を、これから作る思い出を、一生忘れない、ってこと!」
「わかった」
「じゃあじゃあ!ほら、1周年の記念の写真撮るよっ」
パシャ
「美咲、ついに…
僕たちの結婚式だよ!」
「も〜…大きな声で言わないで、恥ずかしい…」
「美咲が可愛いせいだから仕方ないっ!」
「可愛くないしっ」
「可愛いも〜ん」
パシャ
---
アルバムは
結婚式の写真で、終わっていた。
奏多は
病気で亡くなった。
突然のことだった。
実はほんとは
結婚式の時にはすでに余命宣言がされていた…らしい
遺書には、こう書いてあった
先に逝ってしまうことを、どうか許してください。
そして
病気のこと
伝えてなくて、ごめんね
心配掛けたくなかった
普通に楽しく過ごしたかった
こんな僕の我儘に付き合ってくれて
ありがとう
と。
悲しかった。
まさか、死んでしまうと思ってなかったから
悔しかった。
何もできなかった自分が情けなくて。
自分も逝こうか迷った。
そんな時
奏多の言葉が
ふと 頭に浮かんだ
__美咲と過ごす、1秒1秒が宝物。美咲と過ごす時間が、僕の生きる意味。
「でも、もう、一緒に過ごした、あの頃の日々には…」
もう、戻れない。
あの日々は、もう、戻ってこない。
__辛いことがあった時は、あの日々を思い出して
_支え合って
_励まし合って
_楽しかった、あの日々を。
奏多の声が、聞こえた気がした
アルバムを作ろうと突然言い出したのは
近いうちに自分が死んでしまうとわかっていたからかもしれない。
奏多は自分がいなくなっても思い出を見返せるように
アルバムを作ってくれたのかもしれない
頬に
一粒の涙が伝った
「私の今の生きる意味は…
大好きなあなたとの、奏多との、あの約束を果たすこと。
生きる意味をくれたあなたに、
__最上級の愛を。」
私があなたがいなくても
明日という日を
歩んでいく
片手に一つの
アルバムをもって。
あなたに一つの贈り物を、そして溺れるほどに深い愛を。完
幼君、これにて番外編含め全話終了となります…!!
読んでくださっていた皆様!!
ありがとうございました!!
僕の小説を「面白い!」って思ってくれる人がいたら
それが一番、僕にとって嬉しいです。
終わるのは寂しいけれど…
幼君は、永遠に!!!