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朝・寝起き・バトル
戦場というのは休みがない。
少しでも気を抜けば、体を貫く銃弾の嵐。
交代で見張らなければ睡眠もまともに取れない。
「代わるぞ」
交代したからといって、休めるかは別の話だが。
いつ奇襲があるかは分からない。
武器を抱えて深く眠ることは出来ない。
寝ては起きて。
浅い眠りを繰り返して。
「敵だ!」
そんな声に起こされ、朝日に目を細める。
珍しく深く寝れたかと思えば、これだ。
大抵“良いこと”の後には“嫌なこと”が待っている。
寝起きで上手く働かない頭と身体。
ただ、ここで立ち止まっていたら無駄死にするだけ。
身体の半分以上もあるライフルを抱え、ただの的にならないように茂みへ身を隠す。
鳴り響く銃声は、本当に敵がいることを実感させた。
───バン。
こちらを撃つために現れた人影へ引き金を引く。
当たったのか、影は重力に引かれて倒れる。
近くに潜んでいた味方も、鮮血を広げていた。
仲間の死があろうが、自分自身が今日を生き延びる為に立ち止まる暇はない。
「……っ、」
まだ半覚醒なのか、なかなか銃弾は当たらない。
さっきのはまぐれだったのだろうか。
否、そんなことを気にしている暇はない。
寝起きだろうが何だろうが、敵は少しも待ってくれない。
みんな、それぞれが今を生き延びることに必死なのだ。
見逃したせいで死ぬなんて、冗談もいいところだ。
朝日はどんどん昇っていく。
影が短くなっていく。
敵も味方も関係なしに命が散っていく。
目が覚めてくれば弾は外れなくなっていく。
敵はついに撤退していく。
今日も生き延びた。
ただ、それと同時に失った命もある。
来たくて戦場に来た人は少ない。
戻ると約束してきた人は多い。
遺体を持って帰れないのは普通で、武器を勝手に譲り受けて移動を開始する。
連れていけるのは、立派に最後まで戦ったという記憶の中の姿だけ。
最後まで、終戦まで連れていけるかは分からないが。
「……もう無理だろ、こんなの」
平和に生きてきた人間ほど、すぐ狂う。
真面目に死者を背負う人間ほど、重さに耐えきれず命を絶つ。
狂った非情な奴らしか残っていけない世界で、未来を語る者が簡単に殺される。
もう二度と戦争を起こさないようにと、自分の代で終わらせると語る善人が命を落とす。
「僕は、そんな奴らの代わりに夢を背負っていく」
死ぬわけにはいかない。
その気持ちがどれだけ強かろうと意味のない戦場で、男は戦いから逃げずに引き金を引く。
銃弾がなくなれば即座に装填し、狙うは敵の頭部ただ一点。
余計な苦しみは必要ない。
そして出来るだけ早く。
「何でそんなに強いんだ?」
「……別に誇れるものは何も持ってない」
「お前がいると確実に此方側が優勢だ。強いことを否定するなよ」
実際、男の有無で戦況が大きく変わることがあった。
「でも戦争もあと少しで終わりそうだ。終戦したってやりたいことねぇけど」
「なら終わらない方がいい?」
「そうは云ってねぇだろ」
くだらないやり取りの間も銃声は響き渡る。
何があろうと、戦場であることを忘れてはいけない。
身を隠した木に集まる銃弾。
このままでは数分以内に距離を詰められるか、木ごと撃ち抜かれることだろう。
「少しでも体を出せば撃たれる、か」
どうしたものか、なんて悩む間にも時は経っていく。
そんな時、断末魔と共に銃声が鳴り止んだ。
深い森の奥、敵がいたところには大きな熊が立っていた。
味方ではないのは明らかだ。
逃げるにも戦うにも、知識がなく動けない。
「俺が引き付けるから頭を撃ち抜け!」
動いた兵へ向かう熊。
撃ち抜けと云われても、体は大きいが動きが早い。
普段の人間相手の撃ち合いとは何もかもが違う。
「──ここだ」
襲いかかる熊を貫く銃弾。
生まれた隙に躊躇せず叩き込み、熊はその場で倒れ込んだ。
「……ふーぅ、死ぬかと思った」
「僕が外したり──」
「思わねぇよ�。だってお前、人を守るためなら何倍も強くなるから」
少し瞠目してから、男は小さく微笑んだ。
ワンライむずいわぁ~