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夏の追憶
夏を思い出したとき、浮き出てくるのはどれも朧げな幼少期の頃。
澄み切った青空と冷たいサイダーだけで、誰よりもその夏を謳歌するのでした。
入道雲を追ってどこまでも驅けていき、知らない道を歩いていても気にもせず、生ぬるい風を一身に受けていました。
自分より大きな向日葵に囲まれて、めいいっぱい背伸びしてあの子を探しました。
真夜中の五月蝿い蝉の声も、暑苦しくてたまらない事だって、苦になった思い出はありません。
一体いつから変わっていったのでしょうか。
青空は私の暗い心を嘲笑い、白過ぎる入道雲は私を孤独にさせます。
あの頃渡しを覆い尽くした向日葵畑も、今は夢を客観視するように不安定に思えます。
蝉の声がうるさく耳にへばり付き、暑苦しさが体にまとわりついてたまりません。
今の事なんて覚えていません。朧気なあの夏をまだ忘れられません。
あの頃が恋しいのです。何なもとらわれず純粋だった幼少期時代を。
|過去《ナツ》に囚われたまま、私は今日まで生きています。