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ep.2 生活能力ゼロの戦闘狂。
「ここが俺の部屋だ。」
凛都はシアンを自分の寮部屋に招き入れる。
「お邪魔します。...うっわ、何ですか。この汚部屋は!片付けもろくにできていないじゃないですか!これだから、同部屋は嫌なんですよ!」
シアンは部屋に入るなり、凛都を罵る。
今回ばかりは、言い返せない。なぜなら、凛都の部屋はゴミこそ落ちていないが、服や本からあらゆるものが散乱しているのだ。
「もうっ。仕方がありませんね。エプロンと髪ゴムを貸してください。これから住む場所が汚部屋では、嫌ですからね。あなたのためではなく、僕のためですからね!勘違いしないでくださいね!」
シアンは髪を結び、エプロンを身につけてせっせと片付けを始める。
その手捌きはスムーズなもので、するすると部屋が片付いていく。
「俺もなんか手伝えることはないか?」
凛都が声をかけると、シアンは振り返り、子供を見るような目で微笑む。
「あなたが手伝ったら効率が悪いですし、何より片付けができると思えませんしね。」
またもや、凛都を馬鹿にする。でも、その通り凛都は大人しく座っておく。
数分後には、前の部屋とは大違いな綺麗な部屋が完成していた。
「とりあえず、片付きました。これからは僕も住むんですから、きちんと片付けは行なってください。使わなくなったものは捨てて、出したもは元の場所にしまってください。それくらいはできますよね?凛都さん?」
「馬鹿にしてんのか?それくらいはできる。」
「馬鹿にしてませんよ。センパイ?じゃあ、今まで片付いていないのが、ほんと不思議ですねー。嘘は吐かない方がいいと思いますけどね。」
「ウゼェ。クソガキが。」
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あれから、数時間が過ぎて夜になった。
シアンが何かゴソゴソとしている。
「何してんのか?めぼしいものはねぇよ。」
シアンは振り返り、顔を真っ赤にさせる。
「なっ...!そんな人を泥棒みたいに言わないでください!それより、あなたの家は食料品の1つもないじゃないですか!一体どういう生活を送ってきたんですか!」
凛都の部屋の冷蔵庫には当然、空であり、寂しくお茶のペットボトルが転がっている。
「あぁ。最近は自炊してなかったな。Uberで頼んでた。」
凛都がそう言うと、シアンは驚きで目を見開く。
「そんな、勿体無い!このご時世、何が起こるかわからないので、お金を貯めることと自炊能力ぐらいは身につけましょう。今日からはよっぽどのことがない限り、Uber禁止です。毎日自炊しましょう。1日交代でしますが、明日あなたの番だと、キッチンを燃やしかねないので、少しずつ教えますね。」
馬鹿にされている気がすると凛都は思う。
でも、シアンの言っていることは一理あるので素直に従っておく。
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「ご飯できましたよ。」
シアンの声が部屋に響き渡る。
「どうぞ。お召し上がりください。」
机の上に並べてある料理を見て凛都は思わず息を呑む。
「いただきます。」
凛都は料理を口にする。
どれも、想像を絶するほどの美味しさだ。
勿体無い。凛都はそう思い、ゆっくりと咀嚼する。
思わず
「美味い。」
と口にすると、
シアンはパァァと顔を輝かせ、ニコニコと微笑む。それは、いつもの早熟な感じと違い、年相応の少年の微笑みだった。____
すみません。
少し長くなってしまいました。
戦闘シーンはまだ程遠いかもしれませんが、ゆっくりとお付き合いしていただけると嬉しいです。
よければ、ファンレターを送ってくれると、嬉しいです。