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第4人生ー1
「大翔……永遠が目を開けたわ」
我に返ると、ベビーベッドの中だった。
さっきまで熱かったはずなのに、ただ温かいだけの世界に放り込まれた、そんな感覚だ。
この記憶を繰り返すのは3度目だ。
……いや、何かが違う。
2度聴いたお母さんの言葉が違う。見て見て、っていう言葉が抜けている。
それにお母さんが覗き込んでこない。声も元気には聞こえなかった。
その時、僕は、それが重篤な問題だとは思わなかった。
生後1年弱くらいは、たとえやり直しをしている者でも自我がはっきりしないみたいだ。
景色もなんとなくぼんやりしてるし、お母さんが言うこともよく分からない。
だからなのか、
(お父さんがいない……?)
それに気づいたのは、1歳になる前日のことだった。
うちに限ってそんなことはないと思っていた。
だって、3回も佐倉 永遠をやってきて、そうなったことはなかったから。
ヒリヒリする頬を抑えながら、お母さんの顔を見上げた。
「なんで叩くの……?」
「もうそんなこと聞かないで頂戴」
お母さんは冷たく放った。
4歳まで言おうか悩んでいた言葉を口にして、頬を叩かれた。
『お父さんはどこに行ったの?』
家庭崩壊。
4歳児らしからぬ言葉が頭をよぎる。
熱っぽいので体温計で測ったら、38度を超えていた。
物置兼仏壇の棚に体温計を戻して布団に潜る。
頭が痛いのには気付かなかった。昨日打ったのとほぼ同じ場所がガンガン言ってる。
小学校に入ってから、お母さんは2日に1回帰ってくるかこないかになった。帰ってきたとしても、お金を置いていくか、僕にイライラを発散するか。8割くらいは後者で、昨日もそう。
暴行に、育児放棄。虐待の典型例だ。
こんな劣悪な世界線が有り得てしまうことを、9歳まで生きてもなお信じ切れていない。
……劣悪といえば、風邪と打撲2箇所っていう最悪なコンディションだったことを思い出した。
なんかで誤魔化そう。
テレビをつけると、職業特集をやっていた。
いい時代だ。頭が空っぽのまま生きられるだけのメディアで溢れている。
だらだらとテレビを流し見していた僕は、
『……はい。一応、医療的な知識があるので、怪我をしたり病気に罹患したら自分で治してます』
目を大きく開いた。
医療関係者だったら、自分で治せる?
そうだ。それに、父親がいない今、県外の高校に行く理由も方法もない。
医療系の大学と系列の高校なら、隣の市にある。
ちょうどいい距離だ。家からギリギリ通える位置だし、家にいる時間――お母さんと鉢合わせる可能性も下がる。
逃げと守りだ。
今回の人生、ここまで壊れてしまったんだから、教師を諦めて医療関係に逃げてもいいのかもしれない。
信昌様のアイデアです。
パパがとことん活躍できないのは、うちのお父さんが一般的なお父さんって感じじゃないからです。何かボロを出しそうで書く勇気がない。