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良薬は口に苦し
題名は良薬は口に苦しですが本当に良薬でしょうか?考えてみてください。
僕は倉田学。高校2年生だ。今、僕は中学からの同級生であり、同じクラスの天才科学者でもある日野愛子の前で土下座してお願いしていた。その「お願い」とは、
「実は僕、同じクラスの保高さんが好きなんだ。両思いになれる薬を作ってくれない?」
それを聞くと日野さんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに「いいよ。」と言ってくれた。
数日後、僕はクラスのグループラインにあげられた写真を見て驚いた。その写真はこの前僕が日野さんにお願いしているところを隠し撮りしたと思われるものだった。誰があげたかはわからないがご丁寧に『倉田学、クラスの陰キャ女子に土下座』というコメントが添えられていてイラッとした。バレないように校舎の影に呼んだのに。日野さんが『薬、できました。』と2人用のメールで連絡してきたのはそれから少したってからだった。
次の日、僕は日野さんと待ち合わせをして、ペットボトルに入れられた青と赤の薬をもらった。
「そっちの青い液体を相手に飲ませて、赤い液体を倉田さんが飲めば両思いになれると思うよ。青と赤、絶対に間違えないでね。」
といって帰ろうとする日野さんに僕は「待って。」と声をかけた。
「何?」
「グループラインの件は本っ当にごめん。」
「いいよ。そのかわり、薬代の分も含めてアイス今度買ってきて。それと、薬の青と赤、迷ったらすぐ連絡して。」
そして、僕らはそれぞれ帰った。スマホにはすでに『青が相手、赤が倉田さん』というメールが来ていた。僕は『ありがとう。どんなアイスがいい?』と送った。これまでにも数回、日野さんの発明品を借りたことがあり、そのたびに日野さんはアイスを要求する。いつも同じアイスを頼んでくるから日野さんが好きなアイスは知っている。日野さんは、ソーダ味のシャリシャリしたアイスの中にソーダ味のかき氷が入った『ゴリゴリくん』が好きだ。コンビニで手軽に安く買えるそれは僕も大好きで夏はよく食べる。今回もそれを頼まれると思うけれど、念のため聞いた。案の定、『ゴリゴリくんのソーダ味』と返信された。
翌日、僕は休み時間に勇気を出して保高さんに青の薬を渡しに行った。何度も家で練習した言葉を口に出す。
「保高さん、ジュースもらったんだけど僕これ苦手だから、もらってくれる?」
「ほんと?嬉しい。ありがとう。」
保高さんはそう言うなりペットボトルの蓋を開けて一気に飲み干した。
「甘っ。めっちゃ甘いね。でも、私は好きだよ。またもらったらちょうだい。」
もちろん、『私は好きだよ』という言葉が向けられているのは僕じゃなくて薬の方なのは分かっている。それでも僕は嬉しくなった。「うん。口にあってよかった。」とだけ言って保冷バックを持って日野さんがいるであろう図書室へ向かった。
案の定図書室には日野さんがいた。
「日野さん。これ、お礼のゴリゴリくん。」
「うん。ありがと。」
保冷バックを受け取った日野さんは嬉しそうに微笑んだ。普段見ない顔に少しどきりとする。僕は図書室を出ながら頭に染み付いた日野さんの微笑みを思い出していた。
家に帰り、すぐに赤の薬を飲んだ。
「まっず!苦っ!なにこれ!?うわ、まっず」
保高さんは青の薬を飲んで『甘い』と言っていたから赤の薬も甘いと思っていたのに。苦いし、飲み終えても口の中に不快な味が残り続ける。慌ててお茶を飲んだけれど相乗効果でさらに不味くなっただけだった。数時間してやっと口の中の味が消え、晩御飯の美味しさに感動していると、母さんが不思議そうな顔をした。
翌日、僕は教室で首を傾げていた。保高さんからの好意、というか変化が感じられない。おまけに僕も保高さんのことがどうでも良くなり、逆に、頭の中には昨日の日野さんの微笑みばかりが横切る。なんでだろう?
薬は成功したわね。一番うしろの席から倉田さんを見ながら私、日野愛子はそう思った。倉田さんが保高さんと両思いになりたいといったときは驚いた。私は倉田さんのことが好き。だから私は倉田さんにブルーハワイ味のかき氷シロップと本物の薬を渡し、自分はもう一つの本物の薬を飲んだ。前もって校舎の影をよく撮る事のできる場所にカメラを仕掛け、私が送ったとバレないようにグループラインに写真を送信して保高さんが仮に倉田さんが好きだとしても諦めるように仕向けた。これできっと私と倉田さんは両思いになれたはず。何度も言ったから青と赤も間違えていないし、今頃倉田さんは保高さんがどうでも良くなっているはず。それに、保高さんには悪い噂が結構ある。私は思わず笑ってしまった。私ってなんて優しいんだろう!これからが楽しみだな。
いかがでしたか?日野さんは優しいのか優しくないのか、薬は良薬かそうでないか、そんな2択をイメージして作りました。また別の話でお会いしましょう。