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つまらなくはないだろ
特務課新人の職業体験、第四話。
ルイスside
お邪魔しまーす、と僕は探偵社の扉を開いた。
二日の休暇をもらって帰国してきたけど、隊長も先輩も元気そうだったな。
墓参りも、行けた。
敦「お疲れ様です、ルイスさん。休暇は如何でしたか?」
ルイス「久しぶりに師匠と話せたよ。あ、これお土産ね」
敦「ありがとうございます」
口に合うか判らないけど、英国のチョコレートを買ってきた。
#アリス#が選んだし、美味しくなくても知らない。
#アリス#『ルイス?』
ルイス「何でもないでーす」
敦「そういえば、ルイスさんは初対面ですかね」
ユイハ「……神宮寺ユイハだ」
ルイス「福沢さんから話は聞いてるよ。よろしくね」
なんか、握手が強い気がする。
僕が休暇を貰ってガブのこと放置してたから怒ってるのかな。
怒るなら作者にしてくれ、全く。
ルイス「仕事にキリがついたら休憩にしよう。美味しい紅茶も買ってきてるんだ」
ユイハ「紅茶──!」
鏡花「……好きなの?」
ユイハ「あ、いや、その……」
珍しく、ガブのテンションが上がっている。
一ヶ月ぐらい一緒に生活してた筈だけど、紅茶が好きなのは知らなかったな。
ずっと煎餅とか日本の物を食べてたし。
敦「そういえば、休暇は英国で過ごされたんですね」
ルイス「うん」
鏡花「師匠ってどんな人?」
ルイス「……気になる?」
ユイハ「気になるな。アンタや戦場の舞姫は有名だが、他の異能者のことはあまり情報がない」
確かに、と僕は考え込む。
ルイス「まぁ、簡単に説明するなら剣の腕はからっきしだね。多分、鏡花ちゃんなら圧勝」
鏡花「……異能が強いの?」
そうだね。
僕は笑いながら紅茶を一口飲む。
ルイス「芥川君と同じだから」
三人は目を見開く。
芥川君とほぼ同じだから、隊長から色々と教えてもらった。
中距離系の攻撃異能の対処法はもちろん、基礎から応用まで。
僕があの数日で教えられたことは少ないだろう。
でも、禍狗と呼ばれるまで裏社会で有名になったのは凄いと思う。
個人的には、探偵社に入ってほしかったけど。
ルイス「師匠以外にも色んな人に合ってきたよ。同じ班だった先輩とか」
敦「軍にはどんな異能者が居たんですか?」
ルイス「そうだね……物の大きさを変える異能者とか、治癒異能も居たね」
鏡花「与謝野さんと同じ?」
ルイス「重傷を完治することは出来ないよ。でも、戦場では多くの命を救ったね」
──って、僕の話ばかりするのは良くない。
ルイス「せっかくの休憩を、つまらない僕の話で終わらせたらもったいないよ」
ユイハ「つまらなくはないだろ」
敦「そうですよ!」
ルイス「ほら、チョコレートでも食べよ」
このまま話していたら、余計なことまで話しそうだ。
今、この三人に戦争のことを話す意味はない。
敦「ユイハ君、仕事はどう? 難しい?」
ユイハ「……いや、そうでもない。最近は学校でパソコンをやったりするからな」
敦「そうなの!?」
敦君は学校とか行ってないよな。
鏡花ちゃんも、ご両親が生きていた頃は行ってたのかな。
いや、行ってなさそうだな。
ユイハはもちろん行っていない。
僕も行ってないし、ここに居る四人って学歴──。
敦「そういえば、ユイハ君は特務課なんだよね?」
ユイハ「あぁ」
敦「じゃあ異能力持ってるの?」
ブフォッとユイハはお茶を吹き出す。
めっちゃ面白いな。
ユイハ「いや、あるはあるんだが、その、えっと」
ルイス「君達みたいにパッと見せられるものじゃない?」
ユイハ「そう!」
鏡花「条件が厳しい?」
そうそう、とユイハは大きく首を振る。
誤魔化しが凄いな。
見ている分には面白いけど。
ユイハ「……イライラ」
あ、やべ。
ルイス「そういえば依頼とかはないの?」
敦「元々ユイハ君は事務作業だけの予定なので、他の方々が行ってくれてます。簡単な任務ならやってもらおう、って国木田さんが」
他の社員の姿が見えないのは休みか、依頼中だから。
今週に限って面倒な依頼が多いなんてね。
もしも政府からの依頼が来た場合、次に切り出させるのは──。
福沢「済まない、政府からの依頼が来たのだが」
ルイス「僕行ってくるよ。内容は?」
福沢「良いのか?」
もちろん、と僕は資料を受けとる。
まさかこんな週になるとは思ってなかったけど、ガブは楽しそうだし良かったな。
三徹した甲斐があった。
ルイス「それじゃ、行ってきまーす」
鏡花「いってらっしゃい」
僕は福沢さん、敦君、鏡花ちゃん。
そしてユイハに見送られて探偵社を出た。
──次に彼等と会えるのが二日後になるなんて、この時の僕はまだ知らなかった。
…なんだ、この終わり方。
僕の方こそ聞きたいね。
出番がやっと来たと思ったら退場宣言を出されたんだから。
それにしても、俺sideじゃないんだな。
折り返しだし僕の出番が少なくなるからね。
そんな理由なのかよ。
嘘だよ。
…(もう此奴は信じないという瞳)
次回は色々と大変そうだね。
頑張ってね、ユイハ。
あぁ。