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千本桜【曲パロ】
その街は、昼も夜も「桜色」の煤煙に包まれていた。
帝都・夜戦ノ街。
かつて美しかった学び舎も、石畳のモダンな通りも、今や東洋一の軍事要塞へと姿を変えている。
空を覆うのは渡り鳥ではなく、巨大な鋼鉄の飛行船。
街を囲むのは、致死性の化学兵器「常闇桜」を噴射する巨大なパイプライン。
世界は終わらない戦争の真っ只中にあり、この街はその心臓部だった。
「――撃てッ!」
若き将校の怒号と同時に、青白い|電磁砲《レールガン》が火花を散らす。
対する異国の|機械化歩兵《サイボーグ》たちが、人の形を捨てた四足歩行の姿勢で、石畳を削りながら突撃してきた。
少年兵のひとりが、至近距離で放たれた重機関銃の弾丸を浴びる。
肉体があっけなく弾け、鮮血が夜桜のように夜の闇へ散った。
肉の焼ける嫌な臭いと、千切れた軍服の切れ端が宙に舞う。
しかし、誰もそれを顧みない。
ここは、生と死の境界線がマヒした戦場だ。
「ICBM(大陸間弾道弾)が来るぞ! 総員、地下壕へ退避!」
サイレンが鳴り響く。
それは悲鳴というより、街全体が歓喜に震えて|啼《な》いているようだった。
前線の|塹壕《ざんごう》に、一人の少女が|佇《たたず》んでいた。
彼女の名はハル。
帝都が誇る「花機(かき)」と呼ばれる、全身の半分以上を機械に換装されたサイボーグ兵器だ。
彼女の背中からは、桜の紋章が刻まれた鋼鉄の刃が幾重にも生え揃い、まるで不吉な翼のように広がっている。
「また、サクラが咲くのね」
ハルは呟き、自らの左腕を見た。
皮膚が裂け、剥き出しになったチタン合金の骨格と、そこから滴る緑色の疑似血液。
痛みはない。
神経を麻薬物質で麻痺させているからだ。
彼女の視線の先では、先ほどまで笑い合っていた同僚の青年兵が、爆風で吹き飛ばされ、壁に「肉のシミ」となって張り付いていた。
内臓が飛び散り、硝煙と混ざり合う凄惨な光景。
普通なら吐き気を|催《もよお》すその地獄絵図を前に、ハルの瞳は、ただ美しく、濁った歓喜に染まっていく。
「綺麗……本当に、千本の桜のよう」
狂っているのは自分か、世界か。
そんな疑問は、数日前に脳を弄られた時に置き忘れてきた。
「さあ、最終兵器の起動時間だ」
地下の管制室で、白衣を着た男がレバーを引く。
帝都の地下に張り巡らされた「環状線」
――それは列車ではなく、膨大なエネルギーを循環させる粒子加速器だった。
ゴォォォ、と大地が鳴動を始める。
街の中心にそびえ立つ、巨大な鉄塔「宴檻」の先端から、眩いばかりの桃色の閃光が天を衝いた。
それは美しい「夜桜」の幻影となって夜空に広がり、次の瞬間、敵の飛行船艦隊を包み込む。
音のない大爆破。
鋼鉄が溶け、中にいた人間たちが悲鳴を上げる間もなく、一瞬で消滅していく。
光の雨が街に降り注ぐ。
それはまるで、満開の桜が散り急ぐかのようだった。
戦火が一時的に収まり、静寂が戻った戦場。
ハルは瓦礫の山の上に腰掛け、月を見上げていた。
彼女の足元には、敵味方の区別もつかなくなった、焼け焦げた肉塊と機械の残骸がゴロゴロと転がっている。
常闇桜の影響で、彼女の視界はピンク色のフィルターがかかったように歪んでいた。
「光線銃を撃ちまくりながら、私たちはどこへ行くのかな」
ミクは壊れた人形のように、血に染まった鋼鉄の翼を羽ばたかせ、ふっと微笑んだ。
「まあ、世界の行く末なんて、どうでもいい。
――さあ、そこのお国の方も、皆で一緒に 踊りましょう?」
彼女がそう歌うように呟いた瞬間、再び空から、第二波の爆撃が始まり、街は再び美しい地獄へと変わっていくのだった。
(了)
千本桜って、いろんな解釈ができたので、書いてて楽しかったです!
今回は戦争モチーフ!(まあ曲が戦争だし)
で、入れたい要素の歌詞だけ取って(全部じゃさすがに書ききれない)、書きました!
検索してかっこいい、使ってみたいっていう言葉は、とにかく使って!(調べたかんね。ちゃんと)
以上!少しでも良かったらコメントよろしくね!