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画面の向こう
「なぁ、ラナ。俺が13歳になったら、二人だけでYouTuberはじめようぜ!」
わたしの夢は、YouTuberになることだった。
兄のユウも同じ夢を持っていた。
「YouTuberって、芸能人みたいじゃん! すぐ有名になるぞ!」
そう言って笑うお兄ちゃんを見て、わたしも笑った。
親に言ったら、きっと止められる。
だから、二人だけの秘密にした。
自分の描いた絵を、たくさんの人に見てもらいたい。
「上手だね」って言ってもらいたい。
そんな気持ちを、承認欲求っていうんだって。
この夢が、ようやく叶う。
そう思っていた。
――でも、現実はそんなに甘くなかった。
動画の編集は難しい。
時間をかけて作った動画ほど、なぜか伸びない。
それでも、
「努力は報われる」
そう信じて、お兄ちゃんと頑張った。
そして、コメント欄を開いた。
そこには、重たい雨が降っていた。
「下手。」
「こんなの誰が見るの?」
「才能ないね。」
「もうやめたら?」
たった数文字。
ただの文字のはずなのに。
その雨は、少しずつ、わたしたちの心に溜まっていった。
動画を投稿するのが怖くなった。
コメント欄を開くのも怖くなった。
それでも、親に知られることのほうが怖かった。
だから、誰にも相談できなかった。
そして、半年が経った頃。
いつものように部屋にいると、お兄ちゃんが静かに口を開いた。
「なぁ、ラナ。」
「なに?」
「……もう、疲れたな。」
その声は、今まで聞いたことがないほど弱かった。
「お兄ちゃん?」
返事がない。
「どうしたの?」
お兄ちゃんは、ただ俯いていた。
「俺たち、頑張ったよな。」
「……うん。」
「いっぱい動画作ったよな。」
「うん……。」
「じゃあ、もう……頑張らなくてもいいんじゃないかな。」
その言葉を聞いた瞬間、胸がざわついた。
「お兄ちゃん、何言ってるの?」
「ごめんな、ラナ。」
その瞬間、わたしの頭の中が真っ白になった。
何が起きたのか、理解したくなかった。
ただ、お兄ちゃんが倒れている。
何度呼びかけても、返事がない。
「お兄ちゃん……?」
目の前が滲んだ。
そのとき。
耳元で、声が聞こえた気がした。
『早く楽になろう』
「……いや。」
『もう頑張らなくていいよ』
「いや……。」
『あなた一人で耐えられるの?』
――タエラレナイ。
そう思ってしまった。
ずっと怖かった。
コメントも。
親に知られることも。
失敗することも。
お兄ちゃんを失うことも。
全部、全部怖かった。
だから――。
その夜、二人の部屋には、もう動画を編集する音は響かなかった。
ただ、机の上に置かれた一台のスマートフォンだけが、静かに光っていた。
画面には、最後に投稿した動画。
そして、その下には、今日も新しいコメントが増えていた。
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「○○県○○市の自宅で、子ども二人が亡くなっているのが発見されました。
二人は動画投稿を続けていたということです。
警察は、インターネット上での誹謗中傷との関連も含め、詳しく調べています。」
ニュースの声が、部屋の外から聞こえていた。
誰も知らない。
二人がどんなコメントを見ていたのか。
どれだけ傷ついていたのか。
どれだけ、「助けて」と言いたかったのか。
ただ、画面の向こうから投げられた言葉だけが、
二人のもとに残されていた。