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恐怖
澪サイドで書くよ
敵が五人。最大出力にしなくてもぼこぼこにはできそうだった。せめての情けは掛けようと思い言った。
「ひしもちの社長がどこにいるか教えてくれたら殺しはしないよ。どうする?」
すると敵は笑い出した。何がおかしいのかわからなかったが、すぐに分かった。はめられたのだ。十和の声を録音さえすればいくらでも騙せる。その中から一番の新入社員である澪に電話をかけたのだろう。にしてもなぜ澪の電話番号を知っているのかがわからなかった。どちらにしろ、腹が立っていた。元々走るのは好きではない。誰かのために走ったのなんか何年振りかも覚えてない。走ってもらった覚えもない。迂闊な自分が嫌になった。うっかりすると泣きそうな自分を抑え、顎を引き、まっすぐに見てやった。クナイを三本、三人の相手の胸に向かって投げた。どうすれば自分の鬱憤が晴れるのか。そんなの今の澪にわかるわけがなかった。クナイはすべて命中し、大量の赤が周りを染める。あとの二人も座り込んでいた。クナイを引き抜くのも面倒で、小刀を出した。ただただ気狂いになりたかった。思いっきり叫びたかった。もう無駄なのはわかってる。彼女は歪んだ笑顔であとの二人の頸動脈を的確に切り飛ばす。クナイを回収すると、ため息をつき、「ごめんね」という言葉とともにその階を去った。
後には引けない。死ぬのは僕だけで十分だ。